山本弘はなぜ女ターザンに惹かれるのか

 この前『ジャングル・ブック』がテレビで放映されたのがきっかけで、普段あんまりしない話題を今日は特別にやってみようと思う。題して「山本弘はなぜ女ターザンに惹かれるのか」。

 僕の女ターザン好きは小学生の頃まで遡る。すでに大学ノートにいっぱい描いていた落書きの中に、女ターザンをいっぱい描いていたぐらいだ。大人になってからもそれは止まらない。小説では『アイの物語』の「ときめきの仮想空間」の中にパンサ(小野内水海)という女ターザンが登場したし、『トワイライト・テールズ』ではマリオンという女ターザンが大活躍した。また、『ダイノコンチネント 滅亡の星、来たる』はなるべくいろんなパターンの女ターザンを登場させたくて思いついた企画だ。人気がイマイチだったのですぐに終わっちゃったけど(笑)。ああ、もちろん女ターザンが主人公の『魔境のシャナナ』というマンガの原作も書いたぞ。これもすぐに打ち切られたけど(笑)。

 もちろん女ターザンが出てくる映画もいろいろ見た。『シーナ』はもちろん、『北京原人の逆襲』や『ジャングルの裸女』といったドマイナーな映画までも。「日本の女ターザン映画評論家」と名乗ったこともある。そういうわけで女ターザンについて僕は少しはくわしいのである。

 女ターザンの特徴は何かというと決まっている。「いつも裸やそれに近い格好でうろちょろすること」である。つまり羞恥心が皆無だということだ。なぜそれが魅力的なのか。


 実は『チャリス・イン・ハザード』がまさにそれなのだ。もちろん、チャリスは文明圏に暮らす少女だし、父親もいる(めったに出てこないが)。しかしアフリカの大自然に育った少女だし、自然界のことに詳しい。シリーズ第二弾の『驚異の少女核爆弾』では、仲のいい野生のヒョウのキーナに何度も命を救われている。まさに「心は女ターザン」なのだ。そして羞恥心がない。

 シリーズ最終巻の『ファイナル・オーバーヒート【下】』では、彼女は愛するようになった少年ランスとこんな会話をする。




「その……」ランスは言いにくそうに言った。「女の子はあまり『セックス』とか

『おちんちん』とかは連呼しないほうがいいんじゃないかな」

「え? ああ、そうかも。言われてみれば、少しはしたないね」

「少しどころか、かなり」

「やっぱり、普通の女の子は『おちんちん』って言わないものなの?」

「世間的にはね。あと、裸を見られるのも恥ずかしがる」

「うーん、でも、ボクはちっとも恥ずかしくないんだよね」チャリスは首を傾げた。「ねえ、ランス。『おちんちん』って言う女の子は嫌い? 嫌いだったら改めるけど」

「いや」ランスは微笑んだ。「変えなくていいよ。それが君という女の子だろ? 

んなとこも含めて好きになったんだから」

「良かった」

「それに、きっとそれも、君の強さのひとつだよ」

 ランスは考えた。文明圏の女性は他人に裸を見られることを極端に嫌う。服を脱がされただけで激しく恐怖し、抵抗心のほとんどをくじかれる。胸や股間を手で隠さなければならず、まともに反撃することさえできなくなる。裸にされただけで、事実上の敗北なのだ。

 だが、未開人を見れば分かるように、性にまつわる羞恥心は、人間本来の本能ではない。もしかしたらそれは、男性が優位性を保つために、女性に植えつけてきた服従のプログラムなのかもしれない。裸を隠すことを優先せよ。抵抗は二の次だ、と。

 アフリカの大自然の中で、動物やマサイ族とともに育ったチャリスには、そんなものはない。悪人に捕まって全裸にされても、何も隠さず、堂々と胸を張っている。その分、チャリスは確実に普通の女性より強い。

 その強さが、自分を地獄から救い出し、光明を与えてくれたのだ。




 つくづく思うのは、「女ターザンというのは架空の存在」だということだ。チャリスにしても現実に絶対に存在しない。だからこそ、安心して萌えられるのだ。


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