83-3.餅つき大会②

 とりあえず、私とか厨房組は今回の取り分けでは食べず。


 収納棚にしまっておいた蒸し布に包んだもち米を、厨房組と悠花ゆうかさんと協力して各臼に入れる作業をするのに。


 幸せに浸ってる皆さんには申し訳ないが、これからが本番なので。


 悪いですが、声がけさせていただきます!



「皆さん! 今から、それぞれの臼でお餅をついてもらいます!」


『おお!』


「男連中、気合い入れてやるのよ!」


『あいあいさー!』


「合図は私がするので、適宜別れてください!」


「ね〜ね〜、私もしていいかしら〜?」


「え、アシャリーさん?」



 ほえほえ、ぽわぽわの代表と言ってもおかしくない、メイド副長のアシャリーさんが、動きやすいワンピース姿で話しかけてきた。



「あのハンマー……キネ、だったかしら〜? 私でも持てたし、自分でもやってみたいの〜」


「け、けど。結構重労働ですよ?」


「毎日山程のシーツを持つもの〜。大丈夫よ〜?」


「じゃ、じゃあ。かえしは私がやりますね?」


「お願いするわ〜」



 と言う事で。


 厨房組と、悠花さん。あと、練習に参加してたラスティさんがかえし役を担うことになり。


 けど、当然足りないので、そこは使用人の男性が担当してくれることになり。


 見本は見せたが、タイミングよく行かなくてはいけないので、私の近くに臼を移動させて。


 一斉につくことになった。



「いきます! せーの!」


『よいしょ!』


「ここでまとめて、つきやすいようにします。その繰り返しです。杵は、時々バケツの水で湿らせて。かえしも手を濡らしてください!」


『せーの!』


『よいしょ!』



 本当に出来るかなって思ったけど。


 アシャリーさん、ニコニコ笑顔のまま杵を持って、餅つきがきちんと出来ていて。


 つく場所も的確で、かえしもすっごい楽。


 他も見渡してみると、やっぱりエスメラルダさんも杵を振るってて、かえしはサイラ君が担当していた。


 けど、合図は私がやらなくちゃだから、様子を見つつも声を上げて。


 何度も何度も、つく、かえすを繰り返していけば!



『出来た!』


「うおおおおお、出来たぞおおおおおお」


「……自分で、出来るものか」


「筆頭すっげ!」


「あ〜……かえしだけやのに、疲れたわ〜」


「その分、美味いモチになってんだろ?」


「うふふ〜、綺麗に出来たわ〜」


「お疲れ様です」



 さてさて、ここからはまた厨房組が頑張らなきゃと思いきや。


 観覧してた、メイド組と執事組が手伝うと言ってくださったので。


 メイミーさんと、ゼーレンさんを筆頭に指導をしてから。


 ちぎって分けた、お餅が結構大量にあるけど。これを収納棚に入れて保存しておくだけだと、多分全員には多過ぎる。


 ウルクル様が、一応食材に効く保存の結界を施してくださる予定ではあったけど。


 ちょっと作り過ぎたかも。


 今も、美味しそうに召し上がってはくださっている皆さんだが、いずれ飽きはきてしまう。


 何か、対策を考えねば。



「チーちゃん、難しい顔してどうしたのよ〜?」



 と、ここで、悠花さんが自分の分を食べながらやってきた。今食べてるのは、あんころ餅。



「あんころ餅……そうか、あれだ!」


「へ?」


『でふ?』


「マックスさん、ずっと三種類だけじゃ、お餅の消費が追いつかないでしょ?」


「ん、まー。きな粉ないし、七味もないものね?」


「餡子多めに炊いてるから、大福作らない?」


「のった!」


『なんじゃ? まだ違うモチの食べ方があるのかえ?』


「ええ!」



 ウルクル様もちょうどやって来られたので。


 お餅の何組かは、臼に入れたままにして乾かないように結界を張ってもらい。


 エイマーさんに話して餅取り粉になるコーンスターチを大量に持ってきてもらい。


 魔法鞄マジックバックから出すフリをして、銀製器具シルバーアイテムから大きめのバットをいくつも出す。


 ちなみに、魔法鞄マジックバックは私が冒険者時代からずっと使っているものだ。魔力量が増えて、収納量も段違いに増えたので、今日は銀製器具シルバーアイテムを隠している。



「あらあら、まあまあ〜。チャロナちゃん、何を始めるの〜?」


「お餅の別の食べ方を披露させていただきます!」


『*゚Д゚)*゚д゚)(*゚Д゚)オォォ...』



 と言っても、大した手間はないけれど。


 まずは餅取り粉を多めに敷いたバットにお餅を入れて、よくまぶし。


 適当な大きさに、包丁で切ったら、少し手のひらの上で広げて。


 少し固めに水分を飛ばした餡子(ウルクル様に水分を抜いてもらった)、に。夏苺をひと粒乗せて。


 包んでコロコロと転がせば!



「その名も、いちご大福です!」


『ダイフク??』


「ものは試しとも言います。旦那様、どうぞ!」


「……いただこう」



 カイルキア様は、何の疑問も持たれなかったのか。


 私が手にしてるいちご大福をそのまま受け取り。


 皆さんがじっと見つめながら、大福を口に持っていき。


 はむっと口に入れると、少しお餅が伸びて、噛み切ってからもぐもぐ。



「……アンコと苺の酸味がよく合うな? モチは米の味しかしないが。アンコの甘さを和らげてくれている」


『(; ・`д・´)ゴクリンコ』


「美味い。この食べ方も好ましいな?」


「チーちゃん、あたしもちょうだい!」


『妾も!』


「はい。全員分作りますので、少し待っててください!」



 うまくいったので、ある分だけのお餅を全部いちご大福にして。


 皆さん、何個か食べられるので、そこかしこに笑顔に花が咲き。


 2回目をしようか、少し迷ったが。


 いちご大福で結構お腹がいっぱいになったので。


 紅茶で食休みを挟んでから、一旦中央に集まった。



「女性は食べきれそうにないが。男はまだ食したいか?」


『はい!』


「ふむ。俺もまだいけるが……チャロナ。モチは保存するのに結界が必要か?」


「それでも大丈夫ですが。コーンスターチで周りをコーティングさせて、食べやすい大きさで箱に入れておくのも大丈夫です。それを、焼いたりスープの中に入れたりも出来ます」


「チャロナの勧める食べ方は?」


「じゃあ。明日のおやつで、餡子繋がりですが。餡子のスープがあるんです。そこに焼いたお餅を入れると美味しいですよ」


『(; ・`д・´)ゴクリンコ』


「なら、それを頼もう。いいか、モチのいくつかは明日に回すぞ」


『はい!』



 と言う事で、続行した餅つき大会は。


 私もだけど、皆さんと協力し合って、たくさんのお餅を作れたので。


 このお屋敷に来て、初めてのイベント。


 とても、いい思い出になりました。



「……チャロナ、そのスープとやらはとても甘いのか?」


「えっと……そうですね、私は甘めに作ります」


「是非、大盛りにしてくれないか?」


「あ、はい」



 そして、庭師組で餅つきをされてたライオネルさんからは、善哉のリクエストを力強く言われたのでした。

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