69-2.シーフードカレーパンとゲソの唐揚げ
*・*・*
カイルキア様が来る少し前に。
私はリクエストになったシーフードカレーパンを作るべく厨房にいた。
「チャロナくん……本当に、あのカレーパンにこれらを使うのかい?」
「ええ、もちろん!」
エイマーさんが少し引き気味になるのも無理はない。
処理済み前のイカがうにょうにょしてるのは、私もこの世界に生まれてから初めて目にする。
けど、前世じゃお母さんが捌いてくれることがあったので、記憶が戻った今じゃ意外と平気。
シェトラスさんは、苦笑いされてたけれど。レイ君もウニョウニョが嫌なのか、ロティの側で縮こまってた。
「少し珍しいだけで、そんなにも難しく捌く必要はないじゃないか。チャロナちゃんの美味しいパンが食べたいだろう?」
「た……食べたい、ですけど……その、触手のような箇所は」
「ここも、焼いたり揚げたりすると美味しいんですよ?」
『「ええ!」』
「ゲソ料理、美味しいんですよ?」
「この箇所は触手ではなく、ゲソと言うのかい?」
「はい。吸盤を綺麗に掃除して、からですけど。味付けしたり、そのままでもフライなんかにするとお酒のアテにもいいですよ?」
「それは、エスメラルダ達に喜ばれるだろうね?」
「一応作って、おやつの時にお渡ししてみます」
まずは、イカをよく洗って胴体?と頭を分解。
イカリングになる上の部分の内側もよく洗って、皮を剥く。
先っぽとゲソを分解して、揚げ物用にバットに置いていき。
リングにするところはぶつ切り。
エビはエイマーさんとレイ君も大丈夫らしいので、殻剥きは全員で。
ホタテはヒモと貝柱を分けて。
これらをニンニク、生姜、醤油にカレー粉で下味をつけるんだけど、下味は控えめに。
カレーは前回のポークカレーのように仕込んで。
「まず、下味をつけた魚介類を鍋で軽く炒めます。次に、みじん切りに切った野菜を加えてー。水少しに白ワインを入れて。15分ほど煮込みます」
ここに、カレー粉と調味料、水溶きの米粉を加えて。
仕上げにカレー粉をまた少し加えたら、とろみがつくまで火にかける。だいたい、30分くらい。
「粗熱が取れたら、
完全に冷め切ってから、生地に包んで衣をつけて揚げる。
ここで、一番にカイルキア様がやって来られたので、対応してから慌てずに揚げて。
まずは、私達が味を見なきゃなので、一つを半分ことかにして配ってから、サクリと。
「「ん!?」」
『美味ちーでふぅう、ご主人様ぁ!』
『た、魂消たでやんすね……あんな見た目からこんなにも美味いもんが』
「うん、美味しい!」
【PTを付与します。
『サクッと熱々シーフードカレーパン』
・製造100個=1500PT
・食事1/2個=25PT
→合計1525PT獲得!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4258450PT
】
今日はおかわりも想定して、かなり作ったけど。
PTもまずまず、いい感じだ。
急いでカイルキア様のところに持っていけば。
「……あ……っつ、いが。美味い!」
そうおっしゃってくださり、用意していた三つをペロリと完食してくださって。
追加を聞くと、まだ三つも食べたいって言ってくださったので急いで戻って揚げてきて。
ロティに
『良かったでふぅ、ご主人様ぁ』
「うん、喜んでもらえて良かった」
冷めても悪くはないんだけど、熱々のシーフードカレーのパンも美味しい事を今朝思い出したから。
前世では、変わり種だけど肉以外でもカレーパンは世間じゃ色々あるからと、店長が言い出して。
色々調べてから、私のような若手にも加わらせて開発に取り組み。
見事、美味しいカレーパンが出来上がったわけで。
だから、今世でも作る事が出来たのだ。
(少し思い出すのは、切ないけど……もう帰れないから)
転生したと言うことは、あちらではもう死んでるから。
死因は、
そこは深く考えず、思い出のあるパンを作れた事でよしとしなきゃ。
ひとまず、エスメラルダさん達への差し入れを作ろう!
