第10話 邪魔者の正体

「うん、そうだな……余計に時間が掛かるが、航路を若干変更しよう」

 画面に表示されていた予定航路のラインが変化した。

「どうしたのですか?」

 エリーナが聞いてきた。

「いや、少し素直過ぎると思ってね。急いでるなら、誰しもこの航路を通るだろう。待ち伏せするには、うってつけだ」

「なるほど……」

 エリーナが頷いた。

『お得意の猫の勘だな。待ち伏せ得意だもんな。タイムセールとか!!』

「お前、あれをバカにしているのか。二割引は大きいぞ」

『猫缶しか買わねぇから、対象外だろうが。なんで待ち伏せしてるんだよ!!』

「二割引という言葉が大切なのだ。なんか安く買った気がするだろ」

 エリーナが頷き、端末を操作した。

「こ、今度は何をした!?」

「通販で大量に猫缶を。ちょうど、五割引でした!!」

 エリーナが笑みを浮かべた。

「なに、五割引。半額ではないか!!」

『いちいちセコいんだよ。たまには、定価で買ってやれよ!!』

「それは負けだ。そんな事はできん。それより、航路変更は問題ないか?」

『急に変えるなよ。まあ、問題ねぇ。今のところは、邪魔な野郎はいねぇぞ!!』

「分かった。急に静かになったな。こういうときは、何かが起きるものだ」

 俺はパネルの画面にレーダーを表示させた。

「ゴミを拾うが感度を上げてみるか……」

 レーダー画面に無数の反応が表示された。

 意味のないゴミ反応の中に、俺はそれを見つけた。

「おい、分かってるだろ。なんか潜んでたぞ」

『分かってる。「みーっけ!!」って送ってやったぜ!!』

 俺は笑った。

「いうなよ。知らない方が面白いのに。しっかし、脅威のステルス性能だな。背後から一撃を狙っていたのだろうがな」

『コイツもセコいな。頑張って何も発信しないでいたのに、いきなりなんか出し始めたぞ。うるせぇからアラームは切ってるけど、とっくにロックオンされてるからな』

「そういうのは切るな。エリーナ」

「ダメです。変調が早すぎてついていけません!!」

 エリーナが額に汗を掻きながらいった。

「そういう時は、こうすればいい。サム、オート・ジャミング」

『やっと出番だぜ。頑張ってるから、なにもいえなかったぞ。オールロック。黙らせてやったぜ』

「……ま、負けた」

「機械に勝とうと思うな。さて、手も足も出なくなったヤツはおいて、とっとといこう」 俺は笑った。


「それにしても、控え目にいっても最新鋭艦ばかりだな。その辺の安っぽい賊とは違うようだ」

「はい……アルガディアはご存じですか?」

 エリーナがため息を吐いた。

「ああ、たまに仕事でいくな。こういう機器技術では、最先端のものを持っているといっていいだろう」

「はい……私たちを妨害にきているのは、アルガディアの正規艦隊です。最終的な目的地と強い結び付きがありまして……」

 俺は笑った。

「おいおい、一介の荷運び屋が一国の正規艦隊と渡り合えっていうのか。そりゃ、大冒険だな。気に入ったぞ」

『バカか、お前は。どう考えたって、ヘビーな仕事だぞ。不可能なんて、口が裂けてもいわねぇけどな。口なんかないけど』

 エリーナが驚きの表情を浮かべた。

「キャンセル覚悟だったのですが、よろしいのですか?」

「よろしいもなにも、請け負ってしまったからな。俺は途中でキャンセルしたことはない」

 俺は笑みを浮かべた。

「そ、そうですか……ありがとうございます」

 エリーナが安堵の息を吐いた。

「但し、途中で撃沈される事は覚悟しろよ。面白くなってきたな」

『あーあ、始まったぜ。好奇心は猫をも殺すって諺知らねぇのかよ』

 サムの声に、俺は笑った。

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