83-2.餅つき大会①
*・*・*
餅つき大会当日。
開催時間は、お昼前からとなったので。
朝ご飯の後から、臼の数分、蒸しては収納棚に入れたりして。
調味料、餡子の準備も整ったら、皆さんが集まってるであろう会場に行くと。
「なんだこれ?」
「桶……にしては底が浅いし?」
「水溜めてんの、なんでだ?」
「木のハンマーみたいなのも、見た事ない形だし?」
「「「あ、チャロナちゃん!」」」
「「「お」」」
バケツを持って外に行くと、皆さんが気づいてくれまして。
ロティと一緒に向かえば、向こうからやって来て私達の周りに集まられた。
「もうすぐ始めますので」
「あれ、イベントに関係あるの?」
「何するの?」
「餅つきと言う作業をするんです」
「「「「「モチツキ??」」」」」
『おもち美味ちーんでふううう!』
「「「「「へー?」」」」」
皆さんの疑問も最もなので、後からやって来られたシェトラスさん達と臼の水を抜いていると。
皆さんも、見てるより動きたいからと、作業を手伝ってくださいました。
「このハンマーみたいなので、どうするの?」
「つくって言ったら、叩くんじゃね?」
「え、木槌でも食いもんだぞ?」
「だから、よく水で洗っておいたんじゃ?」
「「「ああ」」」
当たってるような、そうでいないような気もするけど。
皆さんなりの解答に行き着いたのなら、何も言わない。
この世界はともかく、異世界の食文化については詳しく話せないからだ。
「よぉ、チャロナ。面白い道具じゃないか?」
「こんにちは、エスメラルダさん」
『でっふ!』
調味料提供者のエスメラルダさんは、餅つきに参加する気満々なのか、男性と同じように軽装でいらして。
あ、メイドさんがほとんどの女性陣は万が一醤油をこぼしてもいいように汚れてもいい服装になってもらってます。
あと、エピアちゃんはいつものツナギ姿。
で、エスメラルダさん興味津々で私に色々聞こうとしている。
「あのハンマーみたいなので、モチとやらを作るのかい?」
「はい。カイル様がご説明してくださってから、一度実演もします」
「そりゃ、楽しみだ。アンコとショーユがどう活躍するのかも見ものだねえ?」
『美味ちーでふ!』
「おう。期待してるよ」
それから、エピアちゃんにも挨拶してから一緒に臼を拭ったりして。
カイルキア様とレクター先生、がやって来られた時にはお屋敷中の使用人が勢揃いして。
皆さんがカイルキア様を囲むような形で集まって。
カイルキア様が、全員を見渡してから、軽く咳払いされてご説明をする事に。
「敢えて、趣旨を伝えなかったのは。すぐに作れるものではないからだ。皆も確認していると思うが、ここに用意された道具は。皆も存じているウルクル神が創られた。ウスとキネと言う道具だ」
『おお』
『大事に使うのじゃぞ?』
『はい!』
昨日もご参加くださったウルクル様も、ラスティさんの肩の上で浮かびながら、そう言われた。
皆さんも、ウルクル様とは面識がお有りなのか、すぐに道具の不思議さには納得されたみたい。
「今からやるのは、モチ米と言う作物を蒸して、己の力で作っていく『モチつき』と言う行事だ。実演は、チャロナとマックスにやってもらう。二人とも、頼んだぞ」
「おう」
「はい」
さて、ここからが私達の出番だ。
収納棚から出すフリをして
蒸し布を臼の中で広げて、もち米をセットしたら。
昨日と同じ要領でもち米を杵で粗方潰してから餅つき開始!
「「せーの!」」
「うりゃ!」
「はい!」
「そーれ!」
「はい!」
「な、なんだなんだ?」
「ああやって作るのか?」
「へー、ありゃたしかに男じゃないと無理そー」
「「「「うんうん」」」」
皆さんの声が耳に届いてくるけど、ここで手を抜いてしまっては美味しいお餅が作れない。
かえし役をしっかりと熟してから。
悠花さんと一緒に作った、つきたての美味しいお餅の姿が見えてきたら。
杵にひっついて伸びてくお餅の姿を皆さんが目にすると、歓声が上がり。
綺麗に出来たら、シェトラスさんとエイマーさんがやってきてお餅を持って行ってくださった。
「このお餅をひとくち大にちぎって、餡子、砂糖醤油、おろし醤油と三つの味で楽しめます」
『ショーユ??』
「あたいが分けてやったあれさね!」
「はい。そのままだと塩っ辛いんですが、砂糖や大根をすりおろしたのと合わせると美味しいんです。是非試してみてください。餡子は、あんぱんの中身にしてたものです」
「最初は一人一つずつだが、味見も兼ねて食べていい。シェトラス達がとりわけてくれる。皆、慌てずに並ぶんだ」
『はい!』
なので、私、レイ君に加え。悠花さんもあとでいくらでも食べれるからと手伝ってもらい。
餡子の列が一番多かったけど、カイルキア様の号令で綺麗に並んだ皆さんにお餅を渡していく。
「あ、注意する事がひとつあります。お餅は喉に詰めやすいので、慌てずに食べてください。これをよく食べる国だと、下手をしたら死ぬ事もあるので!」
『( ゚艸゚;)』
「ち、チャロナちゃんマジで?」
「ほんとだよ、シャミー君。だから急いで食べないでね?」
「お、おう」
これは本当に本当。
日本じゃ、お正月シーズンに一人か二人は死者が出るって言われてるくらいだもの。
食べ慣れてても、油断は出来ない。
皆さんに頷いてもらうと、それぞれ手にしたお餅を眺め始めた。
「どんな味だろ?」
「急いで食うと、死ぬかもしれないって?」
「けど、それだけ美味いって事かも」
「…………美味い」
「ライオネル筆頭、早!」
「アンコと相まって、優しい味だ。噛み切るのは少し難しいが」
「「「「「じゃ、いっただきます!」」」」
そうして、口に含まれた直後。
皆さんの蕩けるような、恍惚の笑顔を見れました。
やっぱり、豊潤と口福のお陰かも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます