179-2.恋人としてのデート②
森を突き抜け、開けた場所に到着すると……見えてきたのは、紅葉と栗の木の群生地があった。
「わぁ……!!」
ジークフリート君から、カイルキア様がおろしてくださると……余計に美しい風景に相まって秋の味覚が地面に転がり落ちていたのがわかる。
栗の季節が日本は十月だったかどうだかと曖昧にしか覚えていないが……この世界では、月の初めに創作めいた名前がついている。日本で言う特殊な読み方みたいに。
今は九月くらいだから、月張月って名前。三日月が多くて、豊穣の手間の月って意味だった気がした。他の月も気候の特徴を活かした名前で、一年は十二の月で構成されている。
この世界か、前世の世界が基準となっているかはわからないが、文明は地球の方が発達していた。
「ここは公爵家の私有地なんだ。冒険者は仕方がないが、関係者はあまり立ち入らない。……俺やリーンは幼い頃に父上達に連れられて、ここに来たんだ」
カイルキア様はジークフリート君をその辺で遊ばせるのに、鞍を外した。ジークフリート君は私達の周りをクルッと回って私の頭に少し顔を押し付けてきた。でも、痛くなくて軽く戯れる感じ。
それからすぐに、その辺を歩くのに行ってしまった。
「まだ三度目だが、ジークもチャロナを気に入ったのだろう」
「そうだといいですが」
「……俺の婚約者だ。そう思わせる」
「……は、い」
少しずつ素直になっていくカイルキア様の言葉にもだが、行動にもまだまだ慣れない。それだけ、大切にされていることは重々わかってはいるんだけど。……やっぱり、恥ずかしい。
とりあえず、紅葉を見つつ、栗拾いをすることになった。
「ある程度集めて、火魔法で焼き栗にするようにナイフで加工するのが……家族の定番だった」
イガの部分はカイルキア様のブーツで開いてくださり、私は気をつけて実の部分を取ってから袋に詰めていく。ある程度貯まったら、私の収納棚へ。私がたくさん拾って、栗のパンとデザートを作りたいと言ったからだ。
地面は落ち葉で土汚れには然程気にしなくてもいい感じだから、分担してサクサクと作業を繰り返していく。
大事な作業なので、あまり会話はない。けど、嫌な空気ではなかった。
「リーン様やエディフィア様もですか??」
「ああ。俺が成人する数年前までは、おばあ様も含めてここに来ていた。ああ見えて、リーンはともかく二人とも活発だったからな?」
だとしたら、エリザベート様にも栗のお菓子で……グラッセを作って、モンブランをお届けしようかしら?
そこで、私は昨日エイマーさん達と思い出したことをカイルキア様に聞くことにした。
「カイルキア様」
「なんだ?」
「その。…………私達が、こ、婚約したことについて……お父さんに報告したん……ですよね??」
「ああ?…………見るか?」
「?」
カイルキア様がポケットから、ひとつの手紙を取り出して渡してくださった。
小さな手紙だなと開いてみると……久しぶりに見るお父さんの字で、簡単に綴られていた。
「……………………お父さん」
王様としてはかっこいいのに、他は親バカなんだなあと思わずにいられない。けど、ちゃんとしたお父さんだなとも思う。
「…………とりあえず。マックスやリーン達のように……近いうちに、婚約発表のパーティーもしたいと思っている」
はにかんだ笑顔になられたカイルキア様は、私の横にしゃがむと一緒に笑ってくださった。
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