78-1.リュシアでショッピング






 *・*・*








 クッキーの指導をしたお礼と言う事で、ミュファンさんとリンお兄ちゃん達が作ってくれたお昼ご飯をいただいた後は。


 帰るのも早いという事で、街に出てショッピングになりました。



「せっかく可愛い女の子が二人もいるんだし〜? あたしはチーちゃん。サイラはエピアのを選んで買ってあげたら?」


「お、いいじゃん!」


「わ、悪いよ!」


「お金……そんなに持ってきてないし」


「カイルからチーちゃんにって預かってるわよん? 結構な金額だから、サイラにもちょい分けてあげれるくらい」



 そう言えば、まだお給金いただいてなかった。


 使う機会がここふた月近く全くなかったから、特別気にすることもなかったけども。


 どうやら、今日の休暇のために悠花ゆうかさんに預けてたみたいだ。



「ま、マックスさん。いくらくらい?」


「んー、そうね。白金貨50枚くらい?」


「多!?」



 それざっと、日本じゃ50万くらいあるじゃないか!


 私が驚いていると、悠花さんに道の端に連れて来られてコソコソ話すことに。



「あんた。毎日あんなにも美味しいパンとか作ってるじゃないの。これでも安月給くらいよ。カイルももっと渡したかったみたいだけど、多過ぎると不審に思われるだろうから。あたしが持ってるって事でカモフラージュしてるわけ」


「な、なるほど」



 今日もカツラで変装はしてるけど、ただの小娘が持つには大金過ぎる。


 そこを、業界でも世間的にも有名過ぎる悠花さんが持ってれば納得されるってとこか。



「さあて。全身コーデで行くわよ。とりあえずは普段着からね!」


「お、お手柔らかに……」


「サイラ達〜、行くわよ〜」


「ほーい」


「は、はい!」



 とここで、いい加減ロティやレイ君も出てきていいだろうと言うことになり。


 私は着替えたりもするので、ロティの抱っこ権は彼女に骨抜き状態のレイ君が。


 エピアちゃん達にバレバレくらいにやけた顔がデロンデロンだった。



「なあなあ。レイって、ロティが好きなのか?」


「う、うん。ロティが知ってるかは聞いた事ないけど……」


「俺も、エピアの事じゃあんま言えねーけど。……にやけ過ぎだろ」


「あ、あはは……」



 男の子が呆れるくらい、レイ君のにやけ顔は呆れものか。



(あ、そう言えば。レイ君の場合って、魔力溜まりにいた頃と今現在の年齢って違うのかな?)



 ロティの場合も、私の中で眠ってた16年間を加えても、見た目と違って私よりもずっと年上だろうし。


 とりあえず、聞ける時に、悠花さんに相談に乗ってもらおう。


 レイ君、ロティの側にいなくなくもないけど、進展どころか普通に仕事してるだけだし。



「さあ、着いたわよ」



 考えながら歩いていたら、いつのまにか目的地に到着したようで。


 悠花さんが親指を立てたお店は、サラサと言う店名のコットン生地が主流っぽい、ディスプレイが可愛らしいところだった。


 ちなみに、ミュファンさん達の喫茶店の店名……ユーカリオンだった。絶対悠花さんがオーナーだから、もじってるはず。


 さておき、男の子とかでも入りやすそうな雰囲気だからか、後ろにいるサイラ君もほっとしていた。



「ここ、うちの店でも大人しめの連中には御用達なのよん。チーちゃんとかも、動きやすい服装ならこれくらいがいいでしょ?」


「うんうん。パステルカラーもあるし可愛い!」


「い、いいん……でしょうか?」


「エピア、俺の給金もあるし、遠慮すんな!」


「う、うん」


『俺もロティに髪飾りとかあったら、買ってあげるでやんすよ?』


『ふぉ。いいんでふか?』


『兄貴分に任せるでやんすよ!』



 あ、今は兄貴分でいいんだ……。


 いいのか悪いのかと言うと、前世でも恋愛についてはあんまり縁がなかったからねよくわからないけど。


 今は……今は、少なくとも好きな人がいる状態。



「チーちゃんは、清楚なのもいいけど。元気いっぱいのカラーがいいわね。今の髪色に合わせてもいい感じにしないと」


「……ゆ、マックスさん。目がガチだよ」


「女の子の服は、どんなのでも勝負服なのよ!」



 今は女の人じゃないけど、変身出来るから女の人にもなれるのに。


 だが、今日の買い物は私とエピアちゃんメインだから自分用は買わないつもりだろう。


 でも、普段着も勝負服って。



「ふ、普通でいいよ、普通で」


「ダメよ、チーちゃん! あんた自覚ないにしても、エピアに負けないくらい可愛いんだから。着せ替えごっこさせて!」


「そっちが本音!? あと、私普通だよ!」


「どこがよ!」


「お客様。お困りでしたら、店員からのおすすめでも……あら、マックス=ユーシェンシー様! いつもありがとうございます!」


「あら、ちょうどよかったわ。金に不自由はしてないから、こっちの子を全身コーデして欲しいのよ」


「まあ!」



 サーモンピンクの少し巻き髪をしている店員さんは、やっぱり悠花さんの事を知ってるようで。彼女?に深くお辞儀してから私の方に顔を向けてきた。


 すっごく可愛らしい店員さんなんだけど、なんだろう。


 私を見るなり、目をすっごくキラキラさせてきた!



「いい逸材でしょう?」


「ええ、ええ! 肌も健康そうなのにお白いですし、淡い茶髪もお綺麗ですね! 手足も長いですから、色々お試し出来そうです!」



 胸のことについては、やっぱり残念だから触れて来なかったのだろう。


 それでいいです。胸は本当に平均以下だから!



「ふぇ!」



 考え事をしてたら、店員さんに手を取られ、すぐさま近くにあった淡い黄色のフリルワンピースを当てられた。



「ええ、ええ。このように少しだけファンシーなものもお似合いですね。今のお召し物のワンピースには劣りますが、いかがでしょう?」


「ふ、普段着が欲しいので。フリルはちょっと……」


「あら。せっかくのお綺麗なお顔ですのに。もったいなですよ?」


「え、えー……」



 これは、コーディネートしまくる気満々だ。


 悠花さんに目配せしても、ニヤつかれただけだし。エピアちゃん達の方も、別の店員さんの攻撃?を受けて、コーディネートされていたのだった。



「ピンクにブルーもお似合いですよ! 試着室もありますので、どうぞお召しになってくださいな!」


「あー……」



 フリルは出来るだけ控えてくれたけど。


 一年分の買い物をしたんじゃないかってくらいに。


 店員さんのオススメと悠花さんのアドバイスで。


 白金貨を3枚、つまり3万円相当の買い物をして、悠花さんの魔法鞄マジックバックに収納しました。


 エピアちゃんの方も、悠花さんがお金を渡したので同じくらい。


 ロティは、レイ君の所持金で、濃いピンクがメインの華を模した髪飾りをプレゼントされてました。

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