159-5.覚悟(???視点)






 *・*・*(???視点)







 時が迫ってきた。


 この場所にきて、かなりの時間が経ったのはわかっているけれど……目覚めてからは、きちんと時間が経っているのがわかった。


 我が子と……シュライゼンやチャロナマンシェリーと出会える日が。


 そして、愛しいあの人とも出会える日が近づいているだなんて。


 夢のようだ。


 あの時、カイルキアとマンシェリーを庇った時に命を落とした時に、もう二度と会えないと思っていたから。



(……アインズバック。あなたとまた会えるかもしれないのね……?)



 目覚めてから、この空間越しに見てきた。


 どれだけ子供達を大切にしてくれているか。


 どれだけ……私を未だに愛してくれているか。


 相変わらず、過剰な部分はあるけれど。それすら愛しいと思えるくらいに、私も未だにあの人を愛しているのだから。



「……アクシア」



 ふふっと笑っていたら、女神様がいらっしゃったわ。


 幼い方ではなく、私の母くらいの見た目でいらっしゃる方の女神様。最高神様の方が。



「……いよいよ、明日よ。あなたの娘が選択を決めることであなたの運命も決まる」



 ぎょくの中にいるので声を出すことは出来ないが、私は小さく頷いた。


 そう、明日で。


 あの子もだが、私の今後も決まってしまう。


 選ぶのはマンシェリー本人だ。私が選べるわけがない。



「あなたも……ロティも、きちんと選んでくれると思うわ。あの子の事だもの。悪い選択をするわけがないもの」



 たしかに。


 私は今のあの子を夢路で一度しか触れていないが、泣き虫でも優しい愛しい子だった。


 神からの加護を受け、皆に愛されて満たされた日々を送っている。


 王族でなくとも、得難い日々が。


 それをこれからも続けるためには、あの子は選択しなくてはいけない。


 私とロティをどうするのかを。



「……もう少し、眠りなさい。次に目が覚めた時は王城だけれど」



 懐かしいあの場所。


 あそこに帰られるのだと思うと、嬉しくて嬉しくて仕方がない。


 けれど、それは同時に私がひょっとしたら天に召される日も近いという事。


 眠りにつきながら、その覚悟を胸に刻んだのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る