第76話 配慮のしどころを注意せよ
まだいろいろ整理が終わってないが一端ボクはベッドに戻っている。
身体が鈍っているのか、それともこの身体の変化によって齎された不調なのかははっきりしないが随分と心配をかけていたようなので無理をしないようにしないと。
服を纏っていないので柔らかい布団が纏っていた温度が下がりひんやりとした感覚が張り付く。
そう言えばと一つ思い出した内容を周りのみんなに聞いた。
「そう言えばなんでボク裸?」
「私達で脱がしたの」
「エミリアたちが?」
「うん」
「何やら急に成長し始めたからのぅ。あのままじゃ起きた時に…いや下手をすれば寝ているときに胸に肺を圧迫されて窒息するやもとな」
「なるほど…」
言われて大きくなってしまった胸を見る。
…大きい。
もしかしたら顔よりも胸の方が大きいのでは?
ただ一つ言える確かなことは…おそらくこれは母の遺伝だろう…。
自身の大きな胸を掴みながらそんなことを考えていると、布団が風に揺らされて僕の肌に擦れた。
「…ひゃっ!」
突然だったとはいえ肌に布が擦れただけなのに思わず体が少し跳ねた。
「?…???」
何が起こったのか分からず首を傾げていると何やらこちらの様子をじーっと見つめていたアジダハがおもむろに近寄りボクの背中を指でなぞった。
「んっひゃぁっ!?」
くすぐったいような電機の走るような感覚とともにボクは奇声を上げた。
なにこれ?
困惑するボクの目の前でアジダハ納得のいったように頷いた。
「…なるほどの。どうやら主の身体は以前よりも敏感になったようじゃな」
「えぇ~…」
「感度300倍じゃっ!」
「言い方やめて」
子供たちに悪い影響が出ないようにアジダハの言葉を遮っていたそのとき、寝室の扉が開かれた。
そこには両手で服を抱えて入室してきたルクスがいた。
何やら興奮した様子である。
「新しい服できたわよ!」
「早くない?」
「だってその胸じゃあもう以前の服は着られないでしょう?」
「…まぁ確かに…それで前もって準備を…」
「眠っていて抵抗できないうちに全身舐め回したわっ!」
「ひぇっ…」
思わず自身の身体を抱きしめる。
…寝ている間に何か可笑しなことはされてないだろうか…。
と、ボクが心配しているとアルがボクの肩を叩いた。
「安心してください。何かする前に部屋から追い出して往復ビンタしておいたので」
「ありがとうアル」
どうやらボクの貞操は守られていたらしい。
涙を流しながらボクがアルと握手していると、近寄ってきたルクスが新しい服をずいずいとこちらに差し出す。
「ほらせっかくの新しい服なんだから早く着てよ」
「わかったから…」
「作者としてここで拝見させていただこう!」
後方で腕組みをして不動の構えのルクス。
意地でもボクの着替えを覗く…いや、直視する気らしい…が。
「ふぬ!」
鮮やかな動きでアジダハがルクスの顎にフックをくらわせ即失神。
ポケットから出した笛で「ピーッ!」という音を奏でると子供たちが倒れたルクスを引き摺って搬送していく。
…なんかルクスの処理に慣れてるけど…ひょっとしてボクが寝ている間に何回かこんなことがあったのでは?
そんなことを考えながらボクは新しい服に袖を通していくのだった。
◆●◆●◆●◆●◆
…で、新しい服に着替えた。
スカートが短いのは相変わらずだけど一応このスカートには慣れたので大して問題はない…問題ない…問題ないのかな?
まぁそれよりも気になることがある。
以前の服は胸元を強調しており肌の露出が激しかったが今回の服は胸元や袖に余裕が持たせてある。
…つまり露出が少ないのだ。
疑わしい目でルクスを見る。
「…雨に濡れると服が溶けたりしないよね?」
「どういう疑い方よそれ…?」
「いや…ルクスの服にしては露出が少ないから」
「私が水着しか作ってないみたいな言い方やめてよ!」
「いや日頃の行いじゃろ」
珍しく腹を立てた様子のルクス。
しかし怒りを鼻息として処理したルクスが服についての解説を始めた。
「以前の服は少しカッコいくてエロスな魔女…的な感じのテーマだったの。でもほら…今のティオの姿は…童顔、小柄、ふわふわヘアー、巨乳!…だ・か・ら!」
語気を強めながらボクの身体を指さしていく。
「手が指先以外隠れる長袖の萌え感!体より少し大きくて引き摺ってしまう大人びた幾何学模様の上着!小柄年上の合法ロリという存在感!そして何よりぃ~…」
いきなり近寄ってきたルクスが服の前の端を思いっきり下側に引っ張った。
すこし緩めの服が強引に引っ張られて大きくなった胸に引っ付き胸の形を露わにしていく。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」
「この綺麗なロリのドリームオッパイ!露出シャツよりも緩めシャツ!その服の下に形が浮き出た方がエロイ!エロイ!エロイィィィィィィ!」
「ふんっ!」
「おごぅっ?」
発狂しながらボクの服を引っ張り続けていたルクスの首をアジダハが90度回した。
奇声と共にルクス撃沈。
あまりの興奮っぷりに、もはやボクにはアイツが何を言っているのかいまいちわからなかった。
結局この服が似合っているのか分からなかったので代わりにアルに感想を聞いてみることにするとしよう。
「これどうかなアル…アル?」
「……………」
何やらこっちを見たまま固まっているアル。
リアクションが帰ってこない。
仕方ないので彼女の目の前でぴょんぴょんしつつ再度声をかけることにしたボクなのだった。
「おーいアル~っ?」
「……へっ?あ…えっと…」
ようやくこちらに気が付いたアルが慌ててあたふた、おたおた。
そして急いで彼女はボクの言葉の返事を返してきた。
「…は、はいっ!すごくえっちですっ!!!」
アルの声はとても大きな声で「えっちです!…えっちです!…えっちです!」と室内で反響するほどだ。
どうやら咄嗟の返事で考えていたことを直接話してしまったご様子。
その場にいた面々の動きが一斉に止まる。
代わりに返事で何かを零してしまったアルがだんだんと顔を朱くしていった。
……この後半日程、真っ赤に染まった顔を両手で覆ったアルが部屋の隅で座り込み、その横では「ワカル」と呟きながらアルの肩を叩いているルクスの姿があった。
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