第11話 中継点到着

「さて、転送ポイントが近づいたぞ。俺だったら、ここで網を張るけどな」

『ご名答だ。レーダーで探知出来るだけで、五十隻はいるぞ。百二十秒もあれば接触する。希に見る大艦隊だぜ!!』

 俺たちの船の前には、どうやら大所帯が待ち構えているようだった。

「正確には百五十隻です。旧式のミサイル艇まで動員して……」

 エリーナがため息を吐いた。

「それはまた大歓迎だな。向こうはとっくに気がついているだろう。撃たれたら終わりだ。死ぬ気でジャミングしろ」

『ったく、コキ使いやがって。しっかり動かせよ!!』

 俺は笑みを浮かべ、神経インターフェースに手を乗せた。

 語弊はあるが、意のままに機械を操るための入力装置がこれだ。

 俺の場合、肉球から直に入力できるので便利という利点があった。

「かなり高性能ですが、ここは民間船のレーダーでは無理です。探査魔法を航法レーダーシステムにシンクロしました。結果はパネルの画面でみられます」

 エリーナがいった。

「うん、器用な事をするな。よし、隙間をかっ飛ばすぞ」

 パネルで俺たちの歓迎艦隊の配置を確認しながら、大型艦の合間を狙った。

 お互いの安全距離が大きい上に、動きがトロいので狙い目なのだ。

『おっと、高速艇がインターセプトしてきたぞ。さすがに、訓練されてるぜ』

「甘いな、ついてこれるものならついてこい」

 エンジンを非常用全開モードに切り替え、さらに増速した船を立ちふさがってきた高速艇の群れに突っ込ませた。

 慌てて避けた高速艇同士が衝突し、派手に爆発が巻き起こった。

「下手くそだな。俺が悪いわけじゃないぞ」

『こんなバカみたいな速度でまともに突っ込んでくる馬鹿野郎なんか、想定するかよ。普通、こっちも衝突だぜ。さすが、猫の反射神経と動体視力ってところかねぇ』

 事実上の戦闘状態だが、サムは暢気にいった。

 目の前に一瞬見えた大型艦の合間を抜け、俺の船は転送システムの出入り口に飛び込んだ。

 船から発信した目的地のデータを機械が読み取り、あとは勝手に最適な出口に導いてくれる仕組みだ。

「やっとだな。アルファトまでは十秒も掛からないだろう」

 俺は息を吐いた。

「……はい、この遅れがどう作用したか。かなり心配ですが」

 エリーナがため息を吐いた。


 真っ暗だった正面スクリーンが通常の光景に戻った。

「システムオールグリーンだな。転送すると、たまにぶっ壊れるからな。アルファトまでは、標準時で二時間ほどだ」

「……はい。ですが、嫌な予感がします。警戒してください」

 俺は頷き、レーダーの探査範囲を広げた。

 これをやってしまうと、やたらと出てくるステルス艦などまず発見出来ないが、直感で遠距離レンジの走査が必要だと感じたのだ。

『おかしいぞ、アルファトのその港ととも交信ができねぇ。緊急信号を発信してる港も多数ある。これ以上接近するのは、ちとヤバいんじゃねぇの?』

 サムが警告を出してきた。

「俺がそれで退いた事があるか。大いに興味があるね」

「……退いて下さい。アルファトは今、アルガディア艦隊が総攻撃を掛けているはずです。特に港を中心に」

 エリーナが俺を無理矢理シートから引っこ抜いて、強く抱きしめた。

「……なんでもいいが、俺をなにかと勘違いしていないか?」

「あわわ、ごめんなさい!!」

 エリーナが慌てて俺をシートに戻した。

「それでいい。地上攻撃は国際条約で禁止されているはずだが、なにを考えているんだかな。ここでどうするつもりだったんだ?」

「はい、とある人から最終目的地に侵入するための通過コードを入手する予定だったのです。時間との勝負だったのですが、遅かったようです……」

 エリーナが深いため息を吐いた。

「いや、宇宙からだから料金は高いが、シンプルに電話でもしたらどうだ。当然、なんらかの連絡手段があるだろう?」

 俺がいうと、エリーナは慌てて携帯端末を弄り始めた。

「……繋がりました。なんとか脱出したようですが、アルガディア艦隊の包囲網を突破出来ないでようです。撃沈される前に、コードだけ送信するそうです。チャンネルを設定します!!」

「サム」

『あいよ、なんかきたぞ。また強烈に暗号化されてるな!!』

「だろうな」

 俺は笑みを浮かべた。

「さすがに平文ではまずいので。復号化キーは……」

『いらねぇよ。もうできて、設定しておいたぜ。今度は垂れ流したりしねぇよ!!』

「えっ……」

「サムの得意技でね。暗号化されたデータなんざ、なんだって復号化するぞ」

 俺は笑った。

「……そ、それ、最新方式なのですが」

『あっ、暗号なんざ全部計算なの。コツが分かってりゃ余裕だっての!!』

「だとさ。さて、どうするかね。主義には反するが、アルガディアの馬鹿野郎どもに好き勝手させておくのも癪だな。エリーナ、全部ぶっ壊しにいくぞ」

『おいおい、オンボロ貨物船で戦闘艦相手に張り合おうってのかよ。そういうムチャは好きだけどよ!!』

 俺は笑みを浮かべた。

「エリーナ、お前もムカついてるだろ。暴れていいぞ」

「……はい、ムカついています。全部、ぶっ壊して中指でもおっ立てましょう」

 エリーナが笑った。

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