178-4.こちらもウキウキ(カイルキア視点)






 *・*・*(カイルキア視点)









 姫……いや、チャロナとデート。


 恋人になってからは、初めてのデートだ。しかも、俺の意志で申し込んだのは……多分、初めての。


 であれば、明日までの仕事を速やかに終わらせるまで。俺はレクターやマックスと共に、執務の書簡をさばきにさばいていた。


 レクターもだが、マックスもいささか呆れたような表情でいたが。



「ねぇ、レクター? カイルの顔気持ち悪くなぁい??」


「同感。表情が戻りつつあるのは良いことだけど……緩み過ぎ」


「まあ、チーちゃんとデートだもの? しかも、自分から申し込むだなんて。……『氷の守護者』からは想像しにくいわん?」


「ね?」



 褒めているのか、呆れているのか。まあ、二人ともほとんど後者ではありそうだが。



「…………そこまで意外か??」


「「意外過ぎ!!」」


「あんた、チーちゃんとちゃんと恋人同士になったからって……人間らしさがいきなり戻り過ぎだわ!!」


「うんうん」



 俺に自覚がないが、他人から見れば今までの俺とは全く違い、異質に見える程感情が面に出ているのだろう。


 十六年前に伯母上を目の前で亡くしたあの後は、ショックでたしかに喜怒哀楽などは鳴りを潜めていたが。


 しかし、伯母上の復活が成せたことで、憂いは消えて。


 そして、この屋敷で再び共に生活する事を決めてくれたチャロナが……とにかく、愛しくて愛しくて堪らなかった。


 だから俺は、昔のように戻ったのかもしれない。が、マックス達には気持ち悪くうつったみたいだ。



「……だが。愛しく想う相手のことを考えれば、当然でじゃないか??」


「そうは言うけど……」


「カイルの口から、そんな言葉が出るだなんて!? まだ秋だけど、明日は雹が降るかしら!?」


「…………」



 どうやら、幼馴染み達ですら俺の表情には……まだまだ驚きが尽きないらしい。


 明日、チャロナとどこに出かけようか。


 だいたいは考えているが……森の収穫時期を考察すれば少し奥まったところがいいかもしれない。なんだかんだ、彼女の手がけるものはなんだって美味いのだから、それにも虜になってしまっている俺は……つくづく、彼女に胃袋を掴まれていると自覚した。



「「…………カイル、気持ち悪い」」


「……少し考え込んでいただけだが?」


「そのニマニマが気持ち悪いのよん!!」



 マックスが引きつった顔で、少しあとずさっている時に。


 窓の方から、魔法鳥が一羽ガラスの部分を軽く叩く音が聞こえてきた。俺はためらわずに開けて、魔法鳥の解呪の詠唱を唱えてから、手紙を開けることにした。



「…………」


「なになに?」


「どうしたのよん??」



 今度は俺が黙ると、二人が後ろから覗き込んで来た。


 なので、俺は二人に見せるように手紙を開いたが。



「「あ〜あ……」」



 手紙の主は、チャロナに父と打ち明けることが出来た陛下からだった。



【絶対幸せにしないと、領地や爵位剥奪だけで済まないからな!!?】



 と言った、簡素な文章だけだった。


 俺がチャロナに婚約の申し込みをした後、すぐに魔法鳥で正式な申し込みについて送ったのだが……概ね、予想通りの返答だった。


 明日、これをチャロナに知らせたらどうなるか。苦笑いされる予感しかない。

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