44-2.隠された真実①(シュライゼン視点)
*・*・*(シュライゼン視点)
おかしい。
爺やが、少しおかしいんだぞ。
この後は、父上達と合流してすぐに城へ帰るだけのはずだったのに。
話があるなんて、俺は一切聞いていないんだぞ?
「爺や、何があるんだい?」
廊下を歩きながら聞いても、爺やは苦笑いするだけだった。
「カイルキア様方との前でお話させてください」
「カイル……だけじゃなくて、全員?」
「少なくとも、使者団の他の者らには退席してもらいます」
「んん??」
父上は良くて、他の使者の前ではダメ。
と言うことは……十中八九
だとしたら、彼女もだが使者として連れてきた者達も同席は出来ない。
なら、俺も今は何も言うまいとカイルの執務室まで無言になった。
「ただいまなんだぞ! 魔法で小さくして爺やが持ってるから食べるのは帰ってからなんだぞ!」
そして、ノックもせずに戻ったまでは良かったんだが。
入った途端、聞き覚えのある歯ぎしりの音と父上のくっら〜い顔が目に入ってげんなりしそうになった。
「……カイル。これ、どーしたんだい?」
「…………大方の予想はつくだろう?」
従兄弟に聞いても、そんな返答があっただけ。
と言うことは、少し前に我が妹と爺やを尾けたのと同じ心境か。
「俺と爺やがマンシェリーの側に堂々といたから、嫉妬?」
「そうだ、悪いか!」
思った事を言えば、やっとバカ父上は返事をしてくれて。
使者団の者達は、見慣れてはいても国王の感情の浮き沈みのギャップが激しいからオロオロしてる者が多い。
唯一、俺の側近を務めてるギフラだけは平坦な態度を見せているが。
「父上は今日の態度じゃ、マンシェリーに緊張感を持たせてたんだから無理ないんだぞ。料理の腕だって、いまいちだし」
「く……最後は反論出来ん!」
「それより、爺やから話があるらしいんだぞ。ギフラ達には悪いが席を外しててほしい」
『はっ』
「客間の一つを使っていただきたい。ゼーレンを呼ぼう」
この屋敷の執事の中でも、長として優れている爺やよりも少し若い執事が到着すると。
ギフラ達は何も言わずに退室していった。
そして、完全に足音が聞こえなくなってからなんだが。
爺やが、いきなり床に膝をついて深く腰を折った。
それは、マックスに昔教わった、異世界の謝罪。
たしか……ドゲザ?
「申し訳ありません、陛下。殿下、皆様方!」
「え、ええええええ!?」
「……どう言う事だ、カイザー?」
「んだよ。びっくりすんぜ、爺様!」
「ちょっと、じー様顔上げてよ!」
俺もだが、ほとんどの者が驚きを隠さず。
一部は慌てたりもしてたが、俺も訳がわからないんだぞ!
なんで、話の内容がそんな恰好になってまで謝罪する話なんだ!
「…………私めは、皆様方にずっと嘘をついておりました」
フィーガスとマックスが言っても顔を上げずに、爺やはそう続けた。
これは一筋縄ではいかないんだな、と俺達も彼の抱えてたモノを聞くことにした。
「…………何をだ。カイザーク」
父上が再度質問すれば、爺やは少しだけ床から頭を離した。
「……………………姫様の事です」
『!?』
爺やがマンシェリーに関して俺達に隠し事を?
一体何について、と思ってもまだ頭の中は混乱してるからすぐには思いつかない。
が、誰かに腕を掴まれたので慌ててそっちを見れば。
少し焦った表情のマックスがいたのだ。
「マックス?」
「シュラ、この間シューから聞いたあれじゃ」
「シュー?……ああ、マンシェリーの幼馴染みだったあの?」
「あいつが何度か会った使者がじー様じゃ!」
「あ」
「あ? どーゆー事だよ?」
「何の事だ?」
そう言えば、シュィリンが抱えてた秘密をまだフィーガスにもだがカイルやレクターにも話してなかった。
そして、肝心の爺やについては、肯定の意を示しているかのように無言のまま。
バカ父上も、仮面を外してからドゲザのままの爺やのとこに近づいて片膝をついた。
「……内容次第では咎めになるかもしれないが、話してくれるか?」
「すべて……すべてお話致します、陛下」
「マックスらが言ってた使者と言うことは……裏でお前がマンシェリーのために何か動いてたのか?」
「!…………その通りでございます」
「爺や……」
じゃあ、爺やは。
カイルやレクター達を捜索隊として派遣するよりもずっと前から。
どうして、見つかって保護した今になってから言うんだい?
悲しい以上に、俺は訳がわからなくなってきたんだぞ!
「……爺様。本当かよ? 俺やカイルが必死こいて姫様をずっと探してたのを。あんたは、孫の俺とか他の奴らにまで隠してたのか?」
フィーガスも当然怒りをあらわにしてた。
家名が違うのは、彼が爺やの娘の一人の子だから。
たしかに、血縁者にまで隠し通すのもだが。
王命を受けてまで何年も探し続けてきた、彼や他の者を思うと怒り以上の感情が出て当然。
カイルの方も怒ってると思ったけど、何故かいつも以上に無表情過ぎて、感情もいつも以上に読み取りづらかった。
マックスもだが、レクターだって怒っているのに。
「……そこは済まないと思ってるよ、フィー。しかし、爺には約束があったんだ」
「約束?」
「誰とだ?」
最後に父上が聞くと、爺やは細く長い息を吐いてから口を開こうとしたら。
「…………アクシア伯母上か?」
『!?』
「! カイルキア様、ご存知で!」
「……今、思い出した。あの時に、
「どーゆー事よ、カイル」
マックスがいつものような口調になっても、カイルは淡々としたような表情で口を開いた。
「伯母上を失った直後。俺が抱えてた姫を、なんとか抱き上げてくれた人物。当時はショックのせいでうろ覚えだったが……今の言葉で確信した。カイザーク卿だと」
「……はい。あの時、間に合わずとも駆けつけたのは私一人めにございます」
「だが、貴方は伯母上が亡くなられた直後に俺の前に現れた。なのに、何故伯母上から約束事など……?」
「それは……」
「
「! 父上、それって!」
少し黙ってた父上は、王家だからこそ導ける解答を口にした。
俺も、その言葉を知ったのは成人以降だが。
久しぶりに聞くそれに、心底驚きを隠せない。
「王家に嫁いだ者も使用可能な、特殊固有
「…………はい。その通りでございます。正確には、幽体となられたアクシア様からでした」
「何故、お前が?」
たしかに、爺やは忠実な部下ではあるが。
母上が最期に伝えたい相手と言うと、せめて俺や父上のはずなのに。
父上の口調には嫉妬とかは感じられなかったが、不思議でたまらないのは同じだろう。
「……私にも何故自分の前に王妃様がやってこられたかはわかりませぬ。ただ、皆様を捜索していたあの時、突然現れたのです」
すべて話してくれる爺やの声は。
ちょっと前までのマンシェリーと接してた、楽しげなのとかは欠片もなかったのだ。
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