141-2.報告(シュライゼン視点)






 *・*・*(シュライゼン視点)







 まったく、我が妹の行動は見ていて飽きないんだぞ。


 俺と父上のことは伏せて、なおかつ式典の内容もいくらか偽ってはいても。


 本来の自分の住居である、セルディアス城に行くとわかれば意識を失うだなんて。


 まったく、可愛いんだぞ!



「チーちゃーん? チーちゃん、おーい?」


「……ダメだね。完全に気を失っているよ」


「もし自分が王女だって知ったら、卒倒ですまねーだろーな?」


「…………否定出来ないね?」


「……とりあえず、そこに寝かそう」



 カイルがひょいっと姫抱っこするくらい、ぞっこんなんだね? まったく。


 最高神からの妨害がなければ、とっくに付き合っていたかもしれないが。それだと、マンシェリーがどう思うか。


 将来的にはカイルに嫁いで、公爵夫人になるのはほぼほぼ決定だけどね?


 寝かされたマンシェリーは、苦悶の表情とかはなかったけど、良い眠りにはついてなかった。



「とりあえずー? 俺の用事はこれだけじゃないんだぞ」


「「え?」」


「……なんだ?」


「……強固派の一部が。マンシェリーを消そうと動いてきた」


「「「!!?」」」



 俺は懐から一枚の紙を取り出して、卓の上に置いた。



「イシュー=メルバルド。爵位は男爵。今までは目立って動くことはなかったけど。……アーネスト殿の二番弟子の噂をわざと広めたところ。マンシェリーだと行き着いたのが思いの外早くてね? 先日こっちにも刺客を寄越してきた。もちろん、護衛によって全部捕縛されたけど」



 その護衛って言うのは、もちろんフィセル殿の配下であるミュファン達だ。


 それを察したマックスが、大きくため息を吐いたけど。



「あー、あれか? 急に増員させたのがそれか?」


「「増員??」」


「全部染められた? って言えばわかるか?」


「「…………」」


「そう言うことなんだぞ!!」



 刺客全員が、あの護衛達の普段と同じ感じになるから、鳥肌が立ってもおかしくはないしね!!


 まったく、死ぬよりも怖い目に遭わせるとは、フィセル殿も容赦ないんだぞ?



「で? 親父の指導? でそいつらはなんとかなっても。まだまだ来るんだろ? 俺とかが出向かなくていいのか?」


「マックスはまだマンシェリーの側にいて欲しいんだぞ。ひとまずは、彼らに任せて問題ないのは君もわかっているだろう?」


「……まーな?」



 マックスはミュファン達とある意味幼馴染みだからね? 彼らの実力をよくわかっているんだぞ。



「俺が来たのは、それを直接言いに来たことなんだ。マンシェリーのことももちろんだけど、一応気をつけていてほしい」


「「ああ」」


「わかりました」


「じゃ、また」



 転移で報告も兼ねて、父上のところに飛ぶと。執務室で物凄く不貞腐れていたんだぞ。



「……戻ったか」


「今日の任務は終わったんだぞ!」



 多分だけど、この不貞腐れ具合は。



「……マンシェリーには会ったんだな?」


「もちろんだぞ? ちゃんと式典は城でやるって伝えたら……」


「ら?」


「……気を失っちゃったんだぞ」


「!?」



 俺が正直に言えば、目をまんまるにしちゃったんだぞ!



「どーしてだ!?」


「俺もわかんないんだぞ!? 国王からの要請、と。城で式典をするって言ったら……いきなり」


「…………早く会いたい」


「何回か会えたでしょ?」


「父親としてだ!!」



 ダンっと、強く卓を叩く父上は、どう見てもワガママな父親にしか見えない。


 これが本当の父親だと知れば、マンシェリーはどう思うか?


 まあ、あの子は。マックスと同じ転生者だから、普通の女の子ではないけど。



(ないけど……それでも女の子なんだぞ)



 カイル達が帰ってくるまでに聞いた、マンシェリーの異変と目覚めてからの感情の爆発。


 いくら、記憶を蘇らせて年相応以上になっていても、女の子は女の子だ。好きな相手と、デートだってしたい。


 今日見た限りでは、普通ではあったけど。



(神よ……あの二人の幸せを、これ以上いじらないでください)



 そう願っても、今は無理だとはわかっているが。


 とりあえず、目の前で泣きじゃくっているバカ父上を仕事に戻らせるのに、俺は腕を引っ張ったんだぞ!

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