「理路整然」と主張する人はちっとも理路整然じゃない


 今、『BISビブリオバトル部』の第五話『夢は光年の彼方に』を東京創元社のウェブ・マガジン『Webミステリーズ!』で連載している。第一話だけは脳梗塞で倒れる前に書いたものだが、第二話からは脳梗塞後のリハビリをかねて書いた新作である。興味がおありの方はお読みいただきたい。あっ、無料ですよ。

 妻は現代の出版事情に不案内なもので、「何でただで読ませるの?」とか、ぶつくさ言ってたけど(笑)。いや、これまでのシリーズみんなそうしてたんですが。

 ただ、書くのにすごく時間がかかる。ポメラを使ってぽつぽつと書いてるんだけど、ポメラで一画面を打つのに一時間はかかる。一章に何十時間かかるか……。どうか気長にお待ちください。



 僕は今、Twitterで東日本大震災当時の自分のブログを転載している。あの当時、どれほどのデマや間違った情報が乱れ飛んでいたかを検証するためだ。

 その途中でその頃のブログを読み直しているのだが、その中で「理路整然」というハンドルネームの人が、しょっちゅう僕につっかかってきていたのを思いだした。

 たとえばこんな例。


 それってすごく安全なんじゃね?

 (2012.10.30)


 韓国の即席ラーメンの「発がん物質」続報

 (2012.11.23)


 韓国製の即席ラーメンのスープに「ベンゾピレン」という発ガン性物質が使われていた……というニュースに騒ぎ立てた者が続出したという話。

 このベンゾピレン、焼き肉や焼き魚にもごく普通に含まれており、当然、人体への害などほとんどない。日本では規制値の基準すら設けられていない。ニュースでもこうしたことはきちんと説明されていた。

(あとで計算してみたら、この容量で発ガン性が発生するには、260mgのベンゾピレンを摂取しなければならず、スープの原料であるかつお節を4600キロも食べねばならないと分かった)

 しかし、このニュースをきちんと見なかったのか、「中韓の食品なんざ絶対食わんわ」とか「こんなもん食えるはずがないだろ」とか騒いだ者が続出した。これはさすがに目に余る。というか、同じ日本人として恥ずかしい。

 そもそも日本ではベンゾピレンには基準値すらなく、みんなベンゾピレンが入っているラーメンのスープを平気で飲んでたというのに。

(後でこのニュースについては、『14歳からのリスク学』という本で詳しく論じた)


 そこでそういう慌て者を注意するブログを書いたわけだが、そうしたら「理路整然」氏は怒ってきた。僕が韓国製の食品を養護していると錯覚らしい。

 僕がそのメーカーを「以前から何度も異物混入事件を起こしているので、その点について非難されてもだと思う」と書いた部分を読み飛ばしたのだろう。異物混入事件で非難されるならまだしも、なぜ何の害もないもので非難されなくてはならんのだ。


 その次の、北朝鮮の打ち上げた人工衛星についてのニュース。明らかに定義上は人工衛星なのにマスコミが「人工衛星」と使いたがらないのを僕は批判した。何をとぼけたことを言ってるのか。北朝鮮のロケット技術の高さとその脅威を正確に庶民に伝えるのがマスコミの義務じゃないのかと。


 ○○と称する事実上の××

 (2012.12.14)


 あきれたことに「理路整然」氏は僕を「北朝鮮マンセー」と批判してきた。北朝鮮の技術力が高いと書いたのがお気に召さなかったらしい。

 僕を北朝鮮のシンパだと思いこんだのか。僕が「北朝鮮のロケット技術がミサイルに転用された場合の恐ろしさ」と書いたことが目に入らなかったのか。

 僕が北朝鮮マンセー? 冗談じゃない。僕は『神は沈黙せず』でも『去年はいい年になるだろう』でも北朝鮮を崩壊させてるぞ。(笑)


 しかし、こんなことを言っても「理路整然」氏には通用しないだろう。彼はそもそも小説なんて読まない人だろうから。

 何で「理路整然」氏をブログから追い出さなかったのか?

 簡単に言えば「追い出すほどの価値もないから」と判断したからだ。(笑)

 彼の発言はどれも筋が通らないことばかり。間違いを指摘するのも簡単で、一瞬で終わる。本人は「理路整然」と思っていたらしいが。


 考えてみれば、「理路整然」氏のような人物は、けっこう多いんじゃあないだろうか。

 自分の考えが「理路整然」だと思いこんでいて、一点の曇りもないと信じている。

 だが実際はずたぼろで見る影もない。

 それでも態度は毅然としている。自分が百戦錬磨で向かうところ敵なしだと思っている。

 なぜ百戦錬磨と信じているかといえば、答えは単純で、「負けたことが認識できないから」。本当に殴り合ったわけじゃなく、バーチャルで殴り合っただけだから、「自分は無傷」「そして無敵」と信じていられる。

 そういう幻想を打ち砕くのは難しい。

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