インフォメーションとアウトフォメーション



 まずは前回の訂正から。言語療法士さんのことをOTと書いたけど正しくはSTでした。ごめんなさい。

で、そのSTさんから、新しい問題を出された。今度は「ざぶとん」という言葉を使わずに「ざぶとん」とは何かを説明しなさい、という問題。うわー、今度も難しい! さあ、あなたならどう答えます。

 まあ、「エスカレーター」なら何とか答えられたんだけどね。「駅などにある移動用のマシンで、上か下に人間を運ぶもの」とか「階段をオートにしたもの」とか何とか。

 でも「ざぶとん」はどう言えばいいんだろ?

 STさんとの会話の中で痛感したのは、僕らが普段、当たり前のように使っている日本語でも、すごく複雑な裏設定が必要なんだ、ということ。何気ない会話であっても、それを理解するために、莫大な知識が必要となる。

 僕の小説「メデューサの呪文」(『シュレディンガーのチョコパフェ』に収録)では、情報(インフォメーション)に対して外情報(アウトフォメーション)という言葉を使っていた。確かずっと前に何かの本で読んだ言葉なんだけど、何という本だったかは思い出せない。

 要するに、言葉とはある情報を伝えるだけではだめで、その情報の意味する背景を伝える必要がある、という話。作中では「夏の海で少女は波と戯れていた」という例文を元に論じている。その文章を読んで理解するためには、「夏」「海」「少女」という言葉を知っていて、それぞれのニュアンスを理解していなくてはならない。つまり言葉というのは、実際に情報に含まれているビット数をはるかに上回るアウトフォーションを伴っている……。

 そんなこと普通の人は普段、考えもしないだろうけど、でも自分の知力が低下する事態になると、どうしても考えちゃうんだな。

 自分は今、どれだけのアウトフォメーションを失っているかと考えてしまうのだ。

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