120-1.本物のラザニア①(マックス《悠花》視点)






 *・*・*(マックス《悠花ゆうか》視点)









 チーちゃんの些細なうっかりで、エスメラルダエスティやサイラにチーちゃんの異能ギフトとかがバレちゃったんだけども。


 エスティもだが、サイラも言いふらさないって、カイルの前で宣言したし。これからチーちゃんの料理にもっと協力すると言ってくれたから、結果オーライってとこね?


 あたし?


 あたしは、ついでとばかりに自分の秘密を言ったし、エスティ達はとりあえず受け止めてくれた。


 今日は、念願のラザニア作りよ!


 張り切って、手伝うわ!


 普段……最近はカイルの雑用係ばっかだったけど。今日はチーちゃんの手伝いに買って出たわ。


 だって、ラザニアよ!



悠花ゆうかさんと、レイ君には耐熱皿にバターを薄く塗ってもらっていいかな?」


『合点でやんす!』


「いいわよ〜?」



 オーブン料理で、耐熱皿を使う場合。


 あたしの前世の母さんは、耐熱皿の料理だとバター以外にもニンニクを擦りつけていたわね? 理由はあんまり覚えていないけども。


 レイと作業するのは、ちょっと久しぶりだけど。王女様チーちゃんの事だからテレパシーで話すことにしたわ。



【……明日から。チーちゃんはエイマーに混じって行儀作法のレッスンよ?】


【ついに、でやんすか。準備は進んでいるでやんすかねー?】


【あの子煩悩親父のことだから、そこは大丈夫でしょ? けど、チーちゃんにいつ話すか】


【無闇に言えないでやんすからね?】


【そこよ】



 レイはお口チャックな感じで、最高神フィルド達のことについては口を割らないし。相槌は打ってくれても、あたし達から奪い取った記憶に関してはなにも言わない。


 だから、面倒だけどあいつらのことは、テレパシーでも避けなきゃ。



『あ、終わったでやんす』



 テレパシーをしながらも、夢中でお皿にバターを塗ってたらあっという間に終わってしまった。


 あたしの方も終わったので、チーちゃんに次の作業を聞きに行くことに。



「そうだね? じゃ、今から全員でラザニアの仕上げしちゃおう!」


「いいわよ〜?」



 二種類のソースに。エスティ手製のパスタシートもいい感じに出来上がったので、今日のランチはラザニアセットよ!


 添えられるパンは、昨日のおやつと同じガーリックチーズトースト。


 チーズ祭りだけど、あたしのユニーク称号『燃費最悪魔王』も最近落ち着いてきてるのよね!


 多分だけど、前世の料理をチーちゃんが再現してくれてるお陰だわ。基本的に、この屋敷にいればあんまり腹を空かすことはないし。


 とにかく、分担してソースの層、パスタ、最後にチーズ! を順番に重ねていき。


 試食用に、一個だけロティちゃんのオーブンで焼いたら。厨房内に、焼けたチーズとソースの香ばしい匂いが充満していくのだった。



「はぁ〜〜、良い匂い〜」


「うん。匂いは昨日と同じだけど。具材の一部がパンからパスタに変わっただけだが」


「どんな味になるのだろうね?」


『でやんす』


『ぷっぷっぴっ! でーきまちたー!』


「「『「はや!?」』」」



 ちょっと雑談している間に、もう出来ちゃったわけ?


 まあ、具材はほとんど火が通っているものだし当たり前かしら?


 チーちゃんがミトンをはめて取り出すと、熱々、ぐつぐつに、湯気もすんごいラザニアの皿を調理台の上に置いた。


 どこをどう見ても、ファミレス以上にすんばらしい出来栄えだわ!



「チーちゃぁん! 早く試食したいわ!」


「まずは、シェトラスさんから」


「おや。私からでいいのかい?」


「はい。昨日のパンで代用したラザニアとの違いを、わかってもらいたいからです」


「責任重大だねぇ?」



 けど、そうね?


 あたしだったら、絶賛するだけで終わりそうだわ。


 とにかく、シェトラスがフォークを持って、ラザニア皿にゆっくりと入れた。パンの時とは違い、生パスタの感触に驚いただろうが。


 すくい上げたら、パスタとソース、そしてチーズの層の美しさに目を細めながら感動していた。


 そして、湯気がすごいラザニアに息を吹きかけて、ゆっくりと口に入れたら。



「!?」


「ど、どうですか?」



 チーちゃんが尋ねると、シェトラスはよく噛んでからラザニアを飲み込んだ。



「うん。味は昨日と同じだが。パスタとなると食感も味わいも変わってくるね? エスメラルダが仕上げたパスタも絶妙だが、麺じゃないパスタとここまで相性がいいとは」


「りょ、料理長! 私も!」


「うん、食べてごらんなさい」


「あたしも!」


『俺っちも!』


『ロティもでふぅ!』



 と言うことで、全員で一皿を味見したら。もう、チーちゃんの料理スキルのチートさに、感動したわ!


 パスタはエスティのだけど、パスタシートのアルデンテとかは絶妙よ!


 ミートソースとホワイトソースの相性も抜群だし、昨日のパンと違ってもちもちしてるから食べ応えがあるわ!



「あ」



 ひと口食べ終えたチーちゃんから声が上がった。


 この反応は今までなかったけど、ぼーっとしてないし。もしや?



「チーちゃん、まさか」


「あ、ううん。レベルアップはしてないんだけど」


「けど?」


「なんでか、コロンが付与されたの……」


「んんー? コロンってステータス見ないとあんまりわかってなかったんじゃ?」


「そうなの。だから、なんでかなって」


「ちなみにいくら?」


「……驚かないでよ?」


「今更でしょ?」



 さあさあ、と囃し立てたら。チーちゃんは少し息を吐いてから口にした。



「500万」


「へ?」


「だから、500万」


「……今のひと口で?」


「うん。まだ他は焼いてないから、PTも加算されていないし」



 フィルド。


 あんたら、自分が食べたいからって、甘々に加点し過ぎじゃないかしら?

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