『僕の光輝く世界』
先日、我が家に来るリハビリ関係者の中に、小説を読まない人が多いと愚痴ったという話をしたが、今日またあらたに有望な若い人を見つけた。Nさんという若い女性である。ミステリが好きだというので、さりげなく『僕の光輝く世界』の話をしたら食いついてきた。
『僕の光輝く世界』は僕の小説では珍しくSFでもホラーでもファンタジーでもない作品だ。アントン症候群という実在の脳の疾患を題材にしている。主人公の光輝はアントン症候群になり、普通の人間では見聞きできないファンタスティックな体験をする。特筆すべきは、ヒロインの「美少女」夕との関係だ。
「主人公目線でみる世界と現実とのギャップ、どんどん読み進んでいきました。また
ヒロインの夕が純粋なだけでなく黒い面があり、ひきこまれました」Nさんは手紙の中でこんなふうに述べている。「最後の話は殺人事件や小説の解読、どんな結末になるのかドキドキしながら読みました。読み終えた後は満足感で一杯になりました」
そうだ。夕はこの手のヤングアダルト向きミステリの中では特異的な存在だ。そこが惹かれるのだが。
僕はこの手紙に喜んだ。たった一人の読者とはいえ、ファンレターには違いない
この一枚の手紙にさえ、多くの思いがこもっている。そして他にも、僕の小説を読んで勇気づけられた人も何人かいることだろう。
ちなみに他にもリハビリに来ている医療関係者に尋ねたら、アントン症候群のことを知っている人がいた。どうやらアントン症候群とはリハビリ関係者ならよく知っている用語らしい。僕は知らなかったのだが。
できれば本物のアントン症候群の人に会った話を聞きたかった。どんなファンタスティックな話を聞かせてくれるか楽しみだ。
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