141-3.願望
*・*・*
ぱぱぱぱーん!
ぱぱぱ、ぱんぱかぱーん!!
と、何故結婚式のようなファンファーレが聞こえてくるんだろうか?
私はたしか。カイルキア様の執務室にいて……?
「さあ、チャロナちゃん。私が父親役で申し訳ないけれど」
いつのまにか、私の隣には燕尾服を着たシェトラスさんが。それと、なんかすっごいワードが聞こえてきたんですけど!?
「え、え? シェトラスさん!?」
声に出したつもりが、実際には声になっていなかった。
と言うことは、これは夢?
現実ではないと思う。体が勝手に動いて、シェトラスさんの腕にそっと手を添えた。まるで、新婦のお父さんとお婿さんのところまで歩くように。
(ってことは……!?)
勝手に動く体が向かう先には。神父さんの前に立っていたのは!?
「……来たか」
真っ白な……真っ白な素敵なタキシード姿の、カイルキア様だった!?
え、これ絶対夢だよね!?
なんて素敵……いやいやけしからん夢を見ているの!?
けれど、考えているよりも先に体は動いて、シェトラスさんからカイルキア様にバトンタッチされてしまい。
神父様の前で……と思ったら、神父役はシュライゼン様だった。
「……汝ら。互いを敬い、慈しみ。全てを愛すると誓うか?」
夢だからかわかんないけど、シュライゼン様がふざけていないことにちょっとびっくり。
「「誓います」」
そして、カイルキア様もだけど、私まで言っちゃった!?
結婚式の前に、私達恋人同士でもないのになんでなんで!?
んでもって、誓いのキスの流れになったから。私はもうキャパオーバーになったのだ。
「ダメぇえええええええええええええ!!?」
「うわ?! チーちゃん!?」
自分の大声と、近くにいた
場所は執務室じゃなくて、自分の部屋のベッドだった。
「……あれ?」
ついでに、ロティも私の横で寝ていたのだった。
「あれ? じゃなーい!? 急に大声出して起きるんだからびっくりしたわよん!?」
「ご、ごめん……」
「なんの夢見たの?」
「……笑わない?」
「内容によるわね?」
「実は……」
モニョモニョと結婚式の夢を見たと言えば。悠花さんは部屋から出て行こうとした。
「あいつにも言ってくるわ」
「だ、ダメ!? なんで言いに行くの!!?」
「チーちゃんを嫁にだなんて、告白とかでもされた!?」
「してないし、されていない!!?」
「じゃあ……あんたの願望かもねえ?」
私とカイルキア様が結婚?
結婚……結婚。
「ダメだよそんなの!?」
「なんでよ!? 身分差問題は、今度の勲章でさらにグレードアップするんだから!! 釣り合う範囲にまで上がるのよ!!?」
「そ……そうなの??」
「男ならともかく。女がそこまで受勲されるケースってレアよレア!! 国に認められるんだから、カイルの公爵くらいあるわ」
「そ……うなんだ」
身分差が釣り合う。
けど、孤児だったことは変わりない。
でも、でも。
カイルキア様に少しでも近づけることが出来るのなら。
「諦める理由だなんて、どこにもないわよ? あんたはあんた自身で、この国に色々貢献してくれてるんだから」
「……パン作ってるだけなんだけど」
「それが凄いの! ところで、体の調子は??」
「平気。……悠花さんが連れてきてくれたの?」
「ううん。カイル」
「ふぇ!?」
「なんとも思わない奴が。使用人だからって、甲斐甲斐しく世話しないわよん? 脈ありじゃないの??」
「そ……うかな」
レクター先生のヒントもだったけど。
私……自惚れてもいいのだろうか?
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