129-4.思いを叶えるために(シュライゼン視点)






 *・*・*(シュライゼン視点)








 チャロナマンシェリーの後をこっそりついて来たのだが。


 また、リトの幽霊ゴーストが彼女の前に現れて何かを告げに来たようだ。残念ながら、距離があり過ぎて何をしているかまでは聞き取れないのだが。



(……それだけ、我が妹を慕ってくれてたのか)



 まだ五つ程度の幼児の命。


 風邪をこじらせたとは言え、死なないとは言えない病気だ。食ももともと細かったが、マザーの話によるとマンシェリーの作ったパンには興味を持って、いつもなら残す食事をすべて完食したほど。


 だが、普段の食事は変わらず。行動力も低いので、クラット達のおやつ作りには参加していなかったそうだ。


 そんなあの子が、まさか死んでいるとは思わなかった。なのに、今日マンシェリーや俺達が来た後には、一時的に誰もが忘れていたそうだ。


 魔力が低いはずの、幼い幽霊ゴーストにそこまで出来るはずがない。であれば、また最高神が関わっているかもしれない。


 幼い命を……弄んではいないようだが、いったい何がしたいのだろうか?


 マンシェリーに、この世界でいったい何をさせたいのだろうか。


 おそらく、だが。【枯渇の悪食】を払拭させんがために……マンシェリーの器を使ってマックスのように、余所の世界から転生させてもいるのだが。


 それでも、まだ飽きたりないのだろうか?


 我が従兄弟である、カイルとも未だに結ばれないようにさせているのに。


 加えて、先日のマザー・リリアンの孤児院の襲撃。


 何故、育ての親をもっと穏便に保護出来なかったのだろうか。マンシェリーを脱退させた元パーティーに何故救出させたのか。



(わからない……わからないことだらけなんだぞ!)



 けれど、その事件がなければ。強固派の残党も捕縛出来なかった。


 お陰で、もう我が城にはほとんど強固派がいないんだぞ。父上も嬉々としてマンシェリーへの生誕用のプレゼントを作るくらい余裕が出てきた。


 俺にはいいことばかりでも、マンシェリーはまだ成人を迎えて一年目だ。いくら、前世が成人済みの女性だったとしても、共鳴してまだ数ヶ月程度。


 神は、我が妹にどうしてここまで重責を負わせるのだろうか?



「あれ? シュライゼン様?」


「うわぉぅ!?」



 考えごとをしてたら、こちらに気づいたのかマンシェリーがやってきたのだ。



「あ、あの……」


「うん?」


「見て……ました?」


「……話の内容までは聞き取れていないんだぞ」



 正直に言うと、マンシェリーは苦笑いしたのだった。



「私のお願いは、ちゃんと叶うってわざわざ言いに来てくれたんです」


「君の願い?」


「正直。願いはたくさんあります。全部が無理なのはわかっているんですが。……この国で出来ることがあるなら。それと、ホムラにも必要とされているのなら出来ることはしたいなって」


「それ。お願いじゃなくて、君の目標じゃないかい? カイルとの事とは考えないのかい?」


「……それは、正直諦めています」


「なんで!?」



 カイルも君自身を想っているのにぃ!? と言えない歯痒さ。


 けれど、マンシェリーはさらに苦笑いするだけだった。



「パン作りしか取り柄がないんですし。いくら皆さんが応援してくださっても……カイル様には、きっとそんな対象に見られていませんし」


「んもおおおおおお!? 君は自分自身の魅力に疎いんだぞ!?」


「シュライゼン様?」



 そして、俺がマンシェリー自身の魅力を語ろうとしたのだが。


 またもや、最高神の妨害となり、俺とマンシェリーはリトのような子供を出さないように英気を養う料理を提案する話題にすり替えられてしまったんだぞ!?

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