　参った。まさか武田邦彦教授がこんなにモンスターだと思わなかった。

　まあ僕も『“環境問題のウソ”のウソ』や『検証　大震災の予言・陰謀論』でこの人のウソをずいぶん暴いてきたつもりである。しかしこんな派手なパフォーマンスをやらかすとは。

　テレビ番組『ゴゴスマ』の中で、韓国人男性が日本人女性を暴行した事件にふれ、こんなことを言ったのである。

「路上で、日本人の女性観光客をその国のね、訪れた国の国の男が襲うなんてのはね、これはもう世界で韓国しかありませんよ」

「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しにゃいかないからね」

　しかも「それは言い過ぎですよ」と制止したアナウンサーや他の出演者に対しても、まったく応じなかったという。それどころか『ゴゴスマ』では「犯罪を助長する発言」は容認しない番組と言ったにも関わらず、武田教授の発言については一言も言及しなかった。

　もちろん、日本人女性に暴行を働いた韓国人が悪い。決まってる。

　しかし、それの仕返しのつもりか、日本人が韓国人女性を暴行することを容認するって、明らかにおかしいだろ。日本人女性が暴行されるのも、韓国人女性が暴行されるのも、どっちも許しちゃいけないんだよ！

　もちろん「世界で韓国にしかありませんよ」というのも間違いで、卑劣な犯罪者は韓国にも（もちろん日本にも）いるというだけなのだが。

　しかし、この件では、なぜか武田教授を激しく批判する声は聞こえてこない。単に小さなニュースのひとつのような扱いだ。テレビで報道されたのに。さすがに『ゴゴスマ』は下ろされたようだが。

　どうもここ数年の報道に、みんなもう慣れっこになっしまったのではないか。武田教授が放射能汚染のせいで「あと三年で日本に住めなくなる」と2012年3月に予言したことも、「セブンイレブンの食品は一切買ってはいけない！　狂牛病になる！」とか「禁煙すると早死にする」というニセ科学をテレビで堂々ととなえたことも、みんな忘れ去ってしまったかのようだ。ひとつでも覚えていれば、この人の言うことは信用できないと分かったはずなのに。

　みんなニセ科学のことなんか許してしまったかのようだ。科学的に間違ったことを唱えるなんて「たいしたことじゃない」と思っているのではないか。

　そうした無関心についてのツケが回ってきたのかもしれない。もっとも多くの人がツケの大きさに気づいていないらしいのが不気味だが。