第4話 『GRIDMAN』で未来が見えた・1

 前回の話に続き、今回もアニメの話である。

 先日放送が終了した『SSSS. GRIDMAN』を見ていた人は多いと思う。今期のアニメでは最高の人気作品だった。元は『電光超人グリッドマン』という昔の実写ドラマのアニメ化だが、べつに昔の作品へのノスタルジーではなく、現代の若い世代にもアピールした。

 昔の『グリッドマン』に夢中になった世代が支持したわけではない。そもそも昔の『グリッドマン』ってそんなにヒットした番組じゃなかった。僕のように旧作を見ていた人間には、『グリッドマン』を現代にアニメ化するというニュースを聞いて困惑した人も多かったと思う。「そんなに人気なかったよね、『グリッドマン』?」とか「どこから出たんだこの企画?」とか。

 しかし、ふたを開けて見たら大ヒットだった。

 ヒットの要因には昔の作品の知名度なんて関係ない。優れたスタッフが総力を結集し、「こういう風に作れば面白いはず」と信じて作ればいいのだ。

 僕なりに『GRIDMAN』がヒットした理由をこう分析してみた。


 時代の変化に合わせて何もかも変える必要はない。どうしても変えなければいけない部分だけは変える。それ以外の部分は旧作のままでいい。


 最終回を見て僕は感動した。グリッドマンのカラーリングが旧作のまんまで、アクション・シーンにかかる曲が旧作の主題歌、しかも最後に披露する技も旧作に忠実……ここまでやるのか!?

 まいった。これはもうノスタルジーやオマージュとかいうレベルではない。旧作のリメイクのように見せて、スタッフはまったく新しい創作のテクニックを生み出した。リメイクで新作を作ったのだ。

 古い作品でも現代によみがえらせることができる。その作品に内在していたテーマや面白さを復活させられる。

 これってものすごく画期的なことじゃないか?

 

『GRIDMAN』の成功で、たぶん円谷プロの人も気付いたと思う。昔の作品でも正しくリメイクすればきっと現代に復活させられると。

 でも『ウルトラマン』じゃ当たり前すぎて、ぜんぜん面白くない。他にも円谷プロには復活させるべきコンテンツがあるはずだ。

『マイティジャック』? 『ボーンフリー』? 『アイゼンボーグ』? 『トリプルファイター』? 『10・4 10・10』? 『アステカイザー』? 『スターウルフ』? 『猿の軍団』? 『アンドロメロス』? いや『マイティジャック』の復活というのも、個人的に少し心躍るネタではあるんだけど(笑)。

 もっとあったでしょ、SF的にすごく面白いうえに、現代的にマッチしたコンテンツが。


『恐竜戦隊コセイドン』というのが。


『翼を持つ少女』でもちらっと触れたけど、コセイドンは実は中国で人気があったんだそうだ。もしかして、中国資本でリメイクをやってみたいと思う人間がいるんじゃないか?

 タイム・パラドックスをからめたストーリー。スペースオペラならぬタイムオペラ。メインライターだった辻真先さんには壮大なSF作品にしようという構想があったんじゃないかと思える。あいにくスタッフには理解されなかったみたいだが。

『コセイドン』の先進性は他にもある。たとえばコセイドン隊は女性の方が目立ってること。女性隊員が男性並に活躍し、敵をばりばり倒すのである。これは当時としてかなり進んでたと思う。

 ああ、リメイクにしても、変える必要のない部分は変えないでほしい。「人間大砲」とか(笑)。「ファイタス・ボンバー、ホップ」「ステップ」「ジャンプ」とか結構好きだったし。あと「コスモ秘帖」なんてネーミングもそのままでいいと思う。


 円谷だけに限った話ではない。たとえば東映。

 何で『ロボット刑事』をリメイクしない? 最新のロボット工学を取り入れれば、リアルなロボット刑事が作れると思わない?

 あるいは『超人バロム1』。二人の少年が合体して一人のヒーローになるんだぜ。今なら薄い本が出まくりだよ!(笑)(『仮面ライダーW』はちょっと期待してたのと違う)

 あと『大鉄人17』。これもリメイクしてほしい。現代なら地球温暖化とかをネタして面白い話が書けると思う


 少し前に『BISビブリオバトル部 世界が終る前に』の中で松岡圭祐の『人造人間キカイダー The Novel』という本を紹介したことがある。


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「私は『キカイダー』って番組、観てなかったんですけど、父に“これを読め。お前なら絶対に気に入る”って言われたんです。実際、めっちゃ面白かったです。ジローがすっごくかっこよくて!」

「そこかあ!」「女の子視点で読むってのは思いつかなかったわ」「人造人間の孤高ってやつだよな」

「そうなんです! 人ならざるものの孤独と悲しみ! これは時代を超えた普遍的な萌え要素ですよ!」ミーナさんは拳を作って力説します。「ミツコがジローに惚れる理由、分かりますね。あと、ミツコには共感しちゃいます。特に『ときメモGS』やってるとことか」

 店内が爆笑に包まれます。

 ミーナさん、すごいです。アドリブでこんなに受けを取れるなんて。

「そうだよなあ。あの小説、見事に現代的にリライトされてんだよ」みんなが口々に喋ります。「変身の原理の説明とか、感心するよな。細部まできちんとSF考証されてて」「もう柳田理科雄がツッコむ隙がどこにもない!」「そのくせ、基本的なところがテレビ版に忠実なんだよな。プロフェッサー・ギルがあの格好だし」「グレイサイキングとかグリーンマンティスあたりはともかく、ブルスコングやヒトデムラサキまで出るとは思わなかった」「愛があふれてる」「ゼロダイバーとか“地獄からの逃亡者”って、『キカイダー』の初期案だろ? マニアックだよなあ」「松岡圭祐ってあんなに濃い特撮マニアだったの?」「まだ小説家になる前に書いた『テレビもゲームも催眠術』っていう本で、『帰ってきたウルトラマン』のこと書いてた。昔から特撮好きだったんだよ」

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 そう、僕は松岡氏による『人造人間キカイダー』に感動した。本当に昔の作品が好きなら、それを作品を否定してはいけない。現代にリファインしなくてはいけない。

 まさにそれをやったのが『GRIDMAN』だ。


 あと僕は『怪獣王子』のリメイクというのも以前から構想している。さすがに「プロントザウルス」は現代では無理だけど。(笑)

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