120-2.本物のラザニア②






 *・*・*









 コロンが500万も?


 しかも、一人前作ってからひと口食べただけで?


 なんで、こんなにも付与されたのだろうか? 神様のご機嫌次第だろうか? とりあえず、カロリーオーバーしている料理は色々優遇されるのだけはわかったんだけど。



「う〜〜ん。あたしは神じゃないし、チーちゃんと同じ異能ギフト持ちじゃないもの。わからないことだらけだわ〜」



 悠花ゆうかさんの回答もこうだし、今はまだ仕事途中だから。あとで、カイルキア様に報告がてら考察することになった。


 とにかく、今はお昼の準備。


 ラザニアを焼く担当、チーズトーストを焼く担当。あとは、サラダの盛り付けとか。


 そうこう準備している間に、カイルキア様とレクター先生がやってきたので。カイルキア様のいつものテーブルのところに二人分運んでから説明することにした。



「お待たせ致しました。昨日のパンで作ったものではなく、本物のパスタでのラザニアです!」


「ほう?」


「見た目は昨夜食べたのとあんまり変わんないけど」


「パンだった層の部分を、エスメラルダさんお手製のパスタシートで作りました。どうぞお召し上がりください」


「「いただきます」」


「昨日と同じ、かなり熱いのでお気をつけください」


「わかった」



 そして、お二人はフォークで少しラザニアを切り分けたら。すくった時の湯気に少し驚かれ、よーく息を吹きかけてから口に運んでくださった。



「あふ!?」


「けど……美味い。パスタの食感のお陰か。昨日のパンとは全く違うな? 俺はこちらの方が好みだ」


「僕も」



 はふはふ言いながらも、美味しそうに召し上がっていただけたので嬉しさが込み上がる。


 レクター先生のように、全身で表現してくださるわけではないけれど。カイルキア様も、ほっぺを赤くしながら一生懸命召し上がってくださる。


 たしかに感情豊かではないけど、喜んでくださっているのはわかった。だから私も嬉しいのだ。



「あの、カイル様」


「? どうした?」


「また、異能の関係で少しお話ししたいことが」


「……わかった。皆に昼食を配ってからでいい。マックスは知っているのか?」


「はい」



 こっそりとそれを伝えてから席を離れて、それから一生懸命に昼食提供をして。


 自分とロティも裏の小部屋で食べたら、レベルはまた上がり。ロティのナビレベルが上がっても、やっぱり意識が飛ぶのは一瞬で他に何も起こらなかった。



「う〜〜ん……よくわかんないなあ?」


『ロティも全然でふ』


「まあ、仕方がないけど。見た目の更新は今のところほとんどないね?」


『でふ』



 幼稚園サイズもだが、髪の長さや顔つきもあんまり変化はない。今のところ停滞気味だからだろうか?


 それとも、これが最大か。


 レベルも34だし、ロティのレベルもそんなに上がっていないから? たしかに、ロティの今のところのカンストは50らしいから、まだまだだけど。


 とりあえず、気にしてはいけないなとロティと決めて、カイルキア様の執務室に悠花さんとレイ君も一緒に向かうことにした。



「……それで。異能に何かあったのか?」


「はい。技能スキルをレベルアップさせるポイント……コロンですが。先程召し上がっていただいたラザニアを、私達が試食したひと口でかなりの数値を得られたのです」


「どれくらいだ?」


「500万でした」


「……いつも。と言うよりは平均だとどれくらいになる?」


『多くて、100万でふよ! けど、今回のようにひと口と一人前ではにゃかったでふ!』


「……そうか」



 ロティが答えてくれたので、私達はカイルキア様の答えを待った。



「チャロナちゃん。ウルクル様から加護をいただいた後とかにも、コロンは付与されたんだよね?」


「はい、先生。今は、以前のようにラスティさん達に作物はお願いしているので、そちらでのコロンの付与はされていませんが」



 実際忙しくなり過ぎて、お世話が追いつかないのだ。なので、菜園側の方はもうほとんどラスティさんとエピアちゃんにお任せ状態である。


 けど、その食材を使っただけでも。あとで確認したコロンの数値は高い。



「そうか。何か他におかしなことはあったか?」


「あるとすれば……先程も確認したのですが、私とロティがそれぞれレベルアップしてもほとんど変化が見られないんです」



 最初に見た、【枯渇の悪食】での飢饉の光景を。


 と、カイルキア様達にお伝えしても。レクター先生と一緒に唸るだけでした。



「……警戒、すべきではないだろうが。神は思った以上に気まぐれかもしれないな? ウルクル神を見てチャロナも思うだろう?」


「は、はい。結構自由な御方ですよね?」


「この世界の神の頂点も、きっとそうかもしれん。が、うかつに考えていても良くない。あまり気にし過ぎないように」


「わかりました」



 何か、避けようとしている?


 そんな気はしたけど、すぐに違うと頭の中で振り払い。夕飯の支度の前に、悠花さん達とコロンを振り分けるのに自室に向かうのだった。

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