167-4.遊泳①






 *・*・*











 眠い。


 ちょっと……いや、だいぶ眠い。


 今日一日で色々あり過ぎたせいかもしれないわ。



「あら、チャロナ? 眠そうね?」



 お母さんがコロコロと笑いながら言ってくれたので、私はうんと頷きながら左右に体を揺らしてしまう。



「む? 今日は式典以外も色々あったんだぞ? 無理して起きてなくても大丈夫なんだぞ?」


「で……も、せっかく」


「なに、家族としてこうして揃ったばかりとは言え。また集まればいい。お前もだが、シュラが転移を使えるんだ。いつでも城に来ていいぞ?」


「う……ん」



 揺れる。ゆらゆらと左右に揺れてしまう。


 そして、もう前に倒れ込んでしまうと思ったら……多分お父さんにだけど抱き止められた。そして『仕方ないんだぞ』と、ちょっと遠くでお兄さんがお布団の準備をしてくれている。


 お父さんに寝かされてから、私は重いまぶたに抗わずに眠りに落ちた。


 そうして、寝たはずなのに……星が凄い夜空の下を飛んでいるような夢を見た。今まで、ユリアさん達に見せられたような夢と同じみたいで、でも違ってて……すぐ下には大きな建物があった。


 星と月明かりでよく見えるけど……これは、お城?



『こんな……大きいんだ』



 前世でのテレビ番組とか、今の世界でも旅をしていた頃に……マシュラン達と巡ってた場所では見て来なかった。


 だから、お城がこんなにも大きな建物だなんて知らなかったもの。来た時も、お兄さんの転移魔法で来たから、内装はともかく外観は初めてで。


 でもなんで、夢なのにお城の外にいるんだろう?


 ちょっと動いてみると、ふわっと体が浮いて、左右に動いていく。


 夢かどうかほっぺをつねっても、痛みは特に感じない。


 じゃあ、夢なんだと私は魔法訓練でもあんまり出来ていなかった、飛行訓練もどきをすることにした。


 夜空を飛んで、お城のてっぺんまで飛び上がったり……門のところまで急降下したりと。見張りの人とかはいたけど、これは夢だし私が見えて無いらしいからスルーした。


 次はあそこ。今度はあっち。


 なんだかおとぎ話のワンシーンのようになった気分で、楽しい!!


 起きて、カイルキア様のお屋敷に戻ったら、パン作りの合間に悠花ゆうかさんと一緒に飛行訓練をやってみよう!!



『……あ。悠花さんに聞かなきゃいけないこと、あったんだっけ?』



 ただ、今は夢なので思い出せない。


 起きたら聞けばいいかと思って、けどどうやって戻ればいいのかわからないでいると。


 中庭っぽい大きな庭の前に、見覚えのある色合いの髪色が見えた。


 まさか……とそっと近づいて見たら。


 カイルキア様じゃなくて、お父様であり実は私の叔父さんだとわかった……デュファン様だった。

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