138-5.その時の選択まで






 *・*・*








 カイルキア様とお出かけ。


 デート。


 デート。


 デート、だとぉおおおおおおお!!?


 とにかく、お弁当作りを悠花ゆうかさんにも手伝ってもらったので、今無限∞収納棚にしまってはいる。


 超ハイスピードで、なぜかメイミーさん達がお出掛け用のおニューの服を仕立ててくださった。


 カイルキア様にも、お風呂に行く前に呼び止められて、改めて言われた。


 そして、近くで聞いてたエスメラルダさんにお風呂で色々と磨かれた。


 なので、今の私は自室でクタクタ状態なのだ。



「うわあああああ!! うわああああ!! どーしよ!? どーしようううううう」


『でふぅ!! でーちょでふぅうううう!!』


「そう言うけど、ロティ!? 二回目だよ!? あれっきりの、使用人を労う意味でお出かけだけだと思ってたのに。二回目だよ!!?」


『にゅ? うれちくにゃいんでふ??』


「う……嬉しい…………けど」



 嬉しくないわけがない。


 だって、好きな人とのデートがこんな頻繁にあるだなんて思うのだろうか!?


 ただの労いだよね? もし、違ってたら。


 悪い方向じゃなくて、私の希望的観測があるとしたら。



『にゅ?』


「……私、死ぬの?」


『にゅ!? どーちたんでふか!?』


「だってだって!!? 私、ただの使用人なんだよ!? しかも一番新人が、旦那様に頻繁にデートに誘われるっておかしくない!!?」


『にゅ〜……ご主人様はもっとじちん持った方がいいでふ』


「だって〜〜」



 前世でも彼氏ゼロでデート経験無し。今世でも同じく。


 初恋かと思いかけてた、リンお兄ちゃんとはあの頃一緒に出掛けたりはしたけど……うん、ただの幼馴染みとしか思えない。


 うんうん、唸っていると。ロティに珍しくほっぺをぎゅむっと押しつぶされた。



『ご主人様、忘れりゅかもしれまちえん』



 ロティの紫の瞳は真剣そのものだった。


 そこから、意識がなくなり。気づいたら、真っ暗闇の中。


 どこだ、と思っても声が出ない。


 音が……出ないのだ。


 すると、私の目の前に見覚えのある女性の姿が出てきた。



『……選ぶ時が近い』



 私に言っているようで、独り言に聞こえた。


 それは何の選択か。聞こうとしたら、彼女に唇を指で押さえられた。



『近い。近いの……けど、あなたが選ぶのはきっとどれでもない』



 何の選択か。


 聞こうにも聞けない。


 そして、何故か切ない声を聞くたびに、胸が苦しい。


 涙も溢れて、つーっと流れる感覚に……ユリアさんはにこりと笑うだけだった。



『もうすぐなの。ごめんなさいね?​────」



 名を呼ばれたはずなのに、自分じゃないと自覚した途端。


 目が覚めて、部屋がとても騒がしかった。



「! レクター!? チーちゃんが!!」


「!? チャロナ!?」


「え、起きた!?」



 どう言うわけか、部屋は夜じゃなくて夕方で。


 私の部屋には悠花さんやカイルキア様に、レクター先生がいらっしゃった。



「ゆ……か、さん?」


「あんた大丈夫!? ほとんど丸一日起きなかったのよ!?」


「え……」



 カイルキア様とのデート、と不相応なことを考えてしまったが。


 じわっと涙が溢れてしまい、私は子供のように声を上げて泣いてしまったのだった。

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