第12話 貨物船の戦い方?
俺の船はアルファト目指して、全速力で航行していた。
「まずはアルファトを包囲している艦隊からだ。向こうはもう気がついてるだろう」
『当たり前だろ。さっきかっら、色々忙しいんだよ!!』
サムが怒鳴った。
「色々ね……」
「ここから感知出来るだけで三百を越えています」
エリーナがため息を吐いた。
「そりゃ、一つの惑星を包囲できるほどの数だ。生半可なものではないだろう。前やったあれで、レーダーに出せるか?」
「はい」
エリーナの声と共に、夥しい数の反応が表示された。
「こりゃ、盛大にぶっ壊せるぞ」
俺は笑い、船の針路を調整した。
「地上攻撃をしたということは、大気圏飛行型の作っちゃいけない悪い子を大量投入したはずだ。その母艦から叩くぞ。帰る家をなくしてやろう」
俺は笑みを浮かべ、正面スクリーンに一部が見えるようになった、はた迷惑な連中を見つめた。
「実は船の形まで判別できます。あっちゃいけない母艦を赤く表示しますね」
エリーナが笑みを浮かべた。
「そりゃいい。なにせ、この船の装備ではそこまではわからないからな。攻撃可能範囲に到達したら、暴れていいぞ」
「では……」
エリーナが小声でなにか呟き、無数の光弾が発射された。
正面スクリーンに盛大な爆発が起こり、エリーナの呟きは続いた。
『おいおい、一回で三十はぶっ壊してるぜ。手当たり次第によ!!』
「そうきたか。根こそぎぶっ壊せば同じと」
俺は笑った。
船の針路を変え、見えない場所にいた戦闘艦に対して、エリーナの光弾が容赦なく降り注いだ。
『包囲網を解いて、俺たちをガチで沈めにきたぞ。隊列を組み直してるぜ』
「遅いな」
俺は笑みを浮かべ、集結中の敵艦隊に向かって突っ込んでいった。
近距離迎撃システムが作動したようで、連射されるレーザーの雨が向かってきた。
「どこ狙ってんだ」
小刻みに進路を変え、速度を維持しまま集結中の戦闘艦の合間に入り込んだ。
入り組んだ迷路のようになった戦闘艦の合間を駆け抜け、群れの背後に出たところで強引に百八十度転進をした。
慌てて回頭しようと敵が動く中、笑みを浮かべたエリーナの光弾の雨がまき散らされた。
「あえて誘導はしていません。当たったら、アンラッキーということで」
エリーナが小さく笑った。
「いいぞ、もっと遊んでやれ」
正面スクリーンにはそのアンラッキーな野郎どもが、爆発していく様がよく見えた。
『おい、この距離で止まるな。攻撃照準レーザーの嵐だぞ。これは、ジャミングできねえぇ』
「うん、それが狙いだ。かかってこい」
俺は船を最大加速で発進させた。
ようやくまともな照準ができたのを喜ぶかのようにロックオンしたらしく、操縦室内にアラームが流れた。
その頃には、俺の船は再び艦隊の中に潜り込んだ。
アラームが消え、小型艦を中心に俺たちを何とかしようと、必死に動いた……密集隊形の中で。
一隻の小型艦が周辺四隻を巻き込んで衝突し、派手な爆発が起きた。
こんな事がそこら中で起き、それに巻き込まれないように艦隊の中を高速飛行して抜けた。
「焦るからそうなる。ただ飛び回ってるだけだぞ」
俺は笑った。
「……噂に違わぬ腕ですね。では、仕上げをしましょう」
エリーナが小声でなにか呟き、船から放たれた極太の光の槍のようなものが艦隊の中心付近にいた戦闘艦に命中し、全てを巻き込んで大爆発した。
「また派手だな。包囲艦隊殲滅の打ち上げ花火にはちょうどいい」
俺は笑みを浮かべた。
「問題があってな、この船は大気圏内を飛行するようには出来ていない。せいぜい、港にゆっくり降下していく程度だ。そんな事をやっていたら、間違いなくタコ殴りにされてしまうだろう。この船では、これ以上の事は難しいな」
俺は小さく息を吐いた。
「そうですか……」
エリーナがため息を吐いた。
「地上で悪さしている連中は、大気圏外には出られないだろう。今頃攻撃どころではなくなっているはずだ。放っておいても、ここの当局が始末するだろう」
「……分かりました。では、最終目的地へ向かって下さい」
「分かった。近いといえば近いが、標準時で二週間以上はかかるな。ないはずの場所に転送システムなどない。通常航法でいくしかないだろう。サム、航路設定」
『あいよ、もう終わってる。予定じゃ三百三十六時間くらいだ。何があるかねぇ』
「俺も楽しみだ。届け先がないはずの場所だぞ。もっとも、届けたくなくなってきたがね。なにかと助かるからな」
俺は笑みを浮かべた。
「……それもいいかもしれませんね」
エリーナが俺をシートから引っこ抜いて抱きかかえ、正面スクリーンをみた。
「……い、いや、いいのだが、これハマったのか?」
「……はい、癖になりました」
あくまでも正面スクリーンに目を向けたまま、エリーナがいった。
「……船を出したいのだが?」
「……」
エリーナは答えなかった。
『なにやってんだよ。オートモードで航行。ったく、これじゃ最高速が遅いからよ、いつ着くか分からねぇぞ!!』
「……そ、そういわれてもな」
俺はため息を吐くしかなかった。
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