素晴らしきかなバレンタインデー

 先週はバレンタインデーであった。

 この風習には何の歴史的根拠もなかったというのは、昔『トンデモ大予言の後始末』(洋泉社)で書いたことである。愛する人にチョコレートを贈る風習は、近年の日本で生まれたものだということや、西洋にそんな習慣などなかったということも。(親しい人にカードを贈る習慣はあるらしい)

 しかし、僕は悪い風習だとは思わない。たかがチョコ一個でいい気分になれるなら安いもんではないか。恵方巻きのように、余らせて大量に破棄なんかしたら問題だけど。


 我が家のバレンタインデーは、妻がウルトラマンのチョコをくれた。家計が苦しいし、安いものだけど、それでも僕にチョコをくれる人がいるというだけで嬉しい。

 それに、毎日の食事。

 乏しい食費の中で妻はやりくりして、美味しい食事を作ってくれる。それだけで嬉しい。ありがたい。


 娘の美月もいい子に育った。学校では友人たちと仲良く暮らしているという。いじめっ子にもいじめられっ子にも育たなかった。あと、陰謀論者やレイシストにも。「水伝」を信じてたり、アポロ陰謀説にも911陰謀説にもハマってないよね(笑)。

 どれだけ多くの子供が、親の影響で陰謀論者やレイシストに育つのか。無実の人に対しておぞましい怒りの言葉をぶつけるようになるのか。それを思うと気が遠くなる気がする。


 ちなみに、娘は無事に卒論を書き上げ、卒業できることになったという。僕は脳梗塞の影響で何もしてやれなかったけど、どうにか自力でクリヤーできたらしい。卒業後はIT企業に就職が決まっている。わが娘ながら誇らしい。

 学業以外も優秀で、エレクトーンが趣味。特に特撮ソングを演奏するのが大好きである。今はドコモのCMで流れてる「引っ越ししたら、光るそば」の歌がお気に入りで、さんざん流してる。(笑)

 妻も娘も、僕のことが大好きだ。僕も妻や娘を愛している。


 しみじみと思う。悪い夫、悪い父親にならなくて良かったと。

 僕の父は妻を殴るような悪い親だった。しかも事業に失敗し、多額の借金をかかえ、僕や兄は長いこと借金に追われた。僕はそんな父親になりたくなかった。妻や娘には常に笑顔で接した。手を上げたことなんて一度もない。

 妻が身体が丈夫ではないので、暇さえあれば娘を児童公園に連れ出し、何時間もいっしょに遊んだ。大きくなってからは一緒にコミケにも行った。娘が刀剣乱舞にハマってからは、二人で水戸の徳川ミュージアムにも出かけた。

 そんなことがあるから、妻も娘も僕を見放さないんだと思う。


 もしも僕が悪い父親であったなら、二人とも僕につらく当っていただろう。

 そして僕の心はとっくに折れていたにちがいない。


 ニュースでは、子供に残酷な仕打ちを重ねる父親がよく報じられている。

 なぜ子供に対してそんな役割を押しつけられるのか、僕にはそれが分からない。それはいつか自分に跳ね返ってくるんだよ?

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