110-4.ドライカレー実食の後
*・*・*
油揚げを手に入れたけど、今日お鍋にするわけじゃないから厨房に戻ってから一緒だったお豆腐も収納棚に入れて。
夕食の配膳やおかわりラッシュもだいぶ落ち着いてから、
「ではやっと!」
『いちゃだきまふううううううう!!!!』
悠花さんとレイ君の前で、いざ、とロティと一緒にスプーンを構えて。勢いよく、カレーを口に運んだら?
【PTを付与します。
『夏野菜たっぷりドライカレー』
・製造100人前=2200000PT
・食事一人前=10000PT
→合計2210000PT獲得
レシピ集にデータ化されました!
→レベルが32に上がりました!
次のレベルまであと3245000PT
】
【
ナビレベルが5になりました!
ただちにアップデートを開始します。
次のナビレベルまで、あと2568000PT
】
「ごちそうさまでした」
『ごちしょーしゃまでふううううう!!』
今回はご馳走様をしてから、アップデートが開始され。ロティの方もだが、私までレベルアップ可能なくらい大量のPTが付与されてしまい。
前回のアップデートと同様に、意識が遠のくかと思えば。
「……なにこれ」
目の前が、黒一色。
悠花さんとレイ君、ロティもいない。誰もいない空間に一人立っていたのだった。
「……これは。夢? また
その割には、何にも起きない。
最初の時みたいに、過去の記憶を見せられたりとか。本当に何にもない闇の空間みたいだ。
ただ、足を動かすと水が落ちるように音がした。
「……ロティ?」
一応ロティを呼んでみても何も返事も何もない。
なら、また私一人だけどこかの空間に迷い込んだのか。
とりあえず、水音を気にせずに前に向かって歩いていくと、誰かの声がした。
『……こ。どこ、なの』
男の子の声。
誰かいるとわかったら急いで走ってみたけど、姿がなかなか見えなかった。だけど、声だけは相変わらず聞こえてきた。
『どこ……どこなの? もう一人の、僕の……』
誰かを探しているのだろうか?
私なのだろうか?
でも、それはわからない。
とにかく、急いで声のする方向に向かってはいるけど、一向に向こうの姿が見えてこないのだ。
(……誰を探しているの?)
苦しんでいるような、泣き叫ぶ手前の声を聞いていると、こっちまで泣きたくなってしまいそうだった。
走って走って。
時々転けそうになったけど、くじけずに走って走って。
やがて、光……があるように見えた箇所にたどり着いて。
見えたのは、黒い髪と黒い服……と言うよりマントを着込んだ男の子が地面に座り込んでいたのだった。
『……どこなの。どこに、いるの……?』
ずっと聞こえていたのと同じ、澄んだ声。
背丈は座っているからよくわかんないけど、だいたい中学生くらい?
何故動かずにこの空間にいるのかはわからないが、探している相手は私なのか。
確認するために、私は近づいて手を伸ばしたが。
男の子なのか、私なのか。
どちらかが実体じゃないせいか、肩に触れようとした手がすり抜けてしまった。
『どこ……どこなの?』
男の子は私が近づいたことに気づいていないのか、変わらず泣きそうな声で誰かを呼んでいた。
試しに前に回っても、全然気づかれない。なら、私の方が実体化してないのなら、これはまた記憶なのだろう。
『僕の……僕の
つがい……つがい?
たしか、ウルクル様が恋人のラスティさんに対してよく言っていたような……?
「え……てことは、中学生なのに夫婦!?」
大声上げちゃったけど、やっぱりこっちが実体化してないせいか男の子は相変わらず泣いているだけだった。
と言うか、前回のその前も記憶を見たのは一瞬だったのに、今回はすぐに元に戻らない。
これはいったいどう言うことなのか。
わけがわからない事態になってしまった。
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