【記念SS】出会う前から、あの王様は








 *・*・*(アインズバック視点)










 XXXX年春夏しゅんかつき26日







 ああ、愛しのアクシアよ。


 ついに……16年の年月をかけて、ついに見つけたんだ!


 俺ではないが、あの無愛想に育ってしまったデュファンの息子カイルキアが。


 マンシェリー俺達の娘を、なんと任期を終えてから見つけ出したのだと!




『会いに行く!』


『なりませんぞ、陛下!』


『何故だ! 16年も会えずに行方不明になっていたんだぞ!』


『いきなりお会いになられても、姫様が貴方様の御子だとご存知でいらっしゃるかわかりませぬ!』


『っ、しかし!』




 赤児の状態で行方知れずにしてしまったから、思い出がないに等しいのは無理はなくとも。


 俺の……俺とアクシアの娘には変わらない。


 王家の証である彩緑クリスタルグリーンの髪と、アクシアに瓜二つの容姿は他人の子では、絶対あり得ない。


 父上と母上、何世代か前のじい様がそうだったように。


 あの髪色は、王家の証を色濃く受け継いだ者にしか現れないのだ。


 だが、それを知らないのであれば。すぐに会いに行っても証明が出来ぬとは言え。




『まだ、見つかってからはお目覚めになられていないご様子。もう少し……時間を置きましょう』


『……だが』


『ですが。執務をすぐに終えられずにため込んでしまうお父上として、お会いになられるのですかな?』


『Σ(;´Д`) わ、わかった……やろう』



 ダメな父親として会いに行きたくはない!








 XXXX年春夏しゅんかつき31日






 ああ、愛しのアクシア。


 結局は、政務が立て込んできたために、まだまだ俺達の娘には会いに行けない。


 それを……それを、あのバカ息子が先に会いに行ってしまった!



『母上の若い頃の絵姿にそっくりだったんだぞ!』


『俺を差し置いて勝手に会いに行くな!』


『お兄ちゃんって呼んでもらえなかった!』


『阿呆か! 俺が先に父親と名乗り出るつもりなんだ! 勝手な事をするな!』


『(づ ̄ ³ ̄)づブーブー。いいじゃないか〜。俺だって16年間ずっと待ってたんだぞ!』


『殿下。陛下。失礼ですが、それでは子供の喧嘩と変わりありませんぞ?』


『『子供じゃない!』』


『……いきぴったりですな』




 俺を……この俺を差し置いて、兄と言う事実を伏せつつも、マンシェリーに会いに行っただと?


 しかも、お兄ちゃん呼びを断られた?


 そこはざまあみろと思ったが。


 俺も、『お父さん』とか呼ばれないのだろうか?


 それに、前世の記憶を蘇らせた『転生者』であり、神からいただいた異能ギフト持ちであるとも。


 あの子は、王家の中でも選ばれた子なのだろうか?






 XXXX年夏歌なつかつき3日







 マンシェリーが事件に巻き込まれた?



 今度こそは城から飛び出したかったが、謁見の間にて執り行う政務が立て込んでいたために、影らから報告を聞くことしか出来なかった。


 どうやら、前々から投獄させたかったリブーシャ子爵のバカ当主を、あの子がマックスらと共に捕まえる手伝いをしたようだが。


 それが、シュライゼンの提案でかつらをかぶっていても、アクシアと瓜二つの容姿、加えて凛とした佇まいになった途端に奴も怖気付いたらしい。


 しかも、最後に高密度の魔力砲を放とうとした時には、シュライゼンが間一髪で止めに入って、代わりにあれがリブーシャ子爵(いや、元子爵か?)を捕縛したようだ。


 それから夕刻前に、シュライゼンが謁見の間に現れてことの顛末を俺に報告し、俺ははらわたが煮えくりかえりそうだったが、王としての処罰をあのバカ子爵に下した。


 そしてその後は、執務室でカイザークも呆れるほどの親子喧嘩になったわけだ。


 が、そのカイザークがやっと提案してくれたのだ。


 俺が……俺がようやく会いに行ってもいいのだと!


 ああ、アクシア。まだ父とは明かせないが、ようやく娘に会えるんだ。


 こんなに嬉しいことはない!






 XXXX年夏歌なつかつき8日







 ああ、愛しいアクシアよ。



 とうとう……とうとう愛しの娘に会えた!



 本当に、君が成人した頃とそっくり過ぎて。



 思わず、君が帰ってきたのかと錯覚しかけたよ。



 だが、俺は今日父親もだが国王の身分も隠して、ただあの子に授賞の盾と証を渡してきただけだった。



 しかし、目元をマスクで隠してただけなせいか。俺をシュライゼンの父だとは見抜いてしまったようだ。



 何故かカイザークと話したいと言うあの子の願いを叶えてやり、わざと遠目から観察していた時にな。



 それと、そのカイザークから君の最期と君が神から受けた神託などを聞いたよ。



 俺達が間に合わずに、本当に申し訳ないと思ってずっと悔やんでいたが。



 君は、マンシェリーとカイルキアを守れて誇らしかったのかい?



 もう会えないとわかってても、俺はそんなような気がしたよ。

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