180-4.虹の世界
優しくキスをしていただいた後、お互いに抱きしめ合ってからお弁当や焚き火の片付けをして……。
あとはどうしようか? となったけれど、お昼寝でもするかと敷布を広げて、魔物避けの結界をカイルキア様が展開してから……カイルキア様の腕枕で寝ることになった。
共寝だなんて初めてだから、ドキドキしないわけがない。
だけど、いい匂いがして……ドキドキして……ぽふっと横になるとカイルキア様からまたほっぺにキスをしていただいた。
「気にせずゆっくり眠れ」
「……はい」
色々あったので、ゆっくりする時間があるようでなかったからか、すぐに眠ることが出来た。
ただ、体はすぐに力を抜けたのに……頭ははっきりしていて、でも、目を開けることが出来なかった。
この感覚には覚えがあったので、もう一度ゆっくり目を開ければ…………若々しい姿のユリアさんがドアップで目の前にいたのだ。
「ふふ、少しぶり?」
「ゆ……り、あさん?」
「ええ」
「俺もいるよー?」
ちょっと離れたところに、フィルドさんもいた。目がはっきり開けば、そこは真っ白な空間。シアちゃんやフィー君とかはいなかった。
「ふふ、らぶらぶじゃない? チャロナ」
「あ、あ……その」
再会しても、全部を見られていたので恥ずかしくないわけがない!!?
顔を両手で隠していると、ぽんぽんとどちらかに頭を撫でられた。
「ちょっとだけ、知らせておきたいことがあったの」
目を開けて? と言われたので、ゆっくりと手を外せば……二人の後ろには大きな虹色の球体が浮かんでいた。
「……あれは??」
「あれは、この世界の外観。俺とユリアが治める『虹の世界』の外側」
「この……世界?」
なんて美しいんだろう……。
虹のグラフィックだけじゃなく、帯のようなものが巻き付いているが幻想的で凄く美しい。
「あなたの選択のお陰で……あの美しさに戻ったの」
そう言いながら、ユリアさんは少女のように笑うのだった。
「私の……?」
「あなたが、狭間で選んだ選択と……ロティを介して世界中に広げた古歌の力。それが循環したお陰で、この姿に戻ったの」
「その前はこっち」
フィルドさんが指を鳴らすと、虹の球体の隣にはどす黒い虹のグラフィックで出来た球体が浮かんだのだ。
「……これが!?」
「飢えに飢えて……。けど、元に戻らなかった世界をどうすればいいのか困っていた私達に……あなた、『
「俺やユリアの導きは大したことをしていない。でも、君がこの世界に根付くようには……悪いけど、動かせてもらった」
色々あったけど、今が幸せであるから……私は首を横に振った。
「御礼を言うのは私もです。カイルキア様のところに導いてくださって、ありがとうございます」
たとえ、ただ転生しただけでも……カイルキア様がいなければ頑張れなかったと思う。
それは、確信出来たから。
マナーで教わった通りのお辞儀をすると、ユリアさん達は小さく笑ってくれた。
「もうちょっと落ち着いたら、また行くかも」
「この姿に落ち着けるのも、あなたのお陰よ」
と言って、ユリアさん達が手を振ると……意識が薄れて、現実的に目が開く感覚がした。
穏やかな寝息が聞こえて上を見れば、素敵過ぎるカイルキア様の寝顔がすぐ近くにあった。
(この幸せを……続けていくためにも)
王女として、ひとりのパン職人として、この世界に正しい知識と技術を伝えよう。
けど、今だけはただの女の子でいたいので、もう一度眠気に意識を委ねると……次は普通に眠ることが出来た。
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