第73話 緑のしゃもじお化けなのです!
他2人がそれぞれの試練の神と出会っていたその頃。
当然ながらもう一人試練の門へと入っていったコンが、同じように霊薬を管理している神と邂逅していた…していたのだが…。
『だから~俺はいちおう神なんだってば…』
「…?コンの髪の毛なのです?」
『いや髪じゃなくて神!NOヘアー!YESゴッド!』
…出会いこそしていたものの事態は混迷を極めていた。
ちなみにここは荒野のような場所であり広い荒野の中心で神の声が悲しく木霊している。
「…むむむ!よく分からないのです。とりあえず先を急ぐのです」
『わぁー!待って!何もなかったように動き出さないで!』
焦った声とともに地面から古びてひび割れ、苔が生えて緑色に飾った両刃剣が躍り出る。
「…ボロボロの古いしゃもじなのです!」
『違わい!これなるは我が神器「アメノムラクモノツルギ」なるぞ』
「こ~ん?」
古びたしゃもじ…ではなく神の神器を拾うコン。
神の納まっている神器にコンが触れたことで神はコンの頭の中を垣間見た。
穏やかな農村。
雨が降る農村。
そしてそこに剣を持った蜘蛛が「おー!」と空へと剣を掲げている。
「…なるほど!完全に理解したのです!」
『まるで理解できていない!?雨の降る農村と蜘蛛の剣だそれー!』
こんなやり取りをかれこれ10分。
しかしこの空間の何かがいい加減しびれを切らしたのか離れたところから聞こえてくる獣の足音をコンの優れた狐耳が聞き取った。
「…!敵がいっぱい来るのです!しゃもじのお化けおじさん!また今度なのです!」
『…待って!まだ何も終わってないの!自己紹介すらまともに!…ええーい!もう試練とかいいから薬のところに案内しよう』
「しゃもじおじさん、薬の場所わかるのです?」
『しゃもじおじさんやめーや。怪我しないように力も貸してやろう!それ!』
シュパ―と放たれた光の飲まれた後、大きく成長した姿のコンが現れる。
翡翠の巫女服に身を包み成長したことで大きな尻尾が9本へと増え、小柄だった身長もティオよりも少し高いくらいの身長まで伸びていた。
「…こんこ~ん!おっきくなったのです!尻尾も増えたのです!これがしゃもじパワー!」
『しゃもじパワーって何!?』
「…むむっ!」
『どうした?何か不備でもあったか?』
突然動きを止めたコンにしゃもじおじさんが問いかける。
するとコンは大きくなった胸を両手で鷲掴みにしてあげたり下げたりしていた。
「…胸が大きくて邪魔なのです」
『ふ~む?普通
「おっきすぎてぶるんぶるんするのです!すっごく邪魔なのです!」
『さらしを巻くかブラジャー着けるかだな。俺は専門外だ。身内に胸の大きな女性はおらんのか?』
しゃもじの言葉を聞いて考え込むコン。
すると急に尻尾と耳が元気になり顔をあげた。
「やっぱりいいのです!これはこれでいいのです!」
『どうした急に?』
「母上も同じくらいだからお揃いなのです!」
『なるほど。では準備も整ったしあちらの畜生どもを倒して薬を手に入れに行こう。俺の声に合わせて祝詞をとなえるのだ』
「海苔?」
『…あー同じように言葉を繰り返せばいいのだ』
「こん!了解なのです!」
魔物たちが向かってくる方向へと走り出すコン。
幼い体でも優れていた身体能力は成長したことで大きく強化されており、凄まじいスピードで移動する。
そして魔物たちとの距離が近づいたそのとき、しゃもじおじさんの祝詞の復唱を始めた。
「我祓うは厄災の芽。地に生える草の如きその悪情。大地の神剣を以て薙ぎ祓う 『
大きく跳んだコンが思い切り地面を踏みしめる。
その瞬間、土や岩が変化して巨大な剣の形を作り出す。
数十本にもなる剣を自身の周りに振り回したコンがその剣と共に魔物目掛けて突進し、恐ろしいほどの衝撃と共に宙を舞っていた神の剣が放たれる。
「グレートしゃもじストライク!なのです!」
『台無しだよっ!』
馬鹿げた膂力で放たれた巨大な土の剣に憐れ魔物は爆裂四散しながら消し飛んでいく。
地面もボコボコ。
天変地異もいいところである。
地面を踏むごとに剣を産み出し、それを魔物へと放って移動するコンはそのままぴょんぴょんと跳ねながら目的の薬がある場所を目指すのだった。
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