160-1.セルディアス城へ






 *・*・*









 式典当日。


 私は、朝ご飯を食べてからメイミーさん達メイドさん達に、お風呂で体を磨かれに磨かれまくりました。


 国王様の前に立つのだから、身だしなみは整えなくてはいけない。昨日も夜に磨かれたけど、直前も大事。


 と言うわけで、くたくたになるまで体と髪を磨いていただき、シュライゼン様が昨日の夜に転移魔法で持ってきていただいたドレスを着ることになる。



「……わあ!」


『でふぅううう!!』



 綺麗な……綺麗な紫色のドレス。


 全体的には紫なんだけど、白とかピンクとかの布も使われててとっても可愛らしい。前世の千里ちさともだけど、今の世界でもこのお屋敷に来るまでドレスを着ることだなんてなかった。


 だから、このドレスを着る機会は貴重だ。



「さ、着てからお化粧とかもしましょうね?」


「はい」


『でふぅ』



 ロティは本番中は影に潜っている予定だけど、磨けるのなら磨いちゃおうと顔にメイクをしてもらうことになった。



「チャロナちゃんは肌も綺麗だから、化粧のし甲斐があるわ。エスコートは旦那様がしていただくから、目いっぱいお洒落しましょう?」


「お……お手柔らかに……お願い、します」



 ウキウキしながらメイミーさんやアシャリーさんがメイクをしてくださる。


 ぽんぽんとかスーッと言う感覚には相変わらず慣れないが、フルメイクをする機会はこの世界でもほとんどなかったから。


 だから、緊張しないわけがない。



「はーい、ロティちゃん完成!」


『でふぅうう!』



 ロティは先に出来上がったようだが、まだ私はメイク中なので彼女のとこには行けない。メイドさん達がきゃーきゃーと楽しそうに騒いでいるとこに行けないのが、少し残念だ。



「……はい、出来た。チャロナちゃん、見てみて?」



 目を開けて、目の前の鏡台に写っている自分を見ると。


 前の授賞式以上に、綺麗にメイクされた完成形の自分の顔が目の前にあった。これが自分じゃないだろうと思ってしまうくらいに。


 けど、目をぱちくりさせているとかでちゃんと動いているとわかったので、絵とかじゃないのだと自覚出来た。



「……これが、私?」


「ふふ。自信を持ちなさい? あとは髪だけね? 素敵にしてあげるから」


「お……お願いします」



 その後、髪型も素敵にまとめてくださって。ヒールには、マナーレッスンでだいぶ慣れたので問題はなかった。


 シュライゼン様は既に来ていらっしゃるようで、カイルキア様の執務室で待機してるそうだ。ロティが影に入り、メイミーさんに先導してもらいながら、カイルキア様の執務室に行くと……扉を開けた途端声が上がった。



「んま!? どこぞのお姫様のようよ、チーちゃん!!」


「可愛くて綺麗なんだぞ!!」


「…………ああ」


「さっすが、姉さん達だね?」


「当然です!」


「あ、ありがとうございます……」



 褒められるのは少し恥ずかしいが、見栄えが悪くないのなら良かった。


 今日は、国王様にお会いするんだから綺麗にしなくてはいけないもの。


 とりあえず、今日ここから出発するのは私とカイルキア様以外に、マックス悠花さんとレクター先生も一緒だ。悠花さんは私とカイルキア様の護衛。レクター先生も魔法医としての同行らしい。


 転移の魔法が使えるのは私もだけど、お城にだなんて行ったことがないからシュライゼン様だけが魔法を使う予定だ。


 サークルのように、手を繋いでひとつの輪になり、そこからシュライゼン様のタイミングでお城に移動するんだって。


 シュライゼン様とカイルキア様の手を握ってから、シュライゼン様が声を上げた。



「行くんだぞ!」



 その掛け声と同時に、体がふわっと浮かぶ感覚を得て。


 ちょっと目をつぶっただけで、違う場所に到着していた。カイルキア様の執務室ではなく、赤がメインの壁に絨毯の床。赤色なのに、目に優しい色合いには驚いたけれど。



「ようこそ、チャロナ。セルディアス城に」



 いよいよ、式典の開催地に来てしまった。


 緊張が高まっていくけど、しっかりしなきゃ!

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