24-4.お互いを応援






 *・*・*








 自覚していなかった恋心を、よもや他人に誘導されて自覚するはめに!


 しかも、友達と相棒に!



「無理無理無理むーりむりぃい! 私なんかが、大貴族様を好きになるなんておこがましいからぁあ!」


『ダメにゃんでふ?』


「ダメではない、と思うけど……?」


「え……? えええええええ!?」



 ロティは理解してないからともかくとして、何故エピアちゃんが否定しない?


 何か、知ってるのだろうか?


 自覚したとわかった途端、その方法が気になって思わず彼女に近寄った!



「お、落ち着いて……? この国だけかもしれないんだけど」


「お、おおお、教えて? 孤児でも、お貴族様好きになっていいの?」


「う、うん。……多分、先代もだけど、もう少し前の国王様達が関係、してるかな?」



 彼女の話によると。



 先代の国王様だけでなく、何代か前の国王様のお妃様。つまり、王妃様達は、どちらも孤児出身だったそうだ。


 先代もだが、何代か前の国王様の側近方は、当然猛反対。


 なら、王家の証である子を産めるかどうかで審議が問われ。


 ひとまず、仮のご夫婦になられてからのちに、見事王家の証である特殊な髪色の御子が誕生となった。



「だから、王家で既に孤児の女性が認められてるのなら……旦那様も、多分大丈夫だと……思う」


「こ、こここ、子供?」



 直球的過ぎやしないだろうか、過去の王様達。


 運が良いにしたって、子供の髪色で判断するってほぼ確定なんじゃ??




『でっふ、大丈夫でっふ!』


「なんでロティが断定しようとするの?」


『ロティだからでっふ!』


「いやいやいや」



 いくら、AIな契約精霊だからって、まだまだ赤ちゃんなんだから……とも言えないか?


 私が理解出来てない、『幸福の錬金術ハッピークッキング』についてはずっと知ってるし?



「けど。身分差については、王家がそんな感じだから……強固派以外はわりと緩い……かも? 私の村でも、旦那様の家格程じゃないけど……お貴族に見初められた女性はいたし」


「うわぁ…………強固派??」


「うん。身分徹底主義、とも言う?」


「oh......(´・ω・`)」




 それ絶対反対派じゃないかーい!


 表には出さないけど、前世のお母さんがよくテレビに向かってやってたようなツッコミが浮んだ。


 けど、割と寛容的であるのはよくわかった。


 だから、悠花ゆうかさんは気にしないとか気安く言っていたんだ?




「でも…………やっぱり、振られるよ」



 体型もある意味平凡以下。


 顔も多分平凡。


 特技は、認められたパン作りくらい。


 これ、絶対家政婦設定でしかない。




「そう? 旦那様が微笑まれるのって、チャロナちゃんの前だけだと思うけど?」


『にゅ〜。ちゃまーに、笑顔になるの。ロティも、ご主人様と一緒の時しか見てにゃいでふぅう』


「いやいやいや、まさかそんな?」


「私、この前チャロナちゃんのお出迎えした時しか見てない」


「え、ええ……?」



 最近、ちょっとずつ表情筋が動くなぁ……とは思ってたけど。


 それが私の前だけって、自惚れてもいいの?



(いやいやいや! 王道のテンプレな展開にしたって…………胃袋を掴んじゃったから?)



 認められた、特技のパン作りでがっつりと。


 もうこれは、憶測でもいいから悠花さんに確認しに行こう。


 今どこにいるかわからないけども!



「え、エピアちゃん! 怖いけど、応援してくれる??」


「うん、もちろん。私の方も応援してくれるから」



 挙動不審で聞いたのに、微笑んだエピアちゃんは天使様だった!



「すぐじゃなくても、お互い言えるように頑張ろうね!!」


「う、うん。…………私、の方は気持ち知ってる分。申し訳無いけど」



 励ましで言ったつもりが、逆に落ち込ませてしまった!



「ご、ごごご、ごめん! 追い打ちかけるつもりじゃなかったんだけど!」


「う、ううん。ただ……ここしばらく、サイラ君と話してなくて」


「え、なんで?」



 パジャマパーティーの時に聞いた限りじゃ、猛烈アピールしまくるぞ!って感じだったのに。



「わからない……。昨日の、朝の挨拶も、笑ってくれなかった」


「えぇ?」



 ヒントが少な過ぎて、浮かんでくる考えも限られてはくるけど。


 一番の変化、であるなら思いつくのは一つ。



「エピアちゃん、前髪さっぱりして顔出したからじゃない?」


「え、ダメ……だった?」


「ううん。ダメじゃないけど……皆に知られちゃったでしょ? この前の時に話してくれた中に、サイラくん自分だけの秘密にしてたみたいな感じだったから」


「そ、そう言ってた……けど?」


「ええ、っとね……」



 もうここは、直球的に言うしかない。


 遠回しに言うのは、かえってエピアちゃんの傷を深くするかもしれないから!



「ちゃんと言うけど。……あんまり、泣かないでね?」


「う、うん?」


「多分、サイラ君すねてるかもしれないなぁって。自分だけが知ってた事を、エピアちゃんが自分で広めちゃったでしょ? もしかしたら、自分以外にもエピアちゃんを好きになる人が出てくるかもしれないから」


「そ…………そう、なの……かな?」


「私が男だったら、絶対好きになってた!」


「あ……あり、がと……?」



 一気にまくし立てたからか、エピアちゃんは泣くこともなく、ちょっとぽかんとしてただけで済んだ。


 そうして、少し考えてから……何故か、クローゼットに向かっていく。



「エピアちゃん?」


『おねーしゃん?』


「この前借りたままのワンピース、まだここにあるの。少し、手伝って? 綺麗にしてから、サイラ君のとこに行ってくる!」


「手伝う!」


『でっふぅ!』



 恋の応援ならば喜んでしますとも!


 私の方は長期戦になるだろうし、悠花さんの方はまだ少し猶予はある。


 と言っても、何かしら動いてはいるかもしれないが。

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