56-3.彼女の考察?(マックス《悠花》視点)
*・*・*(マックス《
厨房に行った時は、二人も飛び上がらんばかりに喜んでくれたわ。
「「アイリーン様とレクターくんが!?」」
チーちゃんの口から知らせてあげると、本当に地面から飛び上がりそうなくらい驚いたわ。
これはもうお祝いね、と言う空気にはなったけども。
「……私は参加出来ないので、少し残念です」
何言ってんのかしら、この子は?
「なーに、言ってんのよ?」
「けど、私のパンが食べたいっておっしゃられても、あと二日しないと復帰出来ないし」
「何も今日すればいいってもんじゃないんだから。焦んなくていいわよ」
「そうだとも」
「うんうん」
『でふぅ』
『そうでやんすよ』
ほんと、日本人らしい生真面目さんだわ、チーちゃんったら。
「そ、そうなんだ……?」
ぽっかーん顔も定番中の定番で可愛いわね。
あたしが4歳児前後だった時までに残った記憶にある、王妃様との出会いにはこう言うようなのはなかったけども。
とりあえず、チーちゃんの小腹を満たすために、早めのお昼になったわ。
あたしも一緒だから同じメニュー。
今日はチーズオムレツ!
『あむあむ……むむむ、美味ちーでふぅ!』
「うん。美味しいね?」
レクターの診断のおかげもあるだろうけど、チーちゃんの風邪はほぼ完治ね。
明日はほぼ休暇だろうけど、何かいい暇つぶしはないかしら?
今日はカイルと話してたって言うし、いっそ庭園デートと称してぶつけた方がいいかしら?
あら嫌だ、カイルの見慣れない赤い顔が拝めそうよん!
『……マスター。なんか計画してる顔ですが』
「あら、バレた?」
「へ?」
『でふ?』
もうこうなったら、言うべきかしら〜と思ってたんだけど。
食堂に誰かが入ってきたからストップしたわ。
しかも、少し前にイチャイチャ?してたはずのカップル達が。
「ユーカお姉様、ここにいらっしゃいましたのね!」
「……リーン?」
今頃、てっきりカイルとかに報告に行ったと思ってたのに。
どうやら違うようね? それか、終わったのかしら?
すると、リーンはカウンターの方に向かって大声を出し始めた!
「エイマーお姉様、シェトラス! わたくし、やりましたわ!」
「お聞きしましたよ、アイリーン様!」
「本当にようございました」
「ええ!」
そう言うと、後ろの方からやってきたレクターに回収されて。
本当にあたしの方にやってくると、レクターがこそりと耳打ちしてきた。
「姫とカイルの事なんだ。食事中に悪いけど、僕の部屋の方に来てくれる?」
「…………わかったわ」
レイはロティちゃんの側にいたいだろうし、手早く食事を済ませてからレイとチーちゃんにちょっと話してくると伝えてから席を立った。
そんでもって、レクターの部屋に行ったんだけど。
「何よ、何? レクターはわかるけど、リーンまで姫の事についてって?」
「率直に聞きますわ、ユーカお姉様!」
挙手し出したのは、やっぱりリーン。
この話し合いの場を提案したのもやっぱりこの子かしら?
「何よ?」
「チャロナお姉様……いいえ、王女殿下を美しくお思いですか?」
「…………は、え、ええ?」
チーちゃんが王妃様と瓜二つだから、綺麗以上に可愛いとは思ってるわよ? エイマーとは別の意味で。
けど、それが何なに?
