『超強台風』はすごいぞ!

 最近、仕事場から珍しいDVDを持ち込んで、家でそれを見ている。この前見たのは中国映画『超強台風』。2010年に日本で公開された映画だが、日本ではあんま

り話題にならなかったと記憶している。

 中国映画など普段あまり見ない僕がこの映画を見に行ったのは、すごい特撮シーンがあると知ったからである。それも最近流行のCGなんかじゃない。いや、部分

的にCGも使っているんだけど、特撮カットの大半は昔ながらのミニチュア・ワークなのだ。僕のようなレトロ特撮マニアにとっては、拍手を送りたい作品なのだ。

 うーん、でもこういう映画って、あまり他人にお勧めできないな。最近の観客ってCGに慣れちゃってるから。「この微妙にミニチュアだと分かる特撮がしびれ

る‼」と言っても理解してくれるかどうか。


 あと、このストーリーね。悪人が一人も出てこない! 登場人物がみんな善人だったり、悪いことしてる人間も、小銭稼ぎのケチな悪党とか、妊娠している妻を心

配して船を乗っ取ろうとしている奴とか、そんなのばっかり。

 僕らは普段からハリウッド的なキャラクター配置にどれほど毒されているかがよく分かる。


 でも、そんなキャラクターの中で、ひときわ異彩を放っているのが市長‼(登場人物の大半が名前が出てこないので、主要キャラであるはずの市長も名前が不明なのだ)

 とにかくこの市長、ものすごく有能で、おまけに責任感がめちゃくちゃに強い!

 最初の方にちらっと出てくるスリをはじめとして、港で働く港湾労働者とのトラブルを土下座で解決したり、襲い来る台風の脅威に立ち向かったり、ついにはサメと戦ったりするのだ(笑)。僕はもうサメの登場に大笑いして拍手喝采だった。

 なんか見てると東映の時代劇を見ている気になってくる。『暴れん坊将軍』とか『遠山の金さん』とか。そのぐらい時代錯誤キャラなのだ。 

 もちろん、こんな有能な人間が現実に存在しないことなんて、中国人だって分かっているはずだ。たぶん、中国人の大半は、無能な政治家のせいで苦しんでいるのではないだろうか。

 だからこそ、市長のような現実離れしたスーパーヒーローの登場に拍手を送るのではないか。

 考えてみれば、僕ら日本人もそうなのかもしれない。現実の政治家には背を向けて、存在しない仮面ライダーや戦隊ヒーローを応援している……。

 あと、中国の人民軍が活躍するのは、ちょっとしたプロパガンダっぽい。でも、日本の怪獣映画で自衛隊が活躍すると同じもんかな。


 そうそう、今回のビデオを最後まで見ていて、登場人物の口を借りて、地球温暖化に対する警告があったことに気がついた。将来、地球の気温が上がると、今回の超強台風を上回るスーパー台風が襲ってくるかもしれないと……。

 そう、もはや地球温暖化の危機は中国でも知られているだ。ジャラルさんのような温暖化懐疑論など唱えている場合ではないのである。




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