第57話 意外と難しい
これこそ、貨物船らしい仕事だ。
ファルカジアで掘削機材の部品を満載した船は、目的地であるオードレスに向かって宇宙に飛び出した。
ここは、危ない連中が喉から手が出るほど欲しがる、最強の爆薬の輸送路でもあった。
危険物輸送船は安全性重視で足も遅いので狙われやすく、この界隈は武装した小型船がパトロールしていた。
「サム、うっかりパトロールに誤射されないようにな」
『やっと認識コードが変えられたから、ちゃんとやってるぜ!!』
俺はレーダー画面を確認し、予定通りの航路を進んでいる事を確認した。
「まあ、ピクニックみたいなものだな。後ろに積んだ弁当が重いが」
「どこがピクニックだ。最大積載量ギリギリで余裕がない。バランス取りが……」
俺に影響されたらしく、エリーナが必死こいて船のバラストシステムを動かしてバランスを保っていた。
「そんなのではだめだ。感じるままに操作だぞ。考えてやっていては、あっという間にひっくり返るぞ。ここは宇宙だから、逆さまになって航行するイカれた貨物船になるだけだが」
『俺そういうの好きだぜ。いいねぇ!!』
エリーナが俺を睨んだ。
「ニャンコに負けるわけには!!」
「キャリアというヤツだな。まあ、色々試すがいい」
エリーナが歯を食いしばった。
「ど根性!!」
フラッと船が動き、いきなりひっくり返った。
「うむ、本当に上下逆さまになったな。根性というのはこういう時に使う。立て直してみろ!!」
「うがぁ!!」
船が横回転して、また上下逆さまになった。
「いいぞ、その調子だ。なかなか、経験ができん」
「む、ムカつく!!」
結局、船を十二回転させて、エリーナはギブアップした。
「ほら、簡単だろ?」
再びまともな航行に戻った船は、オードレスに向かって航行していた。
オードレスはファルカジアの隣の星だ。
ファルカジアはさながら補給基地という感じだった。
「……船を動かすのは、自信あったんだけどな」
エリーナがため息を吐いた。
「最大積載量の貨物を積んだ船など初めてだろう。ただ、航行しているわけではないのだよ」
俺は笑みを浮かべた。
『ちなみにこれ、普通の貨物船ならオートだからな。コイツが、なんでも自分でやりたがるから、俺の仕事がねぇよ!!』
「これをオートでやったらなんの楽しみがある。つまらん」
俺は笑った。
高速航行を続ける船の全面スクリーンには、遠景でオードレスがみえてきた。
「普通のトロい船なら一週間は掛かるところだ。これが、遅い船が嫌いな理由だ。飽きる!!」
「……あっそ」
エリーナがため息を吐いた。
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