第41話 到着
遊びにきた氷の星ファルファ。
エリーナのチョイスだったが、実は悪天候が多くなかなか降下出来ない事で有名だった。
ご他言に漏れず俺たちも悪天候にハマり、周回軌道でボンヤリしながら天候回復待ちをしていた。
「俺たちの他に定期便やら貨物便やらで、十五隻も待機しているな。俺たちは七番目だ。知ってるか、ファルファ行きの定期便は、必ず美味いメシを積んでいくんだ。こうなるからな」
「迂闊だったよ。こんな星があったとはねぇ」
コンビニでありったけ買い込み、冷凍庫をパンパンにした冷凍食品をモソモソ食いながら、エリーナが呟いた。
「うん、よく食えるなと思うが、それはレンジでチンしてから食うものだ。ちゃんと、袋の説明を読め」
「えっ、そうなの。どうりで、固いと思ったよ!!」
エリーナが後部にある簡単な調理スペースに行った。
『俺は初めてみたぞ。冷食を冷食のまま食う馬鹿野郎を!!』
「俺も初めてだ。歯が健康な証拠だな」
しばらくして、エリーナが返ってきた。
「これ、温めた方が美味い!!」
「いや、温めた方がではなく、積極的に温めるものだ。覚えておくといい」
俺は皿にあけた猫缶の中身を食った。
今日はかつお「味」だ。
多分、かつおは入っていないが、美味いものだった。
『ファルファ国際港進入管制からだ。天候回復、七番待ちだ』
「やっとか、よし進入経路設定。七番目とはまた、中途半端だな」
周回軌道で待機してた船が、次々と降下していく様子がレーダーで分かった。
『よし、順番だ。いくぞ』
逆噴射スラスタでブレーキを掛ける音と、重力制御装置の甲高い音が響き、船がゆっくりとファルファの港に向かって降下を開始した。
大気圏内に入り降下を続けて行くと、真っ白な雪に包まれた地上の様子が正面スクリーンに映し出された。
「ようこそ、ファルファへという光景だな。俺もくるのは久々だ」
「一回行ってみたくてさ。ここまで大変な星だとは知らなかったけど!!」
チンしたラザニアを食いながら、エリーナが笑った。
「しかし、よく食うな。太るぞ」
エリーナが俺をシートから引っこ抜いて抱きかかえた。
「……今、なんてった?」
「……なんでもない」
俺の髭を引っ張りながら、エリーナは小さく笑みを浮かべた。
「次いったら、髭を全部抜くよ?」
「……だから、俺は何もいってない」
船は指定されたスポットに着陸した。
「よし、やっと着いた!!」
「到着時チェックが終わったら、ようやくリゾートだな」
『問題ねぇよ。お前の髭の方が危機だ!!』
「これなくなったら、エラい事になるぞ……」
エリーナは笑みを浮かべ、俺を抱えて船から下りた。
「ぎゃあ、寒い!!」
「そんな薄着で大丈夫か? といいたかったのだがな。これからどうするんだ?」
エリーナが震えながらいった。
「な、なんか着るもの買う。死ぬ!!」
「じゃあ、ターミナルビルだな。凍死する前にいこうか」
俺を小脇に抱え、エリーナはターミナルビルにダッシュした。
ちなみに、猫の方がダッシュが速いので、抱えてもらう必要はないのだが、熱源に利用されたと解釈した俺だった。
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