130-3.後悔②(メルクキス視点)






 *・*・*(メルクキス視点)









 なんで俺達がこんな目に……と思っても仕方がない。


 結果的に悪いのは、マシュランだけでなく副リーダーの俺もだが、パーティー全体が承諾したからだ。


 チャロナを、姫を。


 どう言い訳があるにしても、一方的な言い分でパーティーから脱退させたんだ。マシュランから理由は後々聞かされたのだが、セルディアスに到着してから脱退させるつもりでいたと。


 チャロナが、亡命させられていたセルディアスの王家の姫だからと。使者から告げられたので、マシュランは決意した。


 それから、一時的にマシュランの実家に邪魔したり、主要都市のリュシアを中心に依頼をこなしていたりしたが。


 野宿は相変わらず全滅。自業自得だ。雑事をチャロナに任せていたのだから出来なくて当然。


 なので、気分転換も兼ねてまだ近隣だったホムラ皇国に来たわけだが。襲撃事件が起きて、行方不明の捜索をする依頼が目立っていたので、それに参加したけれど。


 チャロナの育て親である、マザーを救い出すことが出来たのはいい。いいのだが、俺達が元パーティーメンバーであり、チャロナを正式な理由で脱退させていないと知ったら。


 まるで、自分の子供のように叱り付けて、しまいにはシュリ城で掃除当番の刑を課せられることに。本人もやってるから、元気過ぎる。被害は主にマシュランだけど。



「ほら、まだまだ!!」


「はいぃいいい!?」



 今も、シミットとかが床磨きしてる横で、マザーとマシュランが壁磨きをしている。


 自分の孤児院が襲撃されたのに、元気過ぎるぞあのおばさん?


 ちょっと、いやだいぶチャロナが影響されていたのはよくわかったが。


 ふっきれていない、チャロナへの想いはあるが諦めるしかない。だって、俺は反対意見すら出来ずにマシュランの決断に呑まれたのだから。


 だから、俺がいくらチャロナを想っても伝わるはずがない。おまけに、大事な王女と知ったら身分差も甚だしい。貴族連中に敵うわけがない。


 いつか、幸せな生活を送るんだから、つけ込む意味がないのだ。俺なんて、ただの庶民出の男だからな?



「……元気してっかな」



 と、呟いてたら誰かに肩を叩かれた。


 マシュランかと思ったが、居たのは弓者アーチャーのミッシュだった。



「……会いに行きたいなら、会いに行く」


「ミッシュ?」


「ちゃんと、謝ろう? あの子に」


「けどよ」



 こんな中ランクくらいの冒険者メンバーが城に行っても、門前払いされるだけだと思う。


 だが、ミッシュは首を横に振った。



「出来ないと、決め付けるのもよくない。誤った選択をしたのは、結果的には私達」


「……そうだな」



 だから、今はマザーに叱られながらも罰を受けているのだ。それが償いにならないなどわかり切っているが、このまま後悔を引きずっているのも良くはないだろう。


 なら、マザーも連れてってセルディアスに行こうと提案したのだが。



「……私は行けません」


「「「「「「何故!?」」」」」」」


「いくら元はセルディアスの人間であれ、姫様に顔向け出来ないわ。だから、この国で出来ることをしたいの」


「……マザー、それは本当に?」



 ミッシュが問うと、マザー・リリアンは肩を震わせた。



「…………ごめんなさい。行けない理由はもう一つあるの」


「……なんなんだよ」


「貴族の中にまだ潜んでいる、王家に歯向かう強固派と呼ばれている派閥があって。私は彼らに狙われてたの。姫様を取り立てるために。だから、まだ。姫様が『公表』されるまでは」


「え? チャ……姫ってまだ城に戻ってないんですか??」


「色々あって……まだ、王家の血族である公爵家の当主殿のところに」


「……じゃあ、まだ家族に?」



 会えていないのか、と思っても。マザーの孤児院を他国とは言え襲撃するくらいの過激派がいるってことは。


 あいつは、まだ幸せになれないのだと言うこと。


 俺ら冒険者には……どうしようにも出来ない事実に歯を食いしばるしか出来なかった。

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