「この足……ゲソは綺麗に洗ってから水気を布で切って。この前、またいただいた醤油以外にも生姜とニンニクのすりおろしと一緒に合わせた調味料に……ゲソを絡ませて」
漬け置きの時間もないので、ここは30分短縮の
これに、小麦粉と米粉をブレンドさせたのを衣にして、よくまぶして丁寧に。
高温に熱した油の中に、ふた束程入れて揚げます!
「いっぺんに入れ過ぎると、衣が剥がれちゃう原因になるので注意してください」
揚がったら、網を乗せたバットに上げて。
包丁で少し切り分けてから紙に包んでいただきます。
「……これは触手じゃない。これは触手じゃない」
『でやんす……やんすぅ』
「こらこら、可食部なんだし味付けもしてもらったんだから」
「うう……いい匂いですけど、あの部分なんですよ?」
「じゃあ、私から」
パクっと、シェトラスさんは何も疑わずに口に入れてくださった。
サクッと軽い衣を噛んだ音が響き、もぐもぐ口が動くとシェトラスさんの顔色がぱあっと輝き出した。
「なんとも言えない、コリコリとした食感にショーユの濃いめの味付け。衣は軽いし、これはいける! 白ワインに合いそうだ!」
「ありがとうございます」
『美味ちーでふぅ、ご主人様ぁ!』
ロティも、カリカリしながら食べてくれてて、すぐに賞賛の声を上げてくれた。
この光景を見たからには、エイマーさん達も食べるしかない、とごくりと唾を飲み込んでから噛み付くと。
「う、美味い!」
『これ……たしかに面白い食感でやんすけど、味付けがいい! 酒に合いそう!』
「じゃ、私も」
居酒屋メニューでは定番だった、ゲソの唐揚げ。
はむっと口に入れれば、コリコリとした食感に加えてニンニクや生姜の風味に濃い醤油の味付けが加わって、懐かしさを覚えた。
【PTを付与します。
『カリッとコリコリゲソの唐揚げ』
・製造20個=240PT
・食事1/3個=10PT
→合計250PT獲得!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4258200PT
】
製造数も少ないし、余り食材で作ったからPTが少ないのはしょうがないかも。
けど、これをカイルキア様に持って行こうかどうしようか悩んだ。
味は抜群にいいんだけど、あの麗しいお方がゲソを食べるイメージが浮かばないし、この世界じゃ普通は食べないから。
「カイル様に、これお出しした方がいいでしょうか?」
「うーん。これはどちらかと言えば賄い食に入りそうだからね。いくら、冒険者時代に庶民の食を知っていらっしゃるとは言え……」
『あの旦那なら、辛いの以外平気でやんすよ。むしろ、マスターとかが自慢したら自分も食べたいとか言いそうでやんす』
「そ、そう?」
『
「悠花さん!?」
「ああ。その話は私も彼に聞いた事があるね? そうか、臓物と思えば私も大丈夫かもしれない。これは美味しいし……モグモグモグ」
モツの焼肉はわからなくもないけど。
なんで、
と言うか、解体もだけど、臭み消しとかどうやったんだろうかと少し気になったが。
レイ君に聞くと、水でよく洗ってからニンニクとかでなんとかしたんだって。
それなら……じゃなくて、焼肉。
「焼肉なら、ピタパンとかで焼肉バーガー的なのをやってみたいですね」
「「ピタパン??」」
『なんでやんすか?』
『袋のようにちゅめれるパンでふ!』
『「「ん??」」』
「えっと、焼いても中が空洞になる半月状のパンなんです。サンドイッチなんかに使われるんですが、お肉や野菜をたくさん食べれるんです」
フランスパンを作る前にも。
練習がてら、作ってみるのもいいかもしれない。
フランスパンには、イースト以外にあるものが必要だから。
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