164-2.王女のサンドイッチ①
ほんとはいけないんだけど、絨毯の上にサンドイッチの入ったお弁当箱を並べて。
「中身はシンプルに卵サラダのサンドイッチです」
お兄さんが箱を開けると、今にも食べたいって表情になった。今までもたくさん食べてくれたけれど、それでも食べたいと思ってくれるのが、素直に嬉しく思えた。お兄さんは、自分で手に取る前にお父さんの方に行って箱を差し出した。
お父さんも、お兄さんが差し出した箱から迷わずにサンドイッチを手に取ってくれて……今にもかぶりつきそうだった。臣下の人達の前だから我慢してくれているけど。
「……チャロナ。何故このサンドイッチに?」
お父さんの質問に、私はしっかりと顔を上げてからお父さんに向かって発言する。
「はい。皆様の好みも様々ですが、一番食べやすい種類にしてみたんです。パンは私やローザリオン公爵の料理長達と一緒に手掛けたものです。味は陛下がご存知の通りですが、他の方々はほとんどご存知でないですから」
「そうだな? 私は知っているが、ここにいるほとんどの臣下達は知らないでいる」
「卵はコカトリスを。パンの内側にはバターを塗りました。乾燥防止とコクを追加させるためです」
「……なるほど。…………フレイズ殿、貴殿は幾度か食しているだろうが。どうだ?」
臣下の列に加わっていたフレイズ様が、お父さんに呼ばれたのでお辞儀をしてから立ち上がった。
「はい。王女殿下からご指導いただいた技術、並びにこちらのパンは至高の逸品でございますでしょう。私など宮廷料理人とは名ばかり。パンの製造は下の下です」
「なんと!?」
「フレイズ様がそんな!?」
「王女殿下の腕前はそれほど……!!?」
フレイズ様の発言には私も驚いたけれど、臣下の人達はもっと驚いているだろう。たしかに、宮廷料理人のフレイズ様が自分の評価をそこまで下げちゃうんだから、私のパンがどれだけ凄いか推してくれている。
だから、執事さん達が持っているサンドイッチの箱をじーっと覗いちゃっているわけです。
ざわざわ騒ぎ出したのを、お父さんが片手を上げたことで落ち着いたは落ち着いたけど。
「そして……アーネスト殿の二番目の弟子に、チャロナは認められた。並びに、後見人にもなっている。皆、彼女の腕前は本物だ。それぞれそのサンドイッチを食べてみなさい」
『『『はっ!!』』』
お父さんの命令に近いお願いで、臣下の人達は順番に一口サイズのサンドイッチを手に取り……元の位置に戻ってから、恐る恐るって感じにかじる人が大半だった。
『『『う…………う、美味い!!?』』』
玉座の間である部屋全体に。
臣下の人達の、猛烈にバカでかい声が響き渡ったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます