190-3.お祝いしたい






 *・*・*











 びっくりしたけど、嬉しい出来事に変わりない。


 だから、何かお祝いになるプレゼントでもしようかと悠花ゆうかさんに相談を持ちかけると。



「……パーティー解散かもしんないわねぇ??」


「え??」



 おめでたいことなのに、どうして悪い方向にいってしまうのだろうか??


 私が間抜けた返事をすると、悠花さんに軽くデコピンされたのだった。



「考えてもみなさい?? 身籠ったら戦闘には参加出来ない。相手の方も、結婚を申し込むしかないじゃない?? まあ、子供出来た女の子だけ脱退して旦那側が残る手段もあるけど……女の子の方は戦力だった??」


「う、うん。弓者アーチャーだけど」


「じゃ、旦那側も戦闘員系ならパーティーのバランスが大きく崩れるわ。だから、あたしはパーティー解散かもしんないって思ったわけ」


「…………」



 たしかに、私もそれが分かれば純粋に喜べなくなってきた。


 ミッシュもだが、ラトもパーティーには欠かせない戦闘員だった。しかし、ミッシュが身籠ったら……パーティーの戦力が大幅に減る。


 悠花さんの言う通り、ラトは残ることは出来たとしても……それが正解かわからない。私が脱退した後の、あのパーティーのこれまでは推測しか出来ないが……これまで以上に大変になるだろう。


 あと四人程度で大丈夫かはわからない。


 私だなんて、もう立場の関係上戻れないから。役に立たなかったあの日々と違い、魔法とかは扱えるようになってもだ。



「ま。けど、めでたいことに変わりないわん? なんか贈ってあげたら?」


「…………何がいいかな??」


前掛けスタイは?」


「手作り??」


「今のチーちゃん、裁縫は出来んの??」


「ちょっとなら」



 けど、このまま孤児院に居続けるかもわからない。


 出来るだけ、早いスパンで作れるようにするならば……私達はある人を頼ろうと、転移魔法でお城に向かった。



「父上に??」



 お兄さんとすぐに会えたので、お父さんのところに連れて行ってもらう。いきなり、執務室に転移したら……お父さんから痛いくらいのハグを受けるかもしれないので。



「うん。友達が懐妊したことがわかって……贈り物したくて」


「ほう! いいことなんだぞ! でも、母上じゃなくて父上??」


「お父さん、裁縫が上手でしょ? 教わりたくて」


「ああ……」



 言いたいことを伝えれば、お兄さんも納得してくれた。お父さんの裁縫技術をよく知っているからか、ちょっとウザいような気持ちがあらわれた表情になったけど。


 執務室に着き、私がいることをお兄さんが伝えれば……勢いよく、扉が開いた。



「チャロナ〜!!」



 予想通り、猛烈なハグを受けることとなり……ちょっと苦しかったが、用件は伝えようと少し離れてもらった。



「お父さんに、ちょっと裁縫を教わりたくて」


「裁縫?……カイルキアにか??」


「ううん。前いたパーティーメンバーがおめでたしたから……贈り物をしたくて」


「!?……わかった。どんなものを作るんだ??」


前掛けスタイかな?」


「…………ちょうど良い端切れがある。こっちに来なさい」



 案内された場所には、いかにも高価そうな布の端切れが山ほど積み上がっていた。

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