疑問に思ってると、レクターが語り出してきた。
「まだ憶測なんだけど。姫が自分の容姿に自信がないのが……例の神が関係してるかもしれないんだよ」
「……は?」
「殿下がご自身に取り柄がないとおっしゃっていましたでしょう? わたくし、あれに疑問を持ちましたの!」
「あ、あれ?……いいえ、待って」
もともとが大人しめの性格の持ち主だったとしても、ちょっとおかしいとも思わなかったわね。
あたしは性転換だったけど、チーちゃんはいわゆる超絶美少女。
なのに、その顔をコンプレックスに持ってたエピアとは違って、
いくら、前世の記憶を蘇らせて、より謙虚な性格に拍車がかかったとしても、あたしも気づかないでいたわ。
「僕もリーンが言うまでは気づかないでいたけど、例の神が
「母親より父親似でも、少しくらい似てるのにね……。迂闊だったわ」
「ですから、ご自分のお顔をご存知でありませんから。お兄様に対して愛も告げられないと思いますの」
「いやまあ。顔以外にも自信ないって色々言ってるけどねぇ?」
けど、本当に迂闊だったわ。
あのフィルドが何かしらチーちゃんにアドバイスしたって言うのは聞いていたのに。
そのあいつもしくは、ほかの神々がチーちゃんの容姿について何か細工をしてるだなんて。
チーちゃんが謙遜する態度が普通過ぎて、あたし達じゃ気づかなかったけれど。ある意味新メンバーのリーンだからこそ、気づいたのね。
「カイルお兄様も、殿下にお伝えするお覚悟は出来ていらっしゃいますわ。けれど、今のままでは、殿下はお断りなさる可能性が強いと」
「特に、身分差について。強固派とは別の意味で不安がってるようだしね」
「そこは、あたしも気づいてはいるけど。今は好きになれた事自体が、良かったわと思ってるくらいよ」
けど、やっぱり、転生者の自覚を持つ以前の生活のトラウマがまだまだ大きいようで。
自分から告げるのは以ての外と思ってるし。
カイルから告げられたとしても、リーンが言うように断る可能性が捨てきれない。
なら、どうやって安心感を持たせてあげればいいのか。
下手すると、あたし達以上に面倒だわ。
だって、あの子のこの世界での本来の身分をまだ告げてすらいないんだもの。
「では、殿下……お姉様はお兄様をお好きになる事自体否定なさっていましたの?」
「ええ。特に身分差と自覚してない取り柄の関係で。でも、例の神の後押しのお陰で、少しは払拭したらしいけど」
「それでも、まだ……か。これはもう、カイルと接する機会を増やしてもあんまり解決しないかなあ?」
「なんとも言えないのが、歯がゆいわよね……」
あたしは解放的なタイプでも、チーちゃんは料理の事以外だと割と控えめな態度が多い。
さっきの、リーンとレクターのお祝いについても、だったし。
あ、そうよそうよ。
「ねえ。あんた達の祝賀会みたいなのをこの屋敷でやろうと思うんだけど」
「え、ここで?」
「まあ、素敵ですわ!」
「そこで姫……チーちゃんが料理をふるってあげたいらしいんだけど。あたしとエイマーとかの時もそうだったんだけど……あんまりパーティーに直接参加出来てなかったのよ。そこを、どうするかなんだけど」
この前のようにだと、カイルと接触する機会はほとんどない。
今度はエイマーも作る側だから、そこは大丈夫だけど。
あとは、あたしとレイが補助に回るってことね。
「リーンが、わざとダンスに誘ってレッスンしてあげるって余興はどうかしら?」
「まあ! そして、いい感じになってきたらお兄様と……?」
「その流れの後で……抜け出しても、誰も行かないようにする事は絶対だね?」
「レクター様、ダメですの?」
「ダメでしょ」
うんうん。
それなら、カイルも少し時間を置いて考えられるし、今日明日に開催しなければ大丈夫ね!
とりあえず、日程を五日後にする事にして。
あたし達は全員でカイルの執務室に向かったわ。
「カイル、言うか言わないかはあんたの自由だけど。チーちゃんが自信を持てるくらいの助言はしろよな?」
「…………わかった」
さあ、焚き付けも完了したし、日程を今度はチーちゃんにも報告しなきゃ〜と思ったんだけど。
なんでか、執務室の中が白く光り出し、消えたそこには!
「やっほー! 今日もお見舞いにきたんだぞ!」
「……何故マンシェリーのところに直接じゃないんだ!」
「一応屋敷の主人はカイルなんだから、ダメなんだぞ?」
また面倒な連中がやって来てしまった。
チーちゃん、今日気が休まるかしら?
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