179-1.恋人としてのデート①






 *・*・*










 服は、誕生日プレゼントに頂いた服の中から……普段使いに使えそうでも、素敵な生地で作られた薄紫の薄手のドレスにすることにした。


 せっかくの誕生日プレゼントを使わないのは勿体無いし、今日は川などに行くのはないらしい。秋なので、最初のデートのような味覚狩りに行くみたい。


 ドキドキ、ワクワクが止まらない!!


 お出迎えがあり、違うのは手を恋人繋ぎにされた事だが……私が絶対顔を赤くしていると、カイルキア様は口端を緩めながら笑っていた。


 その表情が見えた、メイドさんや執事バトラーさんとかが口をあんぐり開けてしまってた。ちなみに、シャミー君も。


 前のように、カイルキア様の愛馬であるジークフリート君の手綱を握って待っていてくれたゼーレンさんは一瞬目を丸くしてから、ニコニコされたけど。



「お待ちしておりました」



 そして、今回は私を先に乗せて、カイルキア様は軽業みたいにひょいっと飛び乗っちゃった!?



「留守は頼んだ。急ぎのものが有れば、魔法鳥で知らせをくれ」


「はっ。お気をつけて」


「ああ。チャロナ、行くぞ?」


「はい!」



 影にロティは待機してくれているけれど……カイルキア様と恋人になってはじめてのデートだ!!


 テンションが高まらないわけがない!!


 それに、この人に恋人として触れて良いのは自分だけだと実感してしまうと……まだぎこちないが、ぎゅっと彼の腰にしがみついた。


 まだ三回目だから、乗馬が怖くないとは言い切れない。


 落ちないようになっていても、やっぱり好きな相手と密着するとドキドキしてしまう。それはカイルキア様もかなって、胸板の上に顔を寄せると……予想以上に凄かった!?



「…………チャロナ、そんなに聞かないでくれ」



 ジークフリート君を走らせているカイルキア様を見上げると、めちゃくちゃ顔が赤くなっていた。



(……ああ、そうか)



 ついこの間までは、この世界のためにフィルドさん達に忘れさせられていたが。


 この人は、表情を無くしていたはずなのに、ずっとずっとわかりやすく私に自分の感情を教えてくれていた。


 なんて、可愛らしい人なんだろう……と思わず笑ってしまう。



「? 何か変なことを言ったか??」


「……いいえ。違います」



 男の人に可愛いらしいだなんて言えないから、少し笑うだけで誤魔化した。


 とりあえず、自分の大きくなった胸を押し付けてしまう形にはなったが、カイルキア様に触れられるのが嬉しくて。


 公爵家の領地のさらに奥の方に行くまで、私はカイルキア様の速い鼓動を聴きながら、しっかりしがみついたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る