188-1.これからのホムラ
*・*・*
すべてを話してから、マザーは静かに涙を流した。
「……過酷な運命を辿るようにしてまで。けれど、それで失った命は来世への転生を成せた。そうであるのなら、私も嬉しいわ」
ディアナやエリオ、他の死者を弔うのに改めて皆で祈ってからて……私は、ここでパンは無理だけど。ちゃんとしたお饅頭の作り方をマザー達に教えた。
シュリ城でも驚かれたように、マザー達も勘違いしていた部分に納得がいき……何度も何度もメモをしていたわ。
そうして……マザー以外にも、懐かしい顔ぶれの職員や孤児出身から職員になった子達とも顔を合わせ。
私が王女であることと、今は幸せであることを伝えた。
本当だったら一日二日滞在したいところだったが、まだ皇帝陛下方にお話はあると言われていたので、お兄さんの転移魔法でシュリ城に戻った。
陛下の執務室に近いところに到着すると、肉まんの匂いがすごかったけれど。
「たくさん作ったんじゃないかなあ?」
お兄さんが言う通り、そうかもしれないので中に入らせていただくと……部屋中もむわっと肉まんの香りがしていた。
「やあ」
中では、山ほどとは言い難いが……肉まんの山がローテーブルの上に積まれていた。多分、陛下やアシュリン殿下が召し上がっていらしたのだろう。
「戻りました。あの、これは……?」
「料理長が張り切ってしまってね? 私達でも、少し多めに食べたくらいなんだよ」
君が教えたお陰で、随分とマシになった。
食べてみて欲しいとおっしゃったため、私達もひとりずつ肉まんを手にして頬張った。
皮の出来はまだ改善点は多いが、肉餡の部分はまずまず。私が正直に感想を言うと、陛下は首を縦に振られた。
「皮はまだむせますね?」
「うん。少しもちゃもちゃしてしまう。王女殿、コツはあるのだろうか?」
「水加減……あとは、生地の寝かせ具合ですね?」
「ふむ。いやはや、王女殿の技術は国以上に世界の宝だ。漬け込む連中を壊滅させても、まだまだ出て来るだろう。王太子殿下方も気をつけていらっしゃっても」
「もちろんなんだぞ!! 我が妹は、こっちのカイルと婚約したのですから!! 誰にも邪魔はさせない」
「うんうん。そうだろうねぇ?」
改めて言われると……少し恥ずかしいけれど。
けど、嬉しくないわけじゃないので、カイルキア様を見れば少し微笑んでくださった。
「父上。各地へ饅頭のレシピを広めて行く役目。この私に」
と、お饅頭の改善を詳しく殿下や料理長さんに改めてお伝えしてから……ホムラでの使節団はひとまず終わることになったのでした。
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