179-3.一方、こちらでは(アシュリン視点)
*・*・*(アシュリン視点)
……無事に、セルディアス王国の王女が城に帰還された。
(……表向きは、だが)
我が国でも、俺や父上は知っていたが……。王女の生誕祭を経て、彼女が城に戻ったと国内外を通じて騒ぎに騒いでいる。
それに、彼女が神に魅入られて……亡くなってしまった王妃殿も復活なされたのだ。これを喜ばれずにいられようか?
そして、王女と会うきっかけづくりは父上の提案だったが……どのように接しろと言うのだ??
それでも、あの方はホムラへは正式に戻って来られない。自分は、邪魔だとおっしゃるから……。
(……俺など。次期皇帝に相応しいのか??)
兄上が生きていらっしゃるとわかってからは、常々そう考えてしまう。だが、考えていたところで仕方がないのはわかっている。
だから、今は。
「……あなたにも。セルディアスの王女殿下がいらっしゃる時に同席していただきたい。…………マザー・リリアン」
復興がまだ完了していない孤児院に帰還できないので、シュリ城に留まっているマザーを俺は茶の席に呼んだ。彼女は、なかなか茶を口にしようとはしなかったが。
「良いの、でしょうか??」
「俺は直接的なあなた方の関係を知らない。だが、姫にとっては育ての親なのでしょう? 王妃殿下が復活なされても、そこは変わらないはず」
俺も、兄上が亡命されて生きているのを知らなければ……傍流の皇族でいただけ。臣下のひとりとしてあの方に仕えようとずっと思っていたくらいだ。
「…………もう、二度とお会い出来ないと思っていました」
マザーは俺に言うというより、自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「…………しかし。縁は繋がれた」
「はい。ですから、王妃様の元乳母ではなく……マザーとして姫様にお会い出来るなどともうないと思っていましたのに。…………皇太子殿下が席を設けていただけるなどと思いませんでした」
「孤児院の一件もあるが、腑抜けた冒険者達を教育しなおしたこともあります。我々では命令になりますからな?」
「……ふふ。あれは私もいささかやり過ぎました」
あれをいささかと言うくらいだから、本気はもっと恐ろしいのだろう。絶対に怒らせたくないと決めた。
「まだ二週間先の予定ですが……どうでしょう?」
「お受け致しますわ。ふふ、お互い泣いてしまうだけで済めばいいのですが」
「それは……実際に会わねばわからないでしょう」
俺が兄上と再会出来た時も、俺は狂い泣きしそうになったから。
だが、会うのはマザーの提案で孤児院で待つことになった。
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