山本弘のリハビリ日記

『ＭＭ９』と片渕監督のこと

　先日、河出書房新社から宅配便が届いた。『この世界の片隅に』の監督の片渕須直氏の未発表の原稿を集めた本を作るので、関係者に許可を取っているのだそうだ。僕も片渕氏の関係者ということで、話が回ってきたのだ。

　実は『MM9』にはアニメ化の話があり、その監督が片渕氏だったのである。2009年頃のことだ。当時はTVアニメ『BLACK LAGOON』の監督として有名だった。『BLACK LAGOON』は僕も大好きな番組だったので、片渕氏が監督すると知っておおいに喜んだ。

　さらに片渕氏が怪獣ものにかける熱意がすごかった。持参したのはA1サイズの表。なんと『ウルトラQ』の脚本がどうやって書かれたかを、びっしりと書いてあった！　『MM9』について語るなら、まず『ウルトラQ』について語らねばならんということらしい。こんなに“濃い”特撮マニアには会ったことがない！

　さらに片渕氏が書いた『MM9』のシナリオが、超絶的な代物だった。『MM9』の原作は実はあまり出来がよくない(笑)。しかし片渕氏は原作をびっしり読み込んでおり、ほんのちょっとした文章をふくらませて、ずっと面白い話に仕立てているのだ！

　この人は「本当のプロだ」と確信した。僕はあくまで小説のプロにすぎないんであって、シナリオのプロじゃあない。シナリオのプロとは、片渕氏のような人を言うのだ。

　いろいろあって、『MM9』のアニメ化の話は流れててしまったのだが、以来、ずっと片渕氏の才能には注目していた。だから『この世界の片隅に』も素晴らしい作品に違いないと確信して、クラウドファンディングにも協力させていただいた。実際、本当にあの映画は素晴らしかったよ。

　あっ、ドラマ版『MM9』については、もうなかったものとして忘れたい(笑)。