こんな簡単な問題なのに
週に一度、我が家に来るリハビリの先生に、いつも出されているテストがある。こういうものだ。
「ここにいくつかの数字が並んでいるので、左右の数字を比較しましょう。1段目は、右の数が大きい場合に、□の中にチェックをつけてください。2段目は左の数が大きい場合にチェックをつけてください。3段目は右の数が大きい場合にチェック、4段目は左の数が大きい場合にチェックという具合に1段交替でチェックをつけてください。」
その下にはこんな数字。
1 5 3 2 6 9 4 7 3 5 8
7 3 2 5 8 9 5 3 4 7 1
4 2 6 8 3 5 4 9 7 3 5
6 7 4 2 5 1 6 8 3 9 7
5 2 6 4 7 9 1 4 2 1 6
9 4 2 6 3 5 7 2 1 4 2
さて、いかがだろう。こんなもんは簡単?
だが、今の僕にとってはこれが難問なのだ。
特に偶数段と奇数段で順序が逆になるというのが悩ましい。単純に前の段と同じやり方を踏襲しようとしてもできないのだ。
最初のテストでは間違いまくっていて、惨憺たる成績だった(笑)。二回目からは注意するようになって、ややましな成績だったが。
ただし、単純な問題なのに時間がかかるのは変わらないが。
こんな問題もある。
「次の文字を含む言葉を、それぞれ5個ずつ考えて書きましょう。
例 かた→かたたたき、やりかた、かたみ……」
僕が書いたのはこういう回答。
(1)とし (としわすれ、としがす、としでんせつ、としより、としん)
(2)さい (さいばし、さいぼうぐ、さいこきねしす、さいりうむ、さいこう)
(3)やま (やまおく、やましな、やまかがし、わかやま、やまおとこ)
(4)けい (けいさん、けいびいん、けいさつ、けいりゃく、けいかく)
(5)がら (おおがら、こがら、がらくた、がらがらへび、がらんどう)
かなり悩んだ末にこういう結果になった。どの単語も最初のひとつやふたつぐらいは思いつくが、いっぺんに五個は無理。何時間もかけて考えないと思いつかない。
最初の問題で「としでんせつ(都市伝説)」という言葉を思いついたのは、僕が『妖魔夜行』シリーズ(角川文庫)を書いていて、都市伝説という言葉に親しみがあったからだろう。
2問の「サイボーグ」「サイコキネシス」という言葉も、僕が SFファンだから親しみを覚えたんだろう。
3問目の「ヤマカガシ」も普通の人は真っ先に出てこない名であろう。これは「山の蛇」を意味する古語で、『MM9 -destrution-』(創元SF文庫)で使ったから覚えていたのだ。
すでに書いたように、僕の知能は大幅に低下している。こんな単純な問題でもさんざん悩み、何時間も考えないと分からない。
治る時が来るのだろうか。治るとしても何ヶ月、あるいは何年も先の話だろう。
それを思うと気が遠くなる。
だから、その時まで、岩にかじりついて耐えるしかない。
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