第48話 港に帰ろう
吹雪は止まず、ホテルでダラダラ過ごすのも飽きたので、俺たちは船に戻る事にした。
「うむ、暴れたリゾートだったな」
「リゾートって感じじゃんかったけどね……」
なにか不満そうなエリーナが運転する大活躍の雪上戦車は、積雪で一般車など到底走れない有様の幹線道路を、快調に走っていた。
途中で明らかに軍としか思えない連中が、検問を張っていた。
「どう考えても、この車両が目当てだな」
「暴れたからねぇ。もう一暴れするか!!」
車内のどこかにある、攻撃照準レーザー警報がなった。
「ほら、やっぱりそうだ」
「ほう、先制攻撃してくるか……」
エリーナが笑みを浮かべた。
前方でオレンジ色の炎が無数に発生した。
「うむ、なんだあれは?」
「対戦車ミサイルだね。ついてこれるか!!」
凄まじい勢いで車体が曲がり、幹線道路から外れた雪原に突っ込んだ。
「おらおら!!」
なにかとんでもない動きで雪原を走り回り、そこら中で爆発が起きた。
「お返しだ!!」
ロックオンを告げる電子音が響き、白い煙をたなびく無数の何かが発射された。
「うむ、対戦車ミサイルまで装備していたか」
「レーザーだけじゃ子供のオモチャでしょ!!」
エリーナが笑みを浮かべた。
「なんでもいいが、それは取っておくべきだったな。いよいよ本気で潰しにきたぞ。センサーが捉えている数は十六。ガチの主力戦車だ」
エリーナが検問を吹っ飛ばすと、見るのもデカい主力戦車がゾロゾロ現れた。
「ちょ、どこに隠れてたの!?」
「うむ、迷彩というやつだな」
エリーナは口の端を上げた。
「これは使わないつもりだったけど、持ってて良かったポジトロン・キャノン!!」
「陽電子レーザーだと。どこに、そんな大容量電源がある?」
とにかくひたすら逃げながら、なにやらたくさん付いていたらしい屋根の上の、もう砲塔といってしまうが、それが背後から迫る戦車軍団に向いた」
「照準ロック、ポジトロン・キャノン発射!!」
凄まじい光が辺りを包み、恐らく最強クラスのレーザー砲が発射された。
「うむ、いつみても荷電粒子の光は綺麗だ。ちなみにそれ、戦闘艦にも大体付いてるぞ。もっと、出力はデカいが……」
「おらぁ、片っ端から消滅させてやる!!」
さすがにビビったようで、速度が落ちた戦車軍団をエリーナは片っ端から消滅させていった。
しかし、さすがにやられるだけではなかった。
走りながら撃つ行進間射撃で、実弾をバカスカ撃ち込んできた。
「うむ、実体弾を使うとはな。なかなかシブくていい」
「推定百四十ミリだね。食らったら、一撃で粉砕されるよ。こっち、装甲ないから!!」
負けずに撃ち返しながら、エリーナが叫んだ。
「当たったらおしまい。俺の船みたいだな」
「そういうのが好きなわけじゃないけど、そういうのばっかだよ!!」
とにかく、港に着くまでになんとか片付けねばならなかった。
「ああ、キリがない。どんどん出てくる。仕方ない、この近くには確か……」
エリーナが素早く携帯端末を操作した。
「いつもアルガディアの第百四十五艦隊が、この辺りをウロウロしてるからね。ちっとばかり、イタズラしてやったぞ!!」
エリーナが笑みを浮かべた。
「避けろ、避けろ!!」
「うむ、これは楽しい」
レーザー照準でロックされまくり、ひたすら撃たれまくりながら、反撃を止めた雪上戦車は雪原を爆走していた。
「そろそろ、スペシャルプレゼントがくるよ。はい、ドーン!!」
地上で使うにはあり得ないほどの、巨大なミサイルが戦車軍団の真ん中に突き刺さり、大爆発を起こして辺り一面メチャメチャにした。
「うむ、防御魔法か。なにをしたのだ?」
「うん、艦隊の暇してる駆逐艦に、なんのために積んでるか分からない役立たずの魚雷をブチ込ませただけだよ。無断で!!」
見渡す限りグチャグチャだったが、俺たちの得体の知れない車は無事だった。
「魚雷か……あれ、当たらないからな」
「うん、なんか昔の名残で積んでるらしいよ!!」
結局、宇宙にいる駆逐艦から魚雷を叩き込むというど派手な作戦により、追跡部隊どころか辺りが壊滅した。
「しかし、どうやったのだ。星の地上攻撃をしようとすれば、エラーになるはずだが……」
「ちょろっと騙してね。古いだけに、大気圏突入も問題ないのが魚雷だったんだな!!」
俺は笑みを浮かべた。
「やれやれ、派手な事をするな。よし、今のうちに港にいこう」
「あいよ!!」
また面倒なのが出ると嫌なので、俺たちはとっとと港に向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます