130-1.懐かしい再会(シュィリン視点)
*・*・*(シュィリン視点)
シュライゼン殿下から、ホムラの孤児院が襲撃されたと聞いた時は肝が冷えたが。
院長である、マザー・リリアンは誘拐されたものの無事に冒険者によって奪還が出来たそうだ。
だが、その冒険者が
リュシアから去ったと、暗部の部下から報告があったとは言え、まさか少し離れたホムラ皇国にまで赴いているとは露知らず。
そして今は、マザー・リリアンの希望でシュリ城にいるらしい。
どうして一緒になった理由を殿下に聞けば、姫を脱退させた理由についてらしく。その説教も兼ねて滞在させているようだ。
けれど、もう解放してもいいだろうに。何故、未だに彼らをシュリ城に滞在させているのだろうか?
とりあえず、アシュリンを通じてマザーには会わせてもらうことになったのだが。
アシュリンと会ったら、従兄弟は珍しくげっそりしていた。
「……どうしたんだ?」
「いや……その、兄上。申し訳ない」
従兄弟の執務室に入り、外套を外したら余計に顔色が悪いのがうかがえた。
いったい、どうしたのだろうか?
「何があった?」
「……その。セルディアスの女性は強いのだなと、実感しました」
「? どう言うことだ?」
「例のマザーが。まあ、説教を終えたら……例の冒険者達を心身共に鍛えようと……シュリ城全体を出来る範囲内で掃除させているんです」
「……それで、あちこち磨かれているのか」
マザー・リリアンは貴族の出であるから。そこから去っても事実を知った人間は受け入れたのだろう。だが、矯正のためとは言え、あの冒険者達がよく言う事を聞いたものだ。
「とりあえずは、今日で落ち着きました。そして、彼らの話を聞くに……姫がどれだけパーティーに必要だったか。悔やんでいるようです。けれど、姫は今彼らよりもこの世界自体が必要としていることは告げました」
「
「いいえ。セルディアス王家の姫として……と彼らには偽りの情報を。いずれにしても、あと半月で公表されるでしょうし。完全に嘘ではありませんから」
「……それを聞いて安心した」
であれば、俺の出番はないか。
ただ、マザー・リリアンには会わなくてはと、別室に彼女を連れてきてもらった。
彼女と対面してから、俺は腰を折った。
「あなたは……?」
「お久しぶりです、マザー・リリアン。シュィリンと言う名に聞き覚えは?」
「まさか……シュィリン殿下?」
「今はセルディアスで暗部に所属しています」
「そんな……何故」
「あの孤児院で、ユーシェンシー伯爵から抜擢されたので」
「……そうですか。けど、何故ホムラに?」
「孤児院が襲撃を受けたと。しかし、あなたも無事でシュリ城にいるとシュライゼン殿下から知らせを受けて」
「なるほど……」
「はい……」
そして、姫は元気でいると告げれば、彼女は静かに泣き出した。
「……そうですか。無事で何よりです」
「……あの。セルディアスには来られないのでしょうか?」
「え?」
「姫はあなたに会いたがっていますよ?」
姫と再会してから、俺にも言ってきたのだ。いつか、一緒にマザーに会いたいと。
それを告げると、今度は首を横に振った。
「たとえ、育ての親と思われても。私はもうセルディアスの人間ではありません。そう簡単には戻れませんわ」
「……そうですか」
予想していた返事の一つを言われたので、俺も無理にとは言わない。
それと、アシュリン達が決めたようだが。孤児院の死傷者の弔いと再建は王族主体で行うそうだ。
だから、院長である彼女はいずれ戻らなくてはいけない。片付けなども、明日から例のパーティーも含めてやるそうだ。
そして、俺は彼らには合わずにセルディアスに戻ったのだった。
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