190-4.お祝いの品

 思わず、目移りしてしまうけど……だいたいの色と柄は決まったので、次にお父さんから裁断と縫い方を教わることになった。


 なんだけど。



「……そこまで気負いしなくとも」


「……お父さんとは違うもん」



 お父さんが、しゃーしゃーと縫っていくのに対して、私はちまちまとしか縫えない……。スピードと技術もだが、高価な布を無駄にしたくない気持ちもあるので……自然とスピードは遅くなってしまう。



「……お父さんがやってもいいんだぞ?」


「ダメ。これは私がやらなくちゃ」



 お父さんが縫ったってことがわかれば、国王直々の品に……マシュラン達が畏れ多いとか思っちゃうだろう。私も王女だけど、私達はなんとか和解出来たから別だもん。


 ちまちま、ちくちくと縫いつつ……途中、知らせを受けたお母さんにも見守られながら、なんとか出来た!!


 シルクをふんだんに使われた白い布で、刺繍も少しポイント感覚であしらい。


 一歳か二歳くらいまで使えそうな大きさに出来上がった。箱は、見本品を縫い終えていたお父さんが選んでくれた。



「さ、入れてみなさい」



 入れてみたら、ぴったり収まったのでこれで出来上がりだと息を吐き。


 早速渡しに行こうと、お兄さんと一緒に孤児院まで転移で迎えば……ちょうど、ミッシュ達の前に到着出来た。



「……チャロナ??」



 ミッシュの表情は、なんか顔色が物凄く悪かった。



「ミッシュ!? 大丈夫!!」


「だい……じょうぶ、吐いただけ」


「……つわり??」


「……うん」



 結構吐いた後だから、体力を削がれただけだそうだ。


 マザー達から、白湯を受け取ってから……私は出来たばかりのプレゼントをミッシュとラトに渡してあげた。



「……プレゼント??」


「おめでたのお祝い!」


「「……ありがとう」」



 ふたりでお礼を言ってくれたので、開けるのを見守っていると……箱を開けたふたりは、『あ』と声を上げてくれた。



「よだれかけ??」


「作ってみたの」


「「……チャロナが??」」


「うむ! 我が妹の手作りなんだぞ!!」



 お兄さんは何故か誇らしげに胸を反らすと……ミッシュ達は目を丸くしながら、顔を見合わせていた。



「まだすぐには使えないけど……よかったら」


「「……ありがとう」」



 普段は無表情のふたりではあったけど、泣きそうな笑顔になりお礼を言ってくれたわ。


 なので、私はミッシュとハグをして……あとでやってきたシミットともハグをした。



「「……大事にする」」



 ハグが終わった後に、ミッシュ達がまた言ってくれたが……ミッシュのつわりが出てしまい、私もだけど他の皆も慌ててしまったのだった。



(……いつか、私もカイルキア様の子供……出来ちゃうんだろうか??)



 婚約パーティーはもうすぐ。


 だけど、キス以上のことはしていないから緊張しちゃうわ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る