【記念SS】出会う前から、あの王様は
*・*・*(アインズバック視点)
XXXX年
ああ、愛しのアクシアよ。
ついに……16年の年月をかけて、ついに見つけたんだ!
俺ではないが、あの無愛想に育ってしまったデュファンの息子カイルキアが。
『会いに行く!』
『なりませんぞ、陛下!』
『何故だ! 16年も会えずに行方不明になっていたんだぞ!』
『いきなりお会いになられても、姫様が貴方様の御子だとご存知でいらっしゃるかわかりませぬ!』
『っ、しかし!』
赤児の状態で行方知れずにしてしまったから、思い出がないに等しいのは無理はなくとも。
俺の……俺とアクシアの娘には変わらない。
王家の証である
父上と母上、何世代か前のじい様がそうだったように。
あの髪色は、王家の証を色濃く受け継いだ者にしか現れないのだ。
だが、それを知らないのであれば。すぐに会いに行っても証明が出来ぬとは言え。
『まだ、見つかってからはお目覚めになられていないご様子。もう少し……時間を置きましょう』
『……だが』
『ですが。執務をすぐに終えられずにため込んでしまうお父上として、お会いになられるのですかな?』
『Σ(;´Д`) わ、わかった……やろう』
ダメな父親として会いに行きたくはない!
XXXX年
ああ、愛しのアクシア。
結局は、政務が立て込んできたために、まだまだ俺達の娘には会いに行けない。
それを……それを、あのバカ息子が先に会いに行ってしまった!
『母上の若い頃の絵姿にそっくりだったんだぞ!』
『俺を差し置いて勝手に会いに行くな!』
『お兄ちゃんって呼んでもらえなかった!』
『阿呆か! 俺が先に父親と名乗り出るつもりなんだ! 勝手な事をするな!』
『(づ ̄ ³ ̄)づブーブー。いいじゃないか〜。俺だって16年間ずっと待ってたんだぞ!』
『殿下。陛下。失礼ですが、それでは子供の喧嘩と変わりありませんぞ?』
『『子供じゃない!』』
『……いきぴったりですな』
俺を……この俺を差し置いて、兄と言う事実を伏せつつも、マンシェリーに会いに行っただと?
しかも、お兄ちゃん呼びを断られた?
そこはざまあみろと思ったが。
俺も、『お父さん』とか呼ばれないのだろうか?
それに、前世の記憶を蘇らせた『転生者』であり、神からいただいた
あの子は、王家の中でも選ばれた子なのだろうか?
XXXX年
マンシェリーが事件に巻き込まれた?
今度こそは城から飛び出したかったが、謁見の間にて執り行う政務が立て込んでいたために、影らから報告を聞くことしか出来なかった。
どうやら、前々から投獄させたかったリブーシャ子爵のバカ当主を、あの子がマックスらと共に捕まえる手伝いをしたようだが。
それが、シュライゼンの提案でかつらをかぶっていても、アクシアと瓜二つの容姿、加えて凛とした佇まいになった途端に奴も怖気付いたらしい。
しかも、最後に高密度の魔力砲を放とうとした時には、シュライゼンが間一髪で止めに入って、代わりにあれがリブーシャ子爵(いや、元子爵か?)を捕縛したようだ。
それから夕刻前に、シュライゼンが謁見の間に現れてことの顛末を俺に報告し、俺ははらわたが煮えくりかえりそうだったが、王としての処罰をあのバカ子爵に下した。
そしてその後は、執務室でカイザークも呆れるほどの親子喧嘩になったわけだ。
が、そのカイザークがやっと提案してくれたのだ。
俺が……俺がようやく会いに行ってもいいのだと!
ああ、アクシア。まだ父とは明かせないが、ようやく娘に会えるんだ。
こんなに嬉しいことはない!
XXXX年
ああ、愛しいアクシアよ。
とうとう……とうとう愛しの娘に会えた!
本当に、君が成人した頃とそっくり過ぎて。
思わず、君が帰ってきたのかと錯覚しかけたよ。
だが、俺は今日父親もだが国王の身分も隠して、ただあの子に授賞の盾と証を渡してきただけだった。
しかし、目元をマスクで隠してただけなせいか。俺をシュライゼンの父だとは見抜いてしまったようだ。
何故かカイザークと話したいと言うあの子の願いを叶えてやり、わざと遠目から観察していた時にな。
それと、そのカイザークから君の最期と君が神から受けた神託などを聞いたよ。
俺達が間に合わずに、本当に申し訳ないと思ってずっと悔やんでいたが。
君は、マンシェリーとカイルキアを守れて誇らしかったのかい?
もう会えないとわかってても、俺はそんなような気がしたよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます