第78話 暖かいと眠くなるよね
それなりに騒ぎになっていたけど竜騒動もすぐに片付きました。
一応町の人達の様子を見てみると…「あっもう倒した~?」とのお返事在り。
…どうやら町の人達もボクが解決するからただのイベント感覚になってきているらしい。
普通に竜が襲い掛かってきたら結構大事のはずなんだけどな。
まぁ実際こっちで片してしまったので仕方ない。
しかしいろいろ不可解なことが多かったので我が家の家族+新人1人を加えて家族会議を始めた。
…なお新人は人型になっても眠そうなのでソファでだらーんと横になっている。
名前はイルシール・コキュートス。
瞳は眠そうなので見えないので省略。
髪は蒼銀でくせっ気のあるショートヘア。
エミリアと同じ髪色に聞こえるかもしれないがこっちは銀色の方が強いので少し青っぽく見える銀色といった感じ。
氷竜にふさわしく氷のような髪色だと思う。
スレンダーで身長は普通…に感じる。
まだ起き上がっているところを見たことないからちょっと分からない。
ソファにあるクッションを抱きしめて幸せそうにしているので一端このまま放置しておこうかな。
「それで主よ、さっきの馬鹿げた魔術は何だったのじゃ?」
「そうだな、何かとんでもない範囲を対象にしていた気がするんだが?」
突然の無力化に巻き込まれた2匹の竜の苦情。
今回に関してはボクが全面的に悪いので説明させていただきます。
「ごめんごめん、さっき魔術使って分かったんだけど…どうやらボクの魔力が少し変化しているみたいで…」
「具体的にはどうなっているんですか?」
「えーと以前のボクの魔術の行使が『1の魔力で1の魔術』だったとしたら、今のボクは『1の魔力で300の魔術』…みたい?」
「ファッ!?」
「…しかもどうやら魔力総量も大分増えたみたいで…」
「以前の主でも化け物じみとったと言うのに…」
「なるほど、それでさっきの暴発か」
「うん。30くらいで使おうとしたら9000くらいの範囲に膨れ上がっちゃって…」
「数字が頭悪いな」
「…ということは主よ。今攻撃魔術を使用したら…」
「………間違っても使わないから口にしないで」
「わかった。他は大丈夫なのじゃ?」
「身体能力強化も下手したら危ないかも」
「握手しようとして相手をミンチにしそうじゃの」
「ジャンプしようとして大陸を割りそう」
そうだけど…そうだけどもうすこし気を使ってほしい…。
言い返したいけど本当にやってしまいそうで怖いので今後ボクはなるべく防御魔術くらいしか使わない方針になった。
防御ならいくら固くなっても支障はないからね。
これから何かあったときにアルやアジダハに頼ることになりそうで辛い。
さて、これでボクの方は片付いたので次はこっちから質問をする番だ。
「それで?イルシールだけど…どうして何もしてこなかったんだ?なんだかアジダハは呆れた様子だったけど…」
「ふぅ~…まぁの~」
何やら言いづらそうなアジダハは視線をゼニスに送ると、そのゼニスも呆れた様子でため息を吐く。
そしてもう一度大きなため息を吐いた後、アジダハは説明を始めた。
「まずはあまり竜族について詳しくなさそうじゃからそこからじゃの。主よ、竜族にはどんな種類があるか知っておるか?」
「えっとよく聞くのは…」
「炎竜!」
「風竜なのです!」
「地竜とかかな?」
「うむ、まぁ…だいたい子供たちの挙げた者たちが有名じゃの。では氷竜がどんな竜か分かるか?」
「氷の竜なんじゃないのか?」
「間違いではないがの。氷竜は広域の天候操作などを行い吹雪などを起こし、その範囲内では無敵を誇る竜じゃ」
「ボクでも勝てない?」
「主はノーカウント」
「ボクの扱い…」
「話を戻すのじゃが、強力な能力を持つ代わりにデメリットも存在しているのじゃ」
「デメリット?」
聞き返すボクにゼニスが返事を返してきた。
「氷竜は温度差に弱い。よって気温が上昇すると弱体化する。分かり易く言うなら冬にクマが冬眠するような感じで氷竜は冬以外では春眠する」
「…あーなるほど。だからイルシールは眠そうなんだ」
「本来なら春真っ盛りなぞがっつり眠っている時期じゃからの。動けても秋の終わりくらいであろう」
「…なるほどそれで…うん?でもそれっておかしくないか?」
「どうしてですかティオさん?」
今の話を聞いて違和感を感じなかったアルにボクは気が付いた内容を話す。
「だってここにきている竜はアジダハを倒すために派遣されてるみたいだけど…わざわざ弱体化していて動けない氷竜を何で送ってくるんだ?」
「あっ確かに」
疑問尽きない現状に思わずボクとアルの視線が竜2匹に視線を送ると何やらすごく機嫌の悪そうな顔をしている。
…聞いちゃいけない内容だったかな?
しばらく話したくなさそうだったけど重い口を開いてようやくアジダハが話始めた。
「だから呆れておるのだ我らは。眠っとる氷竜を叩き起こしてなんの意味がある」
「確かにイルシールなら実力は上位ではあるがな。戦えるわけもないんだ、こんな暖かい時期に」
「そう言えばイルシール浮いたまま何もしてなかったもんね」
「浮いたまま寝ておったからの。当然じゃ」
「おそらく長老衆の仕業だろうが…これくらい考えれば子供でも分かりそうなものを…」
何やらイラついているアジダハとゼニスが長老衆とやらの悪口を言っている。
後で聞いてみたが竜族の王様の代わりの様な人たちとのこと。
その人たちに命令されたら逆らうことは地位や名誉の大事な竜族ではありえないらしい。
何とも可哀そうな話だ。
とりあえず会議を終えてソファでぐったりしているイルシールにボクは近寄る。
「起きてるイルシール?」
「…ん~(コクコク)」
口は開かないがどうやら起きているらしい反応が返ってきたので話を続ける。
「部屋を一室あげるから冬まではそこでゆっくり休んでていいよ。冷房設備は後で準備しておくからゆっくり休んでね」
「うえ~ん…ありがとー…あるじぃ~」
我が家の家族が微笑ましそうにこっちを見ている中、泣きながらボクに抱き着いているイルシールの頭を優しく撫でるのでした。
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