そんなある日

 最近、僕の発言を勝手に誤解して、僕の使ってもいない言葉を使ったことにして勝手に腹を立てている人がいる。「アベガー」とかがその例のひとつ。しかも僕がその発言を連発してるかのように思い込んでいる。

 試しに僕の過去の発言までそっくり再録して再現してみればいい。誓って言うが「アベガー」などという言葉を使ったことは一度もない。もちろん、僕も安倍首相をたまに批判することはあるが、それは批判に値することを言った場合だけだ。

 にもかかわらず、あなたが「山本弘は『アベガー』と連呼している」と思い込んでいるとしたら、それは偽記憶症候群というものである。(偽記憶症候群 FMS という言葉については、どうか検索してみて欲しい)

 そもそも僕は誰かを思想や信条だけで差別することはない。自民党でも公明党でも社会党でもはたまた共産党でも、ちゃんと選挙で選ばれた人なら誠意をもって接するべきだし、もしその人が当選後に何らかのスキャンダルが露呈したなら、時は軽蔑すべきである。いけないのはスキャンダルが露呈してもその人を支持し続けることだ。それはもう○○教信者と呼ぶべきものだ。

 宗教に関しても寛容だ。人を差別したり傷つけたり毒ガスをまいたりする思想のみは排除するべきだが、そうでなければ何を信じてもかまわないと思う。

 ただし、ニセ科学だけは例外だ。それは人として最低限守るべきルールを破っているからだ。

 たとえば僕が『ニセ科学を10倍楽しむ本』では、こういうことを書いた。


【第1章 水は字が読める?】

パパ 道徳を教えるなら、それこそ童話や小説でもいいじゃないですか。事実ではないものを事実だと言う必要が、どこにあるんですか? 「道徳のためならウソを教えてもいい」なんて考え方は、それこそ道徳的じゃないでしょう?


【第2章 ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる?】

パパ みんなそうですよ。昔の事件なんか忘れてしまっているんです。政治家や評論家の中にもよくいます。「今の若者のモラルは崩壊している」とか「今の若者はキレやすい」と言う人たちがね。本当は今の若者のほうがずっとおとなしいのに。データを見ようとせず、自分の印象だけで語るのは、まちがいの元なんです。


【第3章 有害食品、買ってはいけない?】

ママ でも、知らなかった。ふだん、なにげなく使ってるけど、おしょうゆって実は危険なものなのね。

パパ だからと言って、「しょうゆは危険だから買ってはいけない」なんて言う人はいないだろ?(中略)


【第6章 2012年、地球は滅亡する?】   

勇馬 そういう予言本を書いた人たち、はずれたことをちゃんとあやまったんですか?

パパ いいや、ぼくの知るかぎり、世間をさわがせたことを謝罪した人なんて1人もいないね。みんな本を書いて、もうけて、あとは知らんぷりだよ。


 そう、僕の本にはほとんど政治の話なんか出てこないんである。

 かわりに僕が信頼するのは科学的厳密さだ。とは言ってもそんなややこしいことは言わない。『ニセ科学を10倍楽しむ本』にしても対象読者は中学生だ。

 他の本も似たようなものだ。『詩羽のいる街』『神は沈黙せず』『アイの物語』『去年はいい年になるだろう』『僕の光輝く世界』『BISビブリオバトル部』……みんな平易な科学的説明しか用いていない。例外は『地球移動作戦』と『プロジェクトぴあの』で、これはかなり難解な科学知識を必要とするだろう。

 だからなぜ、話を面倒にしたがる人がいるのか、僕には理解できない。何で単純な話をややこしくしたがるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る