『チャリス・イン・ハザード』電子書籍化


 前からこの連載で触れていたアクション小説『チャリス・イン・ハザード』の第一作『魔島からの脱出』が、今回、電子書籍として販売されました。僕が脳梗塞で倒れる前に、同人誌で出していた作品です。

 この小説、僕の普段の作品とは毛色が違いすぎ、エロチックな表現が多いため、正式に出版社を通して出しにくかったんです。やむなく同人誌として出版し、コミケで少部数のみ販売していたのですが、自分でも大変に気に入っており、何とか日の目を見せたいとずっと思っていました。

 この度、眠田直氏のご好意により電子書籍化が実現したわけです。眠田さん、ありがとうございます!


 この小説を書いた動機について。

 最初にチャリスというキャラクターが浮かんだのは、今から三〇年ほど前のこと。世間ではロリコンマンガというものが流行っていたのです。『レモンピープル』とかね。

 でも、僕はそうした作品に不満を抱いていました。

 あまりにもヒロインがぞんざいに扱われすぎている。

 男に脱がされ、レイプされるだけのヒロイン。時にはレイプされても陽気に笑っていたりする。そして男は何の報いも受けない。あまりにも男にとって都合が良すぎる展開。

 僕はそう言う話に飽き飽きしていたのです。だからチャリスというキャラクターを考えました。


 絶対にレイプされないヒロイン!

 攻撃され、絶対の危機に陥っても、決してあきらめず、時にはがんがんと逆襲するヒロイン!

 しかし、超能力やスーパーパワーを持たず、あくまで普通の肉体でピンチを切り抜けてゆく。

 もちろん、そんなのはフィクションです。現実にはありえません。

 でも、フィクションならあっていいと思いません?


 もちろんチャリスは何度も敵に捕まりひどい目に合わされるのですが、僕がこのシリーズを書く前に自分に課した縛りがあります。

 チャリスをいたぶる手段は、現実に可能なものにはしないこと。

 たとえば『魔島からの脱出』の最初の方に登場し、チャリスの自由を束縛する「悪魔のピアス」がそれ。

 他にも無制限におしっこを垂れ流させてミイラ化させる細菌とか、飼い慣らしたコモドドラゴンで舐めまくってエクスタシーに追い込むとか、現実にできるもんならやってみろと言いたい(笑)。

 なぜこんな現実離れした設定にしたかというと、現実に可能なことを書いて、誰かに真似されたら嫌だからです。

 あくまでこの物語はフィクションなんだ、ということを強調したかった。

『魔島からの脱出』の主な舞台であるシンガポールにしても、実際は東南アジアの中でも治安のいい国なんだそうです。だから架空のシンガポール。


 現実を無視した点は他にもあります。

 正義が必ず勝つと表現したことです。

 現実にはそんなことはない。子供を痛めつけ、苦しめ、あるいは性的虐待を加えている者が、時には大手を振って歩いているのがこの世界です。

 僕はそれを許せない。だから、せめてフィクションの中でも、正義がきちんと勝ち、悪が報いを受ける世界にしたかったんです。

 チャリスはこの世界の中では、真の正しい正義の具現者です。悪に対しては容赦がありません。

 必然的に、巻を重ねるたびに、チャリスによる死亡者は膨大な数に(笑)。一巻だけで一〇〇人は超えてますね。僕の小説でこんなに人を殺したヒロインは他にないです。

 まあ大半は正当防衛なんですけど。

 あっ、あくまでチャリスは心優しい女の子で、冷酷な殺し屋じゃありませんから、お間違えなく。


 同人誌で出して良かったのは、女性読者の声が聞けたことですね。「チャリス、楽しみにしてました」と言われたときは嬉しかったです。

 ある意味、女性の手にこそ届けたかった作品ですから。


 売れ行きが良ければ、二巻の『脅威の少女核爆弾』、三~四巻の『ファイナル・オーバーヒート(上)』『ファイナル・オーバーヒート(下)』もお届けできる思います。